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【/参/加/型/】 スパイ兼暗殺者グループ“《easyt》”

#37

ふらっと帰ってきました



---

夜はまだ終わっていなかった。

拠点の屋上。

風が、少しだけ強くなる。

神楽はフェンスにもたれ、街の光をぼんやり眺めている。

琉夏が隣に立つ。

琉夏「寝ないの」

神楽「寝れる顔してるぅ?」

軽い調子。

だが目の奥は、ずっと覚めたまま。

琉夏「……手、震えてた」

一瞬の沈黙。

神楽は笑う。

「気のせいだよぉ〜」

琉夏「嘘」

即答。

神楽の視線が、わずかに揺れる。

「……観察力、高すぎない?」

琉夏「戦場では普通」

神楽は小さく息を吐く。

そして、珍しく少しだけ真面目な声。

「……昔ね」

風が止む。

「“撃っちゃいけない距離”で撃ったことがあるんだ」

琉夏は黙って聞く。

「顔、見えちゃってさ」

神楽の指が、無意識に震える。

「そしたらねぇ、もうダメ。ずっと残る」

軽く笑う。

でも、声は乾いている。

「それ以来、近いの苦手」

琉夏「弱点だね」

神楽「ひど」

琉夏「でも人間っぽい」

その言葉に、神楽は一瞬だけ目を細める。

「……それ、褒めてる?」

琉夏「たぶん」

風がまた吹く。

少しだけ、空気が柔らぐ。

---

翌朝。

拠点のリビング。

ヌッシが机に突っ伏している。

ヌッシ「眠い……」

ありす「サボり?」

ヌッシ「夜中ずっと誰かが屋上でカチャカチャしててさぁ……」

ありす「神楽さんだ」

その瞬間。

背後から声。

「呼んだぁ?」

ヌッシ「うわ出た」

神楽がだるそうに伸びをしながら現れる。

スーツは相変わらず崩れている。

髪も少し乱れている。

でも目だけは冴えている。

湖緑も合流する。

湖緑「次の任務だ」

空気が締まる。

端末が展開される。

ホログラムに地図。

湖緑「敵対勢力の中継拠点。通信と補給の要だ」

天ちゃんがくるりと回る。

ありす「壊すの?」

湖緑「制圧。情報を優先」

ヌッシ「つまり乱戦」

琉夏「静かには終わらない」

湖緑は神楽を見る。

湖緑「後方支援。狙撃で敵の指揮系統を落とせ」

神楽はあくびを噛み殺す。

「はいはーい。遠くからパンパンする係ねぇ〜」

ヌッシ「言い方」

神楽「じゃあエレガントに撃つ係」

ヌッシ「変わってねえ」

---

数時間後。

廃工場地帯。

空は曇り。

視界は悪くない。

神楽は別ルートで高所へ。

古びた給水塔の上。

ケースを開く。

TAC-50。

ボルトを引く音。

乾いた金属音。

「……いい子だねぇ」

スコープを覗く。

下では、湖緑たちが接近中。

敵の数、想定より多い。

「うわ、めんどくさ」

無線。

琉夏「神楽、見える?」

神楽「見える見える。お客さん多いねぇ〜」

湖緑「優先順位は任せる」

神楽「責任重大じゃん」

だが声は軽い。

スコープ越しに、敵の指揮官らしき男。

距離、1200。

風、横から弱。

呼吸を整える。

引き金。

――一発。

男が崩れる。

すぐに二人目。

三人目。

連鎖的に、敵の動きが乱れる。

ヌッシ「うお、止まった!」

ありす「すごい……!」

琉夏「進む」

チームが一気に踏み込む。

だが。

神楽の視界に、違和感。

一人。

動かない影。

屋内の窓際。

スコープを少し調整。

……子供。

いや、少年。

武器を持っている。

だが、撃っていない。

ただ、こちらを見ている。

距離、約300。

近い。

顔が、見える。

神楽の指が止まる。

呼吸が乱れる。

「……あー……最悪」

無線。

湖緑「どうした」

神楽「ちょっと待ってねぇ〜」

声が少し低い。

少年が、何かを叫ぶ。

聞こえない。

だが口の動き。

「たすけて」

神楽の瞳が揺れる。

指が、震える。

引き金に、かからない。

その瞬間。

別の敵が背後から現れる。

銃口が、琉夏に向く。

神楽の視界に二つの選択。

少年。

琉夏。

一瞬。

ほんの一瞬。

神楽は歯を食いしばる。

「……ごめん」

引き金。

――発砲。

敵の頭が弾ける。

琉夏は無事。

だが。

次の瞬間。

少年の姿が消える。

煙。

爆発。

囮。

神楽「は?」

遅れて理解する。

「……やられた」

無線。

ヌッシ「なんか来るぞ!」

工場の奥から、大型の機動兵器。

脚部が重く地面を叩く。

湖緑「罠だ。撤退ルート確保!」

琉夏「神楽、脚を止められる?」

神楽は一瞬黙る。

そして、笑う。

「任せてよぉ〜」

だがその手は、まだ震えている。

深呼吸。

一回。

二回。

スコープを覗く。

弱点を探す。

関節。

油圧部。

電源ライン。

「……見つけた」

引き金。

――発砲。

関節部が砕ける。

機体が傾く。

二発目。

三発目。

動きが止まる。

ヌッシ「うおお倒れた!」

ありす「すごい!」

琉夏「撤退!」

チームは一気に離脱。

煙と静寂が残る。

---

任務後。

拠点。

空気は重い。

湖緑「情報は回収できた。だが」

視線が神楽へ。

「想定外の遅延があった」

ヌッシがちらっと見る。

ありすも不安そう。

琉夏は黙っている。

神楽はソファに寝転び、天井を見る。

「……ごめんねぇ」

軽く言う。

だが誰も軽く受け取らない。

湖緑「理由は」

沈黙。

神楽は目を閉じる。

「顔、見えた」

それだけ。

琉夏が一歩前に出る。

琉夏「でも撃った」

神楽「うん」

琉夏「守った」

神楽はゆっくり目を開ける。

琉夏を見る。

少しだけ、笑う。

「優しいねぇ」

琉夏「事実」

ヌッシが頭をかく。

ヌッシ「まぁ、その……助かったのは事実だし」

ありす「うん……!」

湖緑は静かに言う。

湖緑「次からは、その“弱点”も計算に入れる」

神楽「やだなぁ〜欠陥品扱い」

湖緑「戦力として扱っている」

一拍。

神楽はふっと笑う。

「……そっか」

---

その夜。

また屋上。

神楽は一人。

ペンダントを開く。

青年の写真。

「……またやったよ」

風が吹く。

「守れたけどさぁ」

目を細める。

「全部は無理だね」

その時。

後ろから足音。

今度は、琉夏だけじゃない。

ありすとヌッシもいる。

ヌッシ「またサボってる」

神楽「仕事終わったしぃ?」

ありすが隣に来る。

ありす「一人じゃないよ」

神楽は少し驚く。

ヌッシ「まぁその……チームだし」

琉夏「壊さないなら、いる意味がある」

神楽はしばらく黙る。

そして、小さく笑う。

「……変な子たち」

でもその声は、少しだけ柔らかい。

---

遠く。

政府施設。

モニターに映る戦闘ログ。

「確認。可惜夜、依然として不安定」

「だが戦力としては有用」

「次段階へ移行する」

画面が切り替わる。

例の“少年”。

生きている。

無表情。

「テストは成功です」

別の声。

「では――回収を」

---

拠点の屋上。

月が雲に隠れる。

神楽が空を見る。

「……来るねぇ」

誰にともなく呟く。

琉夏「何が」

神楽は笑う。

いつもの、あの笑顔。

「めんどくさいやつ」

だがその瞳は、もう逃げていない。

震えは、まだある。

それでも。

引き金から、指は離れていなかった。

―――つづく

作者メッセージ

ただいま!!!いつの間にか1000観覧!!
ありがとう!!!これから更新いっぱいします!!
コメントいっぱいくださああああい

2026/05/02 22:44

meruku-q
ID:≫ 11GsR4EM2gvPY
コメント

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スパイ暗殺者殺し屋参加型

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