??視点
「 ただいま 」
その声を 待ち続けて 、 どれくらい 経っただろう 。
誰を 待っているのかも 分からない 。
どこに 行ったのかも 分からない 。
ただ 、 誰かが 、 ここで 待っててね 、 と 俺に 告げたはず 。
今日も 、 いろんな 場所へ 歩いて行って 、 誰かを 待つ 。
昔は 、 「 何してるの ? 」 と 友達に 興味本位で 聞かれて 、 俺も 、
「 …… あれ 、 誰 待ってたんだろ ? ( 笑 」
と 笑えた 。
友達に 、 「 ボケたの 〜 ?! ( 笑 」 と 言われて 、 笑い合えた 。
でも 、 そんな ふうに 軽く 済まされる のは もう 終わってしまった 。
毎日 、 六時になると 、 誰かを 探しに 行かないと 、 と 身体が 言う 。
理性が 逆らえる ような ものじゃなくて 、 俺は また 、 忠犬 ハチ公像 の 隣で 誰かを 待つ 。
どうせ 、 家に 帰ったって 誰も 俺を 待ってくれている 人はいない 。
後ろから 、 誰かの 足音が して 俺は 振り向く 。
やっと 、 来たのかな ?
でも 、 その人は 俺を 一瞥してから 去っていった 。
この人じゃ 、 なかった 。
早く 、 早く 帰ってきて 。
夕暮れの 駅を 見ながら 、 俺は 誰か を 待つ 。
ポケットには 、 “ 忠犬待機症 ” と 書かれた 診断書が 、 小さく 折りたたまれて 入っていた 。