俺は海惺。
藍色のパーカーを羽織り、夜の街を歩く。
人知れず、誰も来ない場所に、少しだけ期待を抱いて。
扉を押すと、店内は静かだった。
看板も灯りもない喫茶店。知る人だけが辿り着ける、夜の隠れ家。
カウンターの奥で、マスターがグラスを磨いている。
「いらっしゃいませ」
低く、柔らかい声。歓迎というより、確認されているみたいだ。
俺は軽く肩をすくめ、うなずいた。
「こんばんは」
マスターは黙って皿を差し出した。
惑星を描いたお皿に、中央には白い大福。
青い宝石のようなチョコが大福の中で光り、わたあめの煙がふわりと揺れている。
「…これは?」
思わず口に出す。興味が混じった問いだ。
「夢星です。海王星の青い光を閉じ込めたお菓子でございます」
少しだけ自然にですます調が混ざる声。俺は軽く眉をひそめた。
「ふん、海王星ね…」
皿に指を置き、じっと眺める。
「一口でわかる」
大福を口に入れる。
甘くて、冷たくて、優しい。
「…優しい」
つい、零れた声。
マスターは微笑まず、静かに言う。
「押し付けるための優しさではありません。背中をそっと撫でるためのものです」
俺は肩をすくめる。
普段なら、こんな言葉に心を揺らすことはない。
でも今の俺は、甘さと冷たさに包まれ、胸の奥が自然と緩むのを感じる。
「…俺はな、いつも誰にも俺の優しさを見せられなかった」
誰にも気づかれない、俺の小さな光。
「誰も、俺のこと…わかってくれない」
マスターは黙ってグラスを磨き続ける。
「ここでは答えは出しません。ですが、背中を押すことはできます」
青い宝石を噛むと、口の中に冷たくも柔らかい甘さが広がる。
俺はゆっくり息を吐いた。
「…俺は、俺のままでいいんだな」
夜は深く、静かに、俺を包む。
店を出るとき、振り返る。
「…また来る」
マスターは答えず、ただ皿を棚に戻す手をわずかに止めるだけだった。
夢星は、俺の優しさを静かに誰かの背中に届ける。
それを知って、俺は少しだけ笑った。
背中を押すだけ。
それで十分だ。
藍色のパーカーを羽織り、夜の街を歩く。
人知れず、誰も来ない場所に、少しだけ期待を抱いて。
扉を押すと、店内は静かだった。
看板も灯りもない喫茶店。知る人だけが辿り着ける、夜の隠れ家。
カウンターの奥で、マスターがグラスを磨いている。
「いらっしゃいませ」
低く、柔らかい声。歓迎というより、確認されているみたいだ。
俺は軽く肩をすくめ、うなずいた。
「こんばんは」
マスターは黙って皿を差し出した。
惑星を描いたお皿に、中央には白い大福。
青い宝石のようなチョコが大福の中で光り、わたあめの煙がふわりと揺れている。
「…これは?」
思わず口に出す。興味が混じった問いだ。
「夢星です。海王星の青い光を閉じ込めたお菓子でございます」
少しだけ自然にですます調が混ざる声。俺は軽く眉をひそめた。
「ふん、海王星ね…」
皿に指を置き、じっと眺める。
「一口でわかる」
大福を口に入れる。
甘くて、冷たくて、優しい。
「…優しい」
つい、零れた声。
マスターは微笑まず、静かに言う。
「押し付けるための優しさではありません。背中をそっと撫でるためのものです」
俺は肩をすくめる。
普段なら、こんな言葉に心を揺らすことはない。
でも今の俺は、甘さと冷たさに包まれ、胸の奥が自然と緩むのを感じる。
「…俺はな、いつも誰にも俺の優しさを見せられなかった」
誰にも気づかれない、俺の小さな光。
「誰も、俺のこと…わかってくれない」
マスターは黙ってグラスを磨き続ける。
「ここでは答えは出しません。ですが、背中を押すことはできます」
青い宝石を噛むと、口の中に冷たくも柔らかい甘さが広がる。
俺はゆっくり息を吐いた。
「…俺は、俺のままでいいんだな」
夜は深く、静かに、俺を包む。
店を出るとき、振り返る。
「…また来る」
マスターは答えず、ただ皿を棚に戻す手をわずかに止めるだけだった。
夢星は、俺の優しさを静かに誰かの背中に届ける。
それを知って、俺は少しだけ笑った。
背中を押すだけ。
それで十分だ。
- 1.ティータイムの始まり。
- 2.乙女座 やさしく、つよくなれなくて。
- 3.蟹座 甘さの奥で、息を止めてきた
- 4.牡牛座 余裕の仮面と、足りない甘さ
- 5.山羊座 ゆっくりでいいと、知らなかった
- 6.双子座 言葉が二つに割れたまま
- 7.天秤座 言葉を量る、沈黙の重さは。
- 8.獅子座 微笑みの奥で、拳を握るひと
- 9.射手座 遠くを願い、声を置いてきた
- 10.水瓶座 笑っているあいだは、自由でいられた
- 11.牡羊座 引き受ける勇気と、静かな覚悟
- 12.魚座 仮の笑顔と振り返ってしまったこと
- 13.蟹座 信じられなかった手の、ぬくもりを思い出すまで
- 14.宇宙という名の空を結びに。
- 15.蛇遣い座 13番目になれなくて。
- 16.第二期 惑星たちの夜
- 17.金星 一行の本音は、金星に預けて
- 18.土星 抱え込めてしまった者は、零れ方を知らない
- 19.天王星 光を残す星
- 20.海王星 優しさという内側
- 21.木星 抱える重さと広がる軌道
- 22.火星 燃える意志と孤独の熱