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閲覧数100ッ!? 参加〆切1月31日です! 【参加型】あなたは何の宝石ですか?話を聞かせてください。

#5

サファイア 澄んだ青は、強さを隠さない

丘を越えた先、
空の色が少し深くなってきた頃だった。

風が、
ひとつ跳ねる。

その向こうに、
ひとりの少女がいた。

ラフな服装。
空色と黒。

足元の石を蹴りながら、
携帯ゲーム機を操作している。

「…あ、ミスった」

小さく舌打ちして、
顔を上げる。

その目は、
驚くほど澄んだ青だった。

「君、旅人?」

声は低めで、
でも軽い。

距離の取り方が自然で、
壁がない。

魔女は歩みを止める。

「ええ」

「そっか。じゃあ、ちょっとだけ休んでく?」

少女はそう言って、
勝手に隣に座る場所を指差した。

「おれ、仰凪 聖。君は?」

「魔女よ」

「へえ。分かりやすくていいな」

聖は笑った。
作っていない、
けれど媚びてもいない笑顔。

手元のゲーム機が、
ふっと青い光を反射する。
サファイアだった。

「それ、君の宝石?」

「ん。そう」

軽く答えるけれど、
指先は一瞬だけ、
宝石を隠すみたいに動いた。

魔女は気づく。

この子は、
見抜くのが早い。
でも、
自分を見せるのは遅い。

「君、強い目をしてるわね」

その言葉に、
聖は一瞬だけ黙る。

「…よく言われる」

「褒め言葉?」

「さあ」

肩をすくめる。

「でもさ、それ言われるたびにさ。
“女の子なんだから、もっと可愛くしなさい”って、続くんだよ」

空を見る。
夕方の色に近づいてきていた。

「おれ、可愛いの、向いてないんだよな」

そう言って、
ポケットから丸眼鏡を取り出す。
かけると、
雰囲気が少し変わる。

確かに、
可愛い。
けれどそれ以上に、
安心した顔になる。

「これつけるとさ、
“ほら、可愛いでしょ”って言われなくなるんだ」

魔女は何も言わない。

ただ、
サファイアを見る。

深い青。
曇りのない、
意志の色。

「おれさ」

聖はゲーム機を膝に置いた。

「可愛くなれなかったんじゃない。
可愛く“なりたくなかった”んだと思う」

少しだけ、
怖そうに笑う。

「それって、ダメかな」

魔女は首を振る。

「サファイアはね、誠実さの宝石よ」

聖は目を瞬かせる。

「嘘をつかない強さ。
折れないけど、濁らない」

風が吹く。
宝石が、
夕暮れの光を受けて、
深く輝く。

「…じゃあさ」

聖は、
少し照れたように言った。

「おれ、このままでいい?」

魔女は、
静かに微笑む。

「ええ。君はもう、十分まっすぐよ」

一拍置いて、付け加える。

[太字]「可愛くなくても、君はちゃんと愛される」
[/太字]
聖の目が、少し揺れる。

「…それ、ずるい」

でも、笑った。

「おれは、おれのまま強くなる。それでいいだろ」

夕方の空が、
完全に青へ沈む。

魔女は立ち上がる。

「もう行くの?」

「ええ」

「そっか」

聖は立たない。
見送らない。

ただ、ゲーム機を手に取って、
言う。

「またどっかで会えたらさ。
今度は一緒に対戦しよ」

「ええ。負けないわよ」

「おれも」

その声は、
迷っていなかった。

魔女が去ったあと、
サファイアは静かに、
でも確かに光る。

可愛さじゃない。
飾りでもない。

澄んだ青は、
強さそのものだった。

物語は続く。
次の宝石が、どんな色で待っているかは—
まだ、風だけが知っている。

作者メッセージ

サファイアは、
深く澄んだ青をたたえる宝石である。

その色は揺らがないように見えて、
光の角度によって、
夜のように濃くも、空のように淡くも変わる。
静けさの奥に、確かな意志を宿した輝きだ。

この宝石には、
「誠実」「真実」「揺るがぬ心」という意味が与えられてきた。
嘘をつかないこと、
自分を偽らないこと、
流されずに立ち続けること——
それらすべてが、
強さとしてこの石に刻まれている。

サファイアは、
感情を押し殺す宝石ではない。
泣かないことでも、
迷わないことでもない。
迷いの中で、それでも選び続ける意志を、
静かに肯定する石なのだ。

だからこの宝石は、
「覚悟」や「信頼」、
そして「自分で在ること」の象徴でもある。

強くあれ、と迫られてきた心が、
それでも折れずにここにあるなら、
その青は、もう十分に澄んでいる。

揺れなくていい。
でも、濁らなくていい。
あなたがあなたである限り、
その色は失われない。

どうか、
サファイアの静かな青と、
真実を抱き続ける強さのご加護が、
あなたのもとにありますように。

2026/01/27 00:00

KanonLOVE
ID:≫ n00YEDEqgv6kY
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