文字サイズ変更

350閲覧!?第二期始動! 募集内容は星の人にお店のメニュー!? 残り2人と4メニュー募集中!【参加型】星を紡ぐティータイム

#18

土星 抱え込めてしまった者は、零れ方を知らない

夜は、すでに深層へ沈んでいた。

星図の壁には、十二の線と、数えられなかった空白。
そのどちらにも属さない時間帯。

ランプは揺れていない。
風もない。
それでも――

扉の前に、
「立ち止まっている思考」の重さだけが、確かにあった。

迷っている、のではない。
引き返す理由も、進む理由も、すでに整理し終えている。

それでも、扉を開けない。

――開けてしまえば、
考えていることを、考えているまま持ち込んでしまうから。

カラン。

鈴は、静かに鳴った。

音が鳴ったあとで、
本人が少しだけ驚いた顔をする。

まるで、
自分より先に、思考が扉を押したみたいに。

薄茶色の長いワンピース。
袖は指先を隠し、床に近いほど長い。

一歩踏み出すたび、
布が遅れてついてくる。

くるりと回れば、
袖が円を描いて、
自分自身を囲ってしまうような――
そんな服。

顔立ちは整っている。
けれど視線は、
常に「同時に三つ以上のこと」を考えている位置にある。

「……こんばんは」

声は静かで、落ち着いている。

「僕は土喰シズだよ。よろしくね」

一人称は「僕」。
けれど、どこにも少年性はない。

年齢は、測れない。
本人も、数えていない。

「土星、だ」

マスターは、すぐに頷かなかった。

それは、
確認が必要な星だったからだ。

土星。
枠。
制限。
耐久。
抱え込むことで、崩れないことを選び続けた星。

「……いらっしゃいませ」

少し遅れて、
それでも変わらない声で迎える。

シズは、
一番奥の席ではなく、
けれど入口からも遠い位置に座った。

逃げられる距離を残した、覚悟の場所。

差し出されたのは、紅茶ではなかった。

黒い、平らな皿。
中央に、薄茶色のアイスが一つ。

その周囲を、
茶色の砂糖が、ぐるりと円を描いている。

――輪。

土星の環。

「……アイス?」

「ええ」

マスターは、説明を足さない。

シズは一瞬、
視線だけで全体を測る。

温度。
量。
溶ける速度。
意味。

「なるほど」

スプーンを入れる前に、
小さく笑った。

「マスターは、なんでもわかってるんだね……」

かすかに、口角が上がる。

「……(ニコッ)」

一口。

舌に触れた瞬間、
甘さが主張しない。

苦みも、前に出ない。

ただ、
包み込む。

逃げ場を作らない味。

「……まろやかだ」

二口目で、
環の砂糖に触れる。

甘さが、少しだけ強くなる。

「……」

シズは、
そこで初めて、スプーンを止めた。

「僕ね」

視線はアイスに落としたまま。

「考えるの、得意なんだ」

断言だった。

「起きる前に、全部仮定して。
失敗も、誤解も、嫌われる理由も」

環をなぞるように、
砂糖を少し崩す。

「だから、耐えられる」

一拍。

「……耐えられてしまう」

マスターは、何も言わない。

「考えを吐き出そうとするとね」

スプーンが止まる。

「……周りが、遠ざかる気がした」

声に、揺れはない。

揺れないように、
何度も構築し直された声。

「だから、言わないほうがいいって結論にした」

「正しい判断ですね」

マスターは、否定しない。

「土星は、
壊れない選択を、選び続ける星です」

「……でしょ?」

シズは、少しだけ満足そうに笑う。

「僕は、賢いから」

自嘲ではない。
誇りでもない。

事実の提示。

「でもさ」

三口目。

アイスの中心に近づく。

「……賢いって、
わかってもらえないと、
ただの壁になるんだね」

そこで、初めて。

ほんの一瞬、
考えが遅れた。

「……あ」

小さく、息が漏れる。

「これ、溶けると」

環の砂糖が、
アイスに混ざっていく。

「……輪が、なくなる」

マスターは、静かに言う。

「環は、
守るためのものです」

「でも」

続ける。

「中心を、
一人にするためのものでもあります」

沈黙。

シズは、
最後の一口を、ゆっくり口に運ぶ。

「……またこようかな」

少しだけ、軽い調子で。

「なんてね。僕の気分次第さ」

立ち上がる。

袖が、
円を描いて揺れる。

扉の前で、
一度だけ振り返る。

「……マスター」

「はい」

「僕の考え、
ここに置いていっても……
壊れない?」

マスターは、答えない。

代わりに、
伏せていたカップの一つを、
静かに起こした。

それだけで、
十分だった。

カラン。

扉が閉まる。

星図の壁に、
太く、遅い線が刻まれる。

十二のどれとも違う位置。
けれど、
中心を囲うような軌道。

完成しない。
外れもしない。

――枠として、そこに在り続ける線。

マスターは、それを見つめて、呟く。

「抱え込める者ほど、
手放し方を、誰にも教わらない」

ランプは、揺れない。

夜は、まだ深い。

そして、
数えられなかった星は――
また一つ、
確かに、ここを覚えた。

作者メッセージ

なんかネタ切れが近くなってきてる…

なんてことがないのがいま一番の自慢の
KanonLOVEです!

うぅ…
ねむい…

とりあえず350閲覧行ったから
がんばろー!

2026/01/26 23:21

KanonLOVE
ID:≫ n00YEDEqgv6kY
コメント

この小説につけられたタグ

十二星座感情カフェ参加型

通報フォーム

お名前
(任意)
Mailアドレス
(任意)

※入力した場合は確認メールが自動返信されます
違反の種類 ※必須 ※ご自分の小説の削除依頼はできません。
違反内容、削除を依頼したい理由など※必須

盗作されたと思われる作品のタイトル

どういった部分が元作品と類似しているかを具体的に記入して下さい。

※できるだけ具体的に記入してください。

《記入例》
・3ページ目の『~~』という箇所に、禁止されているグロ描写が含まれていました
・「〇〇」という作品の盗作と思われます。登場人物の名前を変えているだけで●●というストーリーや××という設定が同じ
…等

備考欄
※伝言などありましたらこちらへ記入
メールフォーム規約」に同意して送信しますか?※必須
タイトル
URL

この小説の著作権はKanonLOVEさんに帰属します

TOP