文字サイズ変更

時々笑える感動系(?)ファンタジー! 花鳥風月魔法物語!

#5

風が吹いた日、花が咲いた

花魔法使いたちがどのようにして生まれていくのか―三つの生まれ方があります。
一つは高城澪―元高城翼のようにパートナーとして認められ、一緒に生活し、魔力を得る・コントロールし、一人前となる方法する方法。
もう一つは、システムが難しいため、説明に時間がかかりそうなので申し訳ございませんが、少しスルーします。
そしてもう一つは…―


放課後のグラウンドに、夕焼けが落ちていく。
タイムはまた、目標を切れなかった。体は動くのに、足が重い。
それでも、自分―飛来 疾風(とびらいはやて)はスパイクの紐を結び直し、もう一本、トラックに向かって踏み出そうとした。
「行けっ」
自分でいうだけで、やる気を出そうと頑張る俺。なんかカッコ悪い。
―センパイとかは、一人で走っているだけでかっこいい。友達に一緒にと言われてはいって、みんなあっという間に上手になって、センパイを越している人もいる。なのに…。俺だけ…。
いつの間にか涙目になっていた。
それに気づき始めると走る足もガクガクと震えてくる。怖い。

「今日はもう、走らないほうがいいと思うわ」
声がして振り向くと、木の下に女の人が立っていた。
制服でもなければ、先生でもない。みつあみなのに、腰ぐらいまである長い黒髪に、淡い黄色の羽織。まるで映画の中から抜け出したような、不思議な存在感。こんな人、学校にいたっけ?

「あなた、走る理由が分からなくなってるでしょ」
初対面のはずなのに、そう言われて言葉が詰まった。
「グッ…。」
図星だった。
それが、「花咲 紬(はなさきつむぎ)」との出会いだった。

翌日も、その翌日も、俺はなんとなく彼女に会いに、校舎裏の小さな庭に立ち寄った。
古い石畳、苔の生えた灯籠。
入学式のときに教頭先生だっけ?が言っていたな。昔は校舎の裏が花畑だったけど、戦争で焼けちゃって、その後小さな庭になった。それが使われなくなって、今もそのまま。それがここなのだろう。住人来たらいっぱいになってしまうだろう。
誰も来ないその場所に、彼女はいつもいた。
「あなたの心には、今日、こんな花が咲いていたわ」
そう言って、彼女は掌を開く。
そこにあるのは、花の姿をした光だった。

「これは“リンドウ”。自分を責めてるときに咲く、ちょっと意地っ張りな花」

彼女は“花の魔女”だった。本人はそう言っていたわけではなかったけど、なんとなくそんなイメージ。〝女神様〟のほうが近いのかな?
見る者の感情を、花の姿に映す魔法を持っていた。といっても、それを誰かに見せびらかすでも、教えを説くでもない。ただ、そっと、寄り添うだけ。

気づかないうちに〝俺〟は誰にも言えなかった本音を、彼女には少しずつこぼせるようになっていた。

「なんか最近、走っても楽しくないんです。
タイムとか先輩とか、監督の期待とか、誰かの目ばっかり気にしてて。
友達の凱人とか、鷲介センパイとか、奧平監督とか。なんでみんな俺にプレッシャーをかけるんだろう。
本当は、ただ走るのが好きだったのに、いつの間にかそれを忘れてた気がする」

紬は黙って聞いていた。やがて、また手を差し出す。
そこに浮かんだのは、まだつぼみのままの小さな花だった。

「これは“ナズナ”。気づかれずに踏まれても、静かに咲こうとする花。
きっとあなたは今、自分を取り戻す途中なのよ」

そう言われて、初めて胸の奥が少し、あたたかくなった気がした。

季節が少しずつ進む。
陸上部では、夏の県大会に向けての選抜メンバーが発表された。
俺の名前は、

―なかった。

心がざわついた。でも、不思議と絶望ではなかった。
紬にあって励ましてもらいたい。そうすれば、こんなことなんか、気になることはない。そう思ってこらえた。

放課後、裏庭に行くと、紬はもういなかった。

次の日も、また次の日も、彼女は現れなかった。

心に穴が開いたような喪失感。それでも、もう一度だけと思って、裏庭に向かった。

そこにあったのは、一冊のスケッチブックと、一輪のマリーゴールドだった。
スケッチブックをめくると、そこには今まで見せられた花たちの絵が描かれていた。
手描きで、色鮮やかで、でもどこか、誰にも見せたことのない感情のようだった。

最後のページには、小さな文字でこう書かれていた。

「咲かない日も、あなたの中に花はあった。
私はただ、それを見つけるのを手伝っただけ。
これからは、自分で見つけられる。もう、大丈夫。」

その場にしゃがみこんで、俺は初めて泣いた。
頑張っても、頑張っても、支えてもらっても、彼女に励ましてもらっても、期待に答えなきゃという気持ちしかなかった。
ずっと我慢していた。自分の気持ちをずっと置き去りにしていた。

でも、それでも咲こうとしていた心があった。
誰にも気づかれなくても、踏まれても、それでも咲こうとしていた。

夏の大会の日。
補欠として同行した朔は、スタンドの最上段で、試合を見つめていた。
風が吹いた。ほんの一瞬だけ、視界の端に、あのマリーゴールドの花が揺れた気がした。

走る理由は、まだはっきりとは見つからない。
でも、きっとこれからも走る。いつか、自分だけの花を咲かせるために。

心のどこかに、風に揺れるあの黄色い花を思い出しながら。

その様子を疾風の座っている反対側の最上段の椅子の客席から見ていた女性が「ふっ」と笑う。まるで、そのときは観客席から大会の様子を見ていた少年―疾風が四年後世界に名をとどろかせるような陸上選手になるという未来が見えているのに、誰にも教えないで黙っている。それを楽しんでいる、そんな幼い少女のようだ。彼女は指を「パチン」と鳴らすとを大きな時空の穴作り、前に広がる謎の大きな穴の中へと入っていく。人がたくさんいるのに、誰一人と彼女には気づかない。まるで誰もいないようだ。

「お帰りなさいませ。」
その一声で屋敷の前にいた全員が道をあける。
「ただいま。久しぶりに楽しかった。新しい子ができたよ。」
そう言いながら屋敷に入っていく女性―花咲紬。先程の学校にいたときとは違い、威圧感と存在感が際立つ、恐ろしげなイメージだ。
紬は屋敷に入り、大広間へ向かう。

広間は集会場よりもこじんまりとした、テーブルとたくさんの椅子しかなかったがそれだけで十分だった。

入口から中央へ向かう紬は一三歳ほどの見た目から二十五歳ほどの見た目へと替わっていった。そして中央につく頃には、全くの別人のような人になっていた。
「今回は〝マリーゴールド〟ねぇ。」
〝紬〟は机の上にポケットから取り出したマリーゴールドの花を出す。
「さて、どうなるかな?」
楽そうにマリーゴールドを見ていると…
花が白い光で輝いた。
すると、マリーゴールドが大きくなり、十四歳ほどの女の子が現れた。
柔らかい茶色のミディアム・ロング髪、黄味がかった琥珀色、和洋折衷のローブ風。袖は広がっていて、マリーゴールドの花びらのような縁取りの服、袴。
紬も幻想的だが、この子も幻想的だった。
「ここは?あなたは?」
女の子は喋る。
「私は花咲紬。あなたを作ったものです。あなたは…。そうね。神原 万莉(かんばら まり)という名前はどうかしら?」
「かんばら…まり?」
「そう。あなたはこれから、人を癒やしてください。」
「は…。はい。」
そう言い、万梨は頷いた。

いかがでしたか?魔法使いの生まれ方、わかりましたか?
そうそう。〝花咲紬〟さんは〝万花の女神〟と呼ばれる花の女神です。
花咲紬は偽名。霞ノ宮 琴音(かすみのみや ことね)というのが本名なのですが、長過ぎるため、やめたそうです。なんか、〝女神様〟っぽくないですね。現実的で。
神原 万莉が金陽の継承者と呼ばれ、活躍するのは、また、別のお話で。
おっと。言い忘れるところでした。今日の朝刊の記事を見ましたか?百メートルの新記録が出たんですって。その選手は一番自分を励ましてくれた人は誰ですか?という記者の質問に
「名前は言えないのですが、短期間中、とても励ましてくれた人がいました。T.H.さんです。今でも自分以外の誰かを励ましていると思います」
と答えたんですって。彼も咲かせるべき花を見つけたんでしょうね。
では。
―完―

作者メッセージ

おお、
ついにこっちゃん(琴音)出てきた…。

つぶあん。との合作を見てくれている方、
マジですみませんでした。

このキャラ何者!?
って思う人が多かったと思います。

これからわかりやすくしていくので、
どうぞ楽しみにしていてください(?)

2026/01/27 09:10

コメント

通報フォーム

お名前
(任意)
Mailアドレス
(任意)

※入力した場合は確認メールが自動返信されます
違反の種類 ※必須 ※ご自分の小説の削除依頼はできません。
違反内容、削除を依頼したい理由など※必須

盗作されたと思われる作品のタイトル

どういった部分が元作品と類似しているかを具体的に記入して下さい。

※できるだけ具体的に記入してください。

《記入例》
・3ページ目の『~~』という箇所に、禁止されているグロ描写が含まれていました
・「〇〇」という作品の盗作と思われます。登場人物の名前を変えているだけで●●というストーリーや××という設定が同じ
…等

備考欄
※伝言などありましたらこちらへ記入
メールフォーム規約」に同意して送信しますか?※必須
タイトル
URL

この小説の著作権はKanonLOVE しばらく活動休止中さんに帰属します

TOP