二学期の終わりが近づくと、
学校の空気は、
少しずつ重くなる。
廊下の会話が減って、
教室ではシャーペンの音だけが増える。
期末試験。
それだけで、
みんなの表情が硬くなる。
◇
「…静かだね」
放課後の図書室。
雷が、
机の上で寝転びながら言った。
「いつもならさ、
この時期、
誰かしら泣いてるんだけど」
「そうかな…?」
私は問題集を閉じて、
首を傾げる。
確かに、
焦っている人は多い。
でも―
張り詰めすぎていない。
不安はあるのに、
絶望がない。
それが、
妙だった。
◇
悪魔たちは、
落ち着きがなかった。
Affectusは、
つまらなそうに天井を漂っている。
「…感情が、
伸びてこないナ」
獏夢は、
床に転がったまま動かない。
「…腹、減らねぇ…」
雷が、
小さく舌打ちする。
「おかしい。
この学校、
試験前は一番“美味しい”はずなのに」
◇
試験当日。
教室。
配られる問題用紙。
私は、
最初のページを見て―
一瞬、
息を止めた。
難しくない。
簡単、
というわけでもない。
でも、
「詰ませる」問題が、
ない。
途中で手が止まっても、
どこかで点が入る構成。
―逃げ道がある。
「…?」
ざわっと、
背中が寒くなった。
◇
監督の先生が、
教室を歩く。
白いシャツ。
落ち着いた足取り。
風白先生だった。
特別なことは、
何もしない。
見回るだけ。
時計を見るだけ。
視線も、
必要以上に向けない。
…はずなのに。
一度だけ。
本当に一瞬だけ。
先生の視線が、
私の答案用紙ではなく―
空白の“間”を見た気がした。
◇
試験が終わる。
誰かが言った。
「…思ったより、
いけたかも」
「全部白紙、
にはならなかった」
その言葉が、
教室のあちこちから聞こえる。
おかしい。
期末試験なのに。
◇
数日後。
答案返却。
「途中まで、
合っています」
「ここは、
考え方が良いですね」
風白先生の声は、
いつも通り穏やか。
点数は、
劇的に高くはない。
でも―
極端に低い人が、
いない。
雷が、
私の耳元で囁く。
「ねぇ、ゆめ、
これさ…
偶然じゃない」
「…うん」
分かってしまった。
この試験、
最初から
“誰も壊れない”ように作られている。
◇
放課後。
廊下の向こうで、
風白先生が
職員室に入るのが見えた。
ただ、
それだけ。
話しかけもしない。
振り返りもしない。
なのに―
背中だけが、
やけに記憶に残る。
雷が、
ぽつりと言った。
「怖いよね。
優しいの、
隠してる」
私は、
何も答えられなかった。
優しい。
でも、
その優しさは―
誰にも見せる気がない。
二学期は、
静かに終わろうとしている。
何も起きていない。
…それが、
一番おかしいまま。
学校の空気は、
少しずつ重くなる。
廊下の会話が減って、
教室ではシャーペンの音だけが増える。
期末試験。
それだけで、
みんなの表情が硬くなる。
◇
「…静かだね」
放課後の図書室。
雷が、
机の上で寝転びながら言った。
「いつもならさ、
この時期、
誰かしら泣いてるんだけど」
「そうかな…?」
私は問題集を閉じて、
首を傾げる。
確かに、
焦っている人は多い。
でも―
張り詰めすぎていない。
不安はあるのに、
絶望がない。
それが、
妙だった。
◇
悪魔たちは、
落ち着きがなかった。
Affectusは、
つまらなそうに天井を漂っている。
「…感情が、
伸びてこないナ」
獏夢は、
床に転がったまま動かない。
「…腹、減らねぇ…」
雷が、
小さく舌打ちする。
「おかしい。
この学校、
試験前は一番“美味しい”はずなのに」
◇
試験当日。
教室。
配られる問題用紙。
私は、
最初のページを見て―
一瞬、
息を止めた。
難しくない。
簡単、
というわけでもない。
でも、
「詰ませる」問題が、
ない。
途中で手が止まっても、
どこかで点が入る構成。
―逃げ道がある。
「…?」
ざわっと、
背中が寒くなった。
◇
監督の先生が、
教室を歩く。
白いシャツ。
落ち着いた足取り。
風白先生だった。
特別なことは、
何もしない。
見回るだけ。
時計を見るだけ。
視線も、
必要以上に向けない。
…はずなのに。
一度だけ。
本当に一瞬だけ。
先生の視線が、
私の答案用紙ではなく―
空白の“間”を見た気がした。
◇
試験が終わる。
誰かが言った。
「…思ったより、
いけたかも」
「全部白紙、
にはならなかった」
その言葉が、
教室のあちこちから聞こえる。
おかしい。
期末試験なのに。
◇
数日後。
答案返却。
「途中まで、
合っています」
「ここは、
考え方が良いですね」
風白先生の声は、
いつも通り穏やか。
点数は、
劇的に高くはない。
でも―
極端に低い人が、
いない。
雷が、
私の耳元で囁く。
「ねぇ、ゆめ、
これさ…
偶然じゃない」
「…うん」
分かってしまった。
この試験、
最初から
“誰も壊れない”ように作られている。
◇
放課後。
廊下の向こうで、
風白先生が
職員室に入るのが見えた。
ただ、
それだけ。
話しかけもしない。
振り返りもしない。
なのに―
背中だけが、
やけに記憶に残る。
雷が、
ぽつりと言った。
「怖いよね。
優しいの、
隠してる」
私は、
何も答えられなかった。
優しい。
でも、
その優しさは―
誰にも見せる気がない。
二学期は、
静かに終わろうとしている。
何も起きていない。
…それが、
一番おかしいまま。
- 1.先生が声を出して。
- 2.契約シマセンカ?
- 3.優シイ先生ノ協力デ活動開始シマス
- 4.契約ナキ悪魔タチ
- 5.新しい歯車が、静かに噛み合い始める
- 6.試験と、噂の始まり。 ―それは、助ける覚悟があるかを見る試験
- 7.―星が軽くするもの
- 8.風が変わる前に悪魔、夏休みへ帰る
- 9.魔界の夏日記
- 10.タクサン人ガ増エマシタ。
- 11.絶対(?)爆笑回 先生ハ料理ヲ出来ナイ。 前編
- 12.絶対(?)爆笑回 先生ハ料理ヲ出来ナイ。 後編
- 13.部員、増エマシタ
- 14.準備トイウ名ノ、予兆―
- 15.迷子ガ増エル日
- 16.昼ノ、普通
- 17.夜ハ、静カニ壊レル
- 18.先生ハ、気ヅカセナイ―
- 19.点数の裏側
- 20.冬になる前に
- 21.零点ノ居場所