文字サイズ変更

ぼくの算数は 数えられるところから始まって

数えきれないところで止まった

算数の時間は、だいたい静かだ。
黒板の前で先生が数字を書くと、教室の空気も一緒に並ぶ気がする。

数字は便利だ。
いくつあるか、すぐに分かる。
間違っても、正しい答えが一つだけある。

ぼくは、そのはっきりしているところが好きだった。

問題が出る。

「りんごが5こあります。
2こ食べました。
残りは何こでしょう」

ぼくは頭の中で、りんごを思い浮かべる。
赤くて、少しつやがあって、かじると音がする。

5こあった。
2こなくなった。
だから3こ。

答えは合っている。
でも、食べたあとの手のべたべたや、甘さは、どこにも書かれない。

算数は、残った数だけを見る。

先生は言う。
「大事なのは、数です」

たしかにそうだと思う。
でも、なくなったものまで消えてしまう気がして、少しだけ落ち着かない。

割り算を習ったとき、ぼくはもっと困った。

「クッキーを4人で分けます。
1人何こになりますか」

割れるならいい。
でも、割れないときはどうするんだろう。

ぼくは、誰かが少しだけ我慢する場面を想像した。
でも答えは、小数だった。

0.5。

半分。

きれいな数字。
でも、半分のクッキーは、あまりおいしくなさそうだった。

算数では、みんなが同じになる。
同じ数を持つ。
同じ答えを書く。

それは、けんかをしないための方法みたいだ。

ある日、クラスで一人、休んだ子がいた。
先生は言った。

「今日は、何人いますか」

ぼくは数えた。
昨日より、一つ少ない。

答えは正しい。
でも、教室は昨日より広い。

空いている席は、数に入らない。
でも、目には入る。

「0」という数字を習った。

何もない数。

でも、何もないはずの場所が、いちばん気になる。

たし算は、増える話だ。
ひき算は、減る話だ。

でも算数は、
「どうして減ったのか」は聞かない。

なくなった理由より、
残った数のほうが大事。

ぼくは、ノートのはしに数字を書いてみる。

1、2、3、4、5。

順番に並ぶと、安心する。
でも、その間にある時間は、書けない。

算数は、間違えたらバツになる。
でも、考えすぎてもバツになる。

早く、正しく。

それが、いい算数。

ぼくは、たぶん算数がきらいじゃない。
でも、ときどき、数字が先に歩いていって、
ぼくが置いていかれる気がする。

ぼくの算数は、
数えられるところから始まって、
数えきれないところで、少し立ち止まっている。

たぶんそれは、
まだ答えを出さなくていい場所だ。

ぼくは今日も、
正しい答えを書いたあとで、
消えたもののほうを、少しだけ考えている。

作者メッセージ

算数はまあ好きだったかな…。

そんな私が描いた物語…。

ぜひ読んでください!

2025/12/18 08:00

KanonLOVE
ID:≫ n00YEDEqgv6kY
コメント

クリップボードにコピーしました

この小説につけられたタグ

教科×感情小学生算数

通報フォーム

お名前
(任意)
Mailアドレス
(任意)

※入力した場合は確認メールが自動返信されます
違反の種類 ※必須 ※ご自分の小説の削除依頼はできません。
違反内容、削除を依頼したい理由など※必須

盗作されたと思われる作品のタイトル

どういった部分が元作品と類似しているかを具体的に記入して下さい。

※できるだけ具体的に記入してください。

《記入例》
・3ページ目の『~~』という箇所に、禁止されているグロ描写が含まれていました
・「〇〇」という作品の盗作と思われます。登場人物の名前を変えているだけで●●というストーリーや××という設定が同じ
…等

備考欄
※伝言などありましたらこちらへ記入
メールフォーム規約」に同意して送信しますか?※必須
タイトル
URL

この小説の著作権はKanonLOVEさんに帰属します

TOP