夕方。
校内放送が、
学園祭一日目の終了を告げた。
拍手。
歓声。
片づけを始める音。
「お疲れさまでしたー!」
その声が、
やけに遠く聞こえた。
◇
「神谷さん」
風白先生が、
いつもより少し低い声で言った。
「今日は、
何でも屋は早めに切り上げましょう」
「…はい」
理由は、
聞かなかった。
聞かなくても、
分かる。
◇
日が沈むと、
学校は急に広くなる。
人が減るからじゃない。
“距離”が、
変わるからだ。
廊下が、
妙に長い。
階段が、
一段多い。
同じ教室に、
二度入った気がする。
雷が、
肩の上で小さく言う。
「来たね」
◇
「…あれ?」
片づけをしていた生徒が、
困惑した声を上げた。
「出口、
どこだっけ…」
一人。
また一人。
大騒ぎにはならない。
でも、
確実に増えていく。
◇
風白先生は、
一切慌てなかった。
「こちらです」
「そのまま直進してください」
「階段は、
右手側です」
淡々と。
正確に。
まるで、
地図を頭の中で更新しているみたいに。
雷が、
ぼそっと言う。
「もう、
夜の構造把握してる」
◇
その頃。
夜の校舎の奥で。
「…あれ?」
labyrinthが、
首を傾げた。
「…ちょっと、
変えすぎた…?」
「今さら?」
glitchが、
楽しそうに笑う。
「でもさ―
人間、
まだ気づいてねぇ」
labyrinthは、
不安そうに床を見る。
「…困らせるつもり、
なかったんだけど…」
◇
何でも屋の面々は、
図書室に集まっていた。
オゾンさんは、
目を輝かせている。
「すごいね。
建物全体が、
半自動迷路。
設計者、
天才だよ」
雷が、
即座にツッコむ。
「褒めるな」
◇
そのとき。
「…先生」
私は、
小さく声を出した。
風白先生が、
振り向く。
「夜食、
出せませんよね」
一瞬。
先生は、
ほんの一瞬だけ、
考えた。
「…ええ」
静かな断言。
「今日は、
何も作りません」
雷が、
心底ほっとした顔をする。
「英断」
◇
校舎内。
迷っていた生徒たちは、
なぜか―
全員、
自然に出口に集まっていった。
誰かに誘導されたわけでもない。
でも。
「気づいたら、
ここにいた」
その証言が、
一致する。
風白先生は、
最後に鍵を閉めながら言った。
「…よし」
それだけ。
◇
翌日。
学園内で、
奇妙な“了解”が生まれていた。
・風白先生は、
料理をしない
・夜食は、
絶対に出さない
・学園祭の夜は、
寄り道しない
誰が決めたわけでもない。
でも、
全員が従っている。
「なんか…そうした方がいい気がする」
その一言で、
すべてが通じた。
◇
風白先生は、
職員室でお茶を飲んでいた。
いつも通り。
「学園祭、
無事終わりましたね」
誰かが言う。
「ええ」
穏やかな笑顔。
―何も、
起きていない。
その顔だった。
雷が、
私の耳元で囁く。
「ね。
この学校さ
一番怖いの、
先生だよ」
私は、
否定できなかった。
学園祭は終わった。
迷宮も、
一旦、
眠った。
でも―
この学校は、
もう普通じゃない。
それを、
誰も口にしないだけで。
校内放送が、
学園祭一日目の終了を告げた。
拍手。
歓声。
片づけを始める音。
「お疲れさまでしたー!」
その声が、
やけに遠く聞こえた。
◇
「神谷さん」
風白先生が、
いつもより少し低い声で言った。
「今日は、
何でも屋は早めに切り上げましょう」
「…はい」
理由は、
聞かなかった。
聞かなくても、
分かる。
◇
日が沈むと、
学校は急に広くなる。
人が減るからじゃない。
“距離”が、
変わるからだ。
廊下が、
妙に長い。
階段が、
一段多い。
同じ教室に、
二度入った気がする。
雷が、
肩の上で小さく言う。
「来たね」
◇
「…あれ?」
片づけをしていた生徒が、
困惑した声を上げた。
「出口、
どこだっけ…」
一人。
また一人。
大騒ぎにはならない。
でも、
確実に増えていく。
◇
風白先生は、
一切慌てなかった。
「こちらです」
「そのまま直進してください」
「階段は、
右手側です」
淡々と。
正確に。
まるで、
地図を頭の中で更新しているみたいに。
雷が、
ぼそっと言う。
「もう、
夜の構造把握してる」
◇
その頃。
夜の校舎の奥で。
「…あれ?」
labyrinthが、
首を傾げた。
「…ちょっと、
変えすぎた…?」
「今さら?」
glitchが、
楽しそうに笑う。
「でもさ―
人間、
まだ気づいてねぇ」
labyrinthは、
不安そうに床を見る。
「…困らせるつもり、
なかったんだけど…」
◇
何でも屋の面々は、
図書室に集まっていた。
オゾンさんは、
目を輝かせている。
「すごいね。
建物全体が、
半自動迷路。
設計者、
天才だよ」
雷が、
即座にツッコむ。
「褒めるな」
◇
そのとき。
「…先生」
私は、
小さく声を出した。
風白先生が、
振り向く。
「夜食、
出せませんよね」
一瞬。
先生は、
ほんの一瞬だけ、
考えた。
「…ええ」
静かな断言。
「今日は、
何も作りません」
雷が、
心底ほっとした顔をする。
「英断」
◇
校舎内。
迷っていた生徒たちは、
なぜか―
全員、
自然に出口に集まっていった。
誰かに誘導されたわけでもない。
でも。
「気づいたら、
ここにいた」
その証言が、
一致する。
風白先生は、
最後に鍵を閉めながら言った。
「…よし」
それだけ。
◇
翌日。
学園内で、
奇妙な“了解”が生まれていた。
・風白先生は、
料理をしない
・夜食は、
絶対に出さない
・学園祭の夜は、
寄り道しない
誰が決めたわけでもない。
でも、
全員が従っている。
「なんか…そうした方がいい気がする」
その一言で、
すべてが通じた。
◇
風白先生は、
職員室でお茶を飲んでいた。
いつも通り。
「学園祭、
無事終わりましたね」
誰かが言う。
「ええ」
穏やかな笑顔。
―何も、
起きていない。
その顔だった。
雷が、
私の耳元で囁く。
「ね。
この学校さ
一番怖いの、
先生だよ」
私は、
否定できなかった。
学園祭は終わった。
迷宮も、
一旦、
眠った。
でも―
この学校は、
もう普通じゃない。
それを、
誰も口にしないだけで。
- 1.先生が声を出して。
- 2.契約シマセンカ?
- 3.優シイ先生ノ協力デ活動開始シマス
- 4.契約ナキ悪魔タチ
- 5.新しい歯車が、静かに噛み合い始める
- 6.試験と、噂の始まり。 ―それは、助ける覚悟があるかを見る試験
- 7.―星が軽くするもの
- 8.風が変わる前に悪魔、夏休みへ帰る
- 9.魔界の夏日記
- 10.タクサン人ガ増エマシタ。
- 11.絶対(?)爆笑回 先生ハ料理ヲ出来ナイ。 前編
- 12.絶対(?)爆笑回 先生ハ料理ヲ出来ナイ。 後編
- 13.部員、増エマシタ
- 14.準備トイウ名ノ、予兆―
- 15.迷子ガ増エル日
- 16.昼ノ、普通
- 17.夜ハ、静カニ壊レル
- 18.先生ハ、気ヅカセナイ―
- 19.点数の裏側
- 20.冬になる前に
- 21.零点ノ居場所