学園祭当日。
朝から、
校内は人で溢れていた。
笑い声。
呼び込みの声。
音楽。
昨日までの違和感は、
全部、
この賑やかさに飲み込まれている。
…はずだった。
◇
何でも屋のブースは、
図書室の奥。
「相談所」
と書かれた紙が、
今日も控えめに貼られている。
派手な装飾はない。
机と椅子だけ。
それでも、
人は来た。
「迷子になって…」
「クラスが見つからなくて…」
内容は、
いつもより少し多いだけ。
でも。
「さっきも、
同じところを通った気がするんです」
「階段、
こんなに長かったでしたっけ?」
…やっぱり。
◇
「神谷さん」
風白先生は、
いつもの位置。
少し離れた場所で、
全体を見渡している。
前に出ない。
でも、
確実に視界に入れている。
「導線は、
想定よりも複雑です。
予定より、
迷子が多いですね」
淡々とした報告。
まるで、
想定内みたいに。
◇
「やっほー」
雷が、
机の下から顔を出す。
「昼なのに、
もう迷宮っぽいよ」
「labyrinth、
夜しか動かないはずじ……」
「無意識、
ってやつ」
…一番厄介なやつ。
◇
オゾンさんは、
人の流れを見ながら、
楽しそうにメモを取っていた。
「面白いね。
構造は固定。
でも、
認識がずれる」
「君たち、
ここ、気づいてる?」
彼は、
ある角を指差す。
「三回曲がると、
必ず同じ景色になる」
…怖いこと言わないで。
◇
そのとき。
「…あれ?」
人混みの中で、
一人の生徒が立ち止まった。
「ここ、
さっき…」
言葉が途切れる。
次の瞬間。
「あ、あれ?」
また、
別の場所で。
連鎖する。
小さな、
違和感。
誰も騒がない。
でも、
確実に広がっている。
◇
風白先生が、
一歩、前に出た。
たった一歩。
「こちら、
通れますよ」
穏やかな声。
その一言で、
人の流れが変わる。
混乱が、
解けていく。
…すごい。
雷が、
小声で言う。
「先生さ」
「“迷宮の癖”もう把握してる」
◇
昼。
迷宮は、
まだ“遊び”の顔をしている。
笑い声。
写真。
屋台の匂い。
でも。
壁の向こうで、
labyrinthが、
ぽつりと呟いた。
「…楽しい…」
glitchが、
にやっと笑う。
「昼でも、
通じるな」
誰にも聞こえない声。
でも、
風白先生だけは、
空間のズレを避けるように歩いた。
目は、
決して向けない。
◇
私は、
胸の奥がざわつくのを感じていた。
このまま、
夜になったら。
昼の“普通”は、
保てるのか。
風白先生は、
時計を見た。
「…夕方まで、
持てばいいのですが」
その言葉が、
やけに重かった。
学園祭は、
まだ半分。
そして―
本番は、
夜だ。
朝から、
校内は人で溢れていた。
笑い声。
呼び込みの声。
音楽。
昨日までの違和感は、
全部、
この賑やかさに飲み込まれている。
…はずだった。
◇
何でも屋のブースは、
図書室の奥。
「相談所」
と書かれた紙が、
今日も控えめに貼られている。
派手な装飾はない。
机と椅子だけ。
それでも、
人は来た。
「迷子になって…」
「クラスが見つからなくて…」
内容は、
いつもより少し多いだけ。
でも。
「さっきも、
同じところを通った気がするんです」
「階段、
こんなに長かったでしたっけ?」
…やっぱり。
◇
「神谷さん」
風白先生は、
いつもの位置。
少し離れた場所で、
全体を見渡している。
前に出ない。
でも、
確実に視界に入れている。
「導線は、
想定よりも複雑です。
予定より、
迷子が多いですね」
淡々とした報告。
まるで、
想定内みたいに。
◇
「やっほー」
雷が、
机の下から顔を出す。
「昼なのに、
もう迷宮っぽいよ」
「labyrinth、
夜しか動かないはずじ……」
「無意識、
ってやつ」
…一番厄介なやつ。
◇
オゾンさんは、
人の流れを見ながら、
楽しそうにメモを取っていた。
「面白いね。
構造は固定。
でも、
認識がずれる」
「君たち、
ここ、気づいてる?」
彼は、
ある角を指差す。
「三回曲がると、
必ず同じ景色になる」
…怖いこと言わないで。
◇
そのとき。
「…あれ?」
人混みの中で、
一人の生徒が立ち止まった。
「ここ、
さっき…」
言葉が途切れる。
次の瞬間。
「あ、あれ?」
また、
別の場所で。
連鎖する。
小さな、
違和感。
誰も騒がない。
でも、
確実に広がっている。
◇
風白先生が、
一歩、前に出た。
たった一歩。
「こちら、
通れますよ」
穏やかな声。
その一言で、
人の流れが変わる。
混乱が、
解けていく。
…すごい。
雷が、
小声で言う。
「先生さ」
「“迷宮の癖”もう把握してる」
◇
昼。
迷宮は、
まだ“遊び”の顔をしている。
笑い声。
写真。
屋台の匂い。
でも。
壁の向こうで、
labyrinthが、
ぽつりと呟いた。
「…楽しい…」
glitchが、
にやっと笑う。
「昼でも、
通じるな」
誰にも聞こえない声。
でも、
風白先生だけは、
空間のズレを避けるように歩いた。
目は、
決して向けない。
◇
私は、
胸の奥がざわつくのを感じていた。
このまま、
夜になったら。
昼の“普通”は、
保てるのか。
風白先生は、
時計を見た。
「…夕方まで、
持てばいいのですが」
その言葉が、
やけに重かった。
学園祭は、
まだ半分。
そして―
本番は、
夜だ。
- 1.先生が声を出して。
- 2.契約シマセンカ?
- 3.優シイ先生ノ協力デ活動開始シマス
- 4.契約ナキ悪魔タチ
- 5.新しい歯車が、静かに噛み合い始める
- 6.試験と、噂の始まり。 ―それは、助ける覚悟があるかを見る試験
- 7.―星が軽くするもの
- 8.風が変わる前に悪魔、夏休みへ帰る
- 9.魔界の夏日記
- 10.タクサン人ガ増エマシタ。
- 11.絶対(?)爆笑回 先生ハ料理ヲ出来ナイ。 前編
- 12.絶対(?)爆笑回 先生ハ料理ヲ出来ナイ。 後編
- 13.部員、増エマシタ
- 14.準備トイウ名ノ、予兆―
- 15.迷子ガ増エル日
- 16.昼ノ、普通
- 17.夜ハ、静カニ壊レル
- 18.先生ハ、気ヅカセナイ―
- 19.点数の裏側
- 20.冬になる前に
- 21.零点ノ居場所