放課後。
何でも屋の活動時間。
夜食がなくなった図書室の奥は、
その分、
静かだった。
今日は依頼もなく、
私は机に頬杖をついていた。
「…平和だね」
雷が、
私の足元でごろっと転がる。
「平和すぎて逆に嫌な予感すんだけど」
…やめてほしい。
◇
そのとき。
「失礼するよ」
聞き慣れない声。
振り向くと、
白衣の人が立っていた。
―白衣。
学校で見るには、
少しだけ浮いている。
腰のベルトには、
ビーカー。
本当に、
ビーカー。
「オゾンって名乗っとく」
にこっと、
普通の笑顔。
「よろしくたのむよ」
…普通。
少なくとも、
見た目も話し方も。
「何でも屋って、ここ?」
「は、はい」
私は慌てて立ち上がる。
「依頼、ですか?」
「んー」
彼―
―オゾンさんは、
部屋をぐるっと見回した。
そして。
雷の方を見る。
一瞬だけ。
ほんの一瞬だけ、
目が合った。
雷が、
ぴしっと固まる。
…え?
「…へえ」
オゾンさんは、
興味深そうに目を細めた。
「君…何か隠しているね?」
心臓が、
跳ねた。
◇
その瞬間。
―ぐにゃ。
視界が、
歪んだ。
本棚の位置が、
一瞬で変わる。
「…あれ?」
床が、
知らない模様になる。
「…またやっちゃった…?」
聞こえたのは、
か細い声。
部屋の隅。
半透明の少女が、
ぽつんと立っていた。
「ここまで来れたんだ…すごい…」
彼女は、
こちらを見て、
首を傾げる。
「あれ…名前名乗ってなかったっけ…」
少し考えてから、
ぱっと顔を上げた。
「まあいいや」
「labyrinthね よろしく」
…え。
雷が、
低く唸る。
「…迷宮系か」
◇
「おいおい」
別の声。
本棚の“向こう側”から、
ぬっと手が伸びた。
壁を、
すり抜けるように。
その手を掴んで、
少年が現れる。
「へっ…ここまできてやったぜ」
得意げな顔。
「そういや言ってねーもんな」
「glitchだ、よろしく」
…ちょっと待って。
「二人とも…」
私は、
言葉を選びながら聞く。
「悪魔、ですか?」
labyrinthは、
びくっと肩をすくめた。
「あ…ばれた…?」
glitchは、
けろっとしている。
「そーそー」
「安心しろよ、今日は壊す気ねーから」
…今日は?
◇
オゾンさんは、
その様子を、
目を輝かせて見ていた。
「…へえ
本当に、見えるんだ」
雷が、
ゆっくりと私を見る。
「…こいつ、人間だよな?」
私は、
小さく頷く。
「契約、してないです」
オゾンさんは、
満足そうに笑った。
「そっか」
「じゃあ僕、
ここ、入部していい?」
…え?
「新しいこと、
いっぱい起きそうだからさ」
labyrinthが、
小さく手を挙げる。
「あの…」
「夜は…学校、
迷宮にしてて…」
「え…?」
glitchが、
肩をすくめる。
「だから、
たまに迷うだろ?」
…たまに?
雷が、
私の耳元で呟く。
「平和、終わったな」
私は、
乾いた笑いを浮かべた。
何でも屋に、
“悪魔が見える人間”と、
“学校を迷宮にする悪魔”と、
“チート系双子悪魔”が来た。
―間違いなく、
普通じゃない。
でも。
私は、
小さく息を吸って、
言った。
「…何でも屋へ、
ようこそ」
また一つ、
騒がしい日常が増えた気がした。
何でも屋の活動時間。
夜食がなくなった図書室の奥は、
その分、
静かだった。
今日は依頼もなく、
私は机に頬杖をついていた。
「…平和だね」
雷が、
私の足元でごろっと転がる。
「平和すぎて逆に嫌な予感すんだけど」
…やめてほしい。
◇
そのとき。
「失礼するよ」
聞き慣れない声。
振り向くと、
白衣の人が立っていた。
―白衣。
学校で見るには、
少しだけ浮いている。
腰のベルトには、
ビーカー。
本当に、
ビーカー。
「オゾンって名乗っとく」
にこっと、
普通の笑顔。
「よろしくたのむよ」
…普通。
少なくとも、
見た目も話し方も。
「何でも屋って、ここ?」
「は、はい」
私は慌てて立ち上がる。
「依頼、ですか?」
「んー」
彼―
―オゾンさんは、
部屋をぐるっと見回した。
そして。
雷の方を見る。
一瞬だけ。
ほんの一瞬だけ、
目が合った。
雷が、
ぴしっと固まる。
…え?
「…へえ」
オゾンさんは、
興味深そうに目を細めた。
「君…何か隠しているね?」
心臓が、
跳ねた。
◇
その瞬間。
―ぐにゃ。
視界が、
歪んだ。
本棚の位置が、
一瞬で変わる。
「…あれ?」
床が、
知らない模様になる。
「…またやっちゃった…?」
聞こえたのは、
か細い声。
部屋の隅。
半透明の少女が、
ぽつんと立っていた。
「ここまで来れたんだ…すごい…」
彼女は、
こちらを見て、
首を傾げる。
「あれ…名前名乗ってなかったっけ…」
少し考えてから、
ぱっと顔を上げた。
「まあいいや」
「labyrinthね よろしく」
…え。
雷が、
低く唸る。
「…迷宮系か」
◇
「おいおい」
別の声。
本棚の“向こう側”から、
ぬっと手が伸びた。
壁を、
すり抜けるように。
その手を掴んで、
少年が現れる。
「へっ…ここまできてやったぜ」
得意げな顔。
「そういや言ってねーもんな」
「glitchだ、よろしく」
…ちょっと待って。
「二人とも…」
私は、
言葉を選びながら聞く。
「悪魔、ですか?」
labyrinthは、
びくっと肩をすくめた。
「あ…ばれた…?」
glitchは、
けろっとしている。
「そーそー」
「安心しろよ、今日は壊す気ねーから」
…今日は?
◇
オゾンさんは、
その様子を、
目を輝かせて見ていた。
「…へえ
本当に、見えるんだ」
雷が、
ゆっくりと私を見る。
「…こいつ、人間だよな?」
私は、
小さく頷く。
「契約、してないです」
オゾンさんは、
満足そうに笑った。
「そっか」
「じゃあ僕、
ここ、入部していい?」
…え?
「新しいこと、
いっぱい起きそうだからさ」
labyrinthが、
小さく手を挙げる。
「あの…」
「夜は…学校、
迷宮にしてて…」
「え…?」
glitchが、
肩をすくめる。
「だから、
たまに迷うだろ?」
…たまに?
雷が、
私の耳元で呟く。
「平和、終わったな」
私は、
乾いた笑いを浮かべた。
何でも屋に、
“悪魔が見える人間”と、
“学校を迷宮にする悪魔”と、
“チート系双子悪魔”が来た。
―間違いなく、
普通じゃない。
でも。
私は、
小さく息を吸って、
言った。
「…何でも屋へ、
ようこそ」
また一つ、
騒がしい日常が増えた気がした。