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250閲覧! 依頼人の参加待ってます!【大型(?)参加型】 学園内何でも屋〜悪魔ハ何者ナノカ、理由ハ魔導書二アル。〜

#12

絶対(?)爆笑回 先生ハ料理ヲ出来ナイ。 後編

鍋の煙が立ち上る図書室の奥。
スープ戦線をかろうじて乗り切った私たちの目の前で、
風白先生は静かにデザートの材料を並べていた。

「さて、最後はデザートです」
先生の声は穏やかそのもの。
でも、
私の心臓は小さく跳ねた。
…もう、何が起きても驚けない。

「先生、これは…ケーキですか?」
紗玖が恐る恐る聞く。

「はい。簡単なものです」
先生はにっこり微笑む。
確かに、
見た目は普通の生クリームとスポンジ。
―普通に見えるだけだ。

部員たちは、
おそるおそる手を出す。
私も、
小さなスプーンを持って立ち上がる。

先生は真剣そのものだ。
一つひとつの材料を計量し、混ぜ、焼く―
…しかし、混ぜ方が明らかに不自然だ。
生クリームが飛び散り、
粉砂糖が空中を舞う。

「…先生…」
私が声をかけると、
先生は真顔でうなずく。

「はい、神谷さん、少しだけ手伝ってください」

小さなボウルを持って、
生地をかき混ぜる。
混ざっているはず…
…なのに、見た目はまだ粉っぽい。

オーブンに入れると、
すぐに異変が起きた。
「…え、膨らんでない?」
茉冬さんが顔をしかめる。

「少し時間がかかるだけです」
先生の声は、
まるで何事もないように響く。

でも、
オーブンの中のケーキは、
ぺしゃんと沈んでいる。

「…先生、これは…」
「はい…焼き加減は…微妙ですね」
平然と言う先生の目は真剣そのもの。
その真剣さが、
余計に怖い。

生クリームをのせる段階で、
さらなる惨劇が待っていた。

泡立て器で混ぜるたびに、
生クリームは固く、
白く、
粉っぽく変化していく。

「…これ、食べられるのか…?」
雷が耳元で小さくつぶやく。

ついに、
先生は皿に盛り付けた。

見た目はケーキ…?
でも、
触れると、
ボソボソと崩れ、
口に運べば舌が拒絶することを約束しているような感触。

「…味見をお願いします」
先生は、
まるで世界最高のシェフのように差し出す。

私が一口食べると―
―思わず目を閉じた。
口の中で生地と砂糖と何か不思議な香辛料が混ざり合い、
味覚がパニックを起こす。

「…うっ…」
紗玖も、
茉冬さんも、
無言でスプーンを置いた。

雷が小さく舌打ちする。
「…もう、これは…最後の晩餐級だ」

先生は笑顔を崩さない。
「…少し、工夫すれば、皆で楽しめるかもしれませんね」
その声が余計に恐ろしい。

「…先生…!」
私が思わず叫ぶと、
先生は小さく首をかしげる。

「神谷さん、焦ることはありません。少しずつ、直せば大丈夫です」

部員たちは目を見合わせ、
肩をすくめる。
誰も声に出せない。
でも、
動きは止まらない。
何とかして、
これを「食べられるもの」に変えなければならない。

私は小さく息を吐き、
包丁を握り直す。
まだ、
戦いは終わっていない。
夜食作りの、
最後の戦線。

風白先生は、
笑顔のまま、次の指示を出す。
「神谷さん、次はトッピングをお願いします」

…心の奥で、雷がぽつりと言った。

「…やっぱり、この顧問、最強すぎる」

でも、
誰も見捨てない。
部員たちと一緒に、私は立ち向かう。
夜食作りの“最終局面”が、
今、
静かに幕を開けた。

図書室の奥は、
もう戦場のようになっていた。
デザートの“最後の晩餐”は、
まだ完成していない。

「次は、フルーツのトッピングですね」
先生は、
真剣そのものの表情で果物を切り始める。
包丁の動きは正確すぎて、
どこか機械的。
でも切った瞬間、
オレンジが粉々に砕け、
イチゴは変な色に変化していた。

「…先生、それ、大丈夫ですか…?」
紗玖が恐る恐る尋ねる。

「大丈夫です、神谷さん」
先生の声は穏やか。
でも、
何をどうして大丈夫なのか、
まったく理解できない。

盛り付けが始まると、
悲劇は一気に加速した。

生クリームとスポンジの上に、
粉々になった果物を乗せる―
―はずが、なぜか液体が分離し、
皿の上で謎の固まりがうごめくような状態になってしまった。

「…えっと、これは…ケーキ…?」
茉冬さんが小さく呟く。
雷が小さく舌打ちする。
「もう…食べられる気がしない」

先生は、
何も悪びれず真面目な顔で説明する。
「神谷さん、ここに少し砂糖を足すと、味が整うかもしれません」

「…いや、整わない…!」
私が声を上げると、
先生はうなずきながらも手を止めない。
むしろ真剣な顔で、
次の指示を待っている。

部員たちは互いに目を合わせ、
深くため息をつく。
「…私たち、もうこれ食べられないよね…」
紗玖の小さな声に、
誰も否定できない。

そして、
ついに先生は皿を差し出した。
見た目はかろうじて「ケーキっぽい形」なのに、
香りは完全に怪しい。
手で触ると、
ボソボソ、
ベタベタ、
液体が染み出し、
口に入れる前から絶望感しかない。

「…味見を」
先生は穏やかに言う。

私が一口食べると、
口の中で粉と砂糖と果物と生クリームがまざり、
完全に味覚崩壊。
雷が耳元で小さく呟く。
「…これはもう、食べ物じゃない。芸術品だ」

先生は微笑みながらも、
真面目そのもの。
「では、皆さんもどうぞ」

部員たちは全員、
無言でスプーンを置く。
目は皿を避け、
口を閉ざす。
だが、
先生はまったく気にしない。
「次は、皆で分けられる工夫をしましょう」
その声が、
逆に恐怖だった。

私は深く息を吸い、
決意する。
まだ、
夜食作りは終わっていない。
でも、
この戦場で、
私たちは何とか食べられるものに変えなければならない。

雷が小さくつぶやく。
「…やっぱり、最終局面の顧問は破壊力が違う」

私は小さく頷く。
部員たちと一緒に、
“食べられない料理”との戦いが、
まだ続くのだ。

誰も、
すぐには動かなかった。
皿の上には、
“かつてケーキだった何か”。

見た目は崩壊し、
香りは危険域を超え、
触れば粉と液体が同時に主張してくる。

「…これは…」
紗玖が、言葉を探す。

「……完全にアウトだな」
雷が、遠慮なく言い切った。

でも。
風白先生だけは、
違った。

「…まだ、終わっていません」

その声は、
相変わらず穏やかで、
妙に前向きだった。

「工夫次第で、結果は変わります」

…その自信は、
どこから来るんですか。
私は思わず、
先生を見る。

先生は、皿を見ていない。
部員たちを見ている。

「皆さん」
静かな声。
「今の状態を、どう改善すればいいと思いますか」

―え。
ここで、丸投げ?



一瞬の沈黙。

次に動いたのは、
茉冬さんだった。
「…砕いて、冷やせば…まだ…」

「ゼリー系に逃げるしかない」
紗玖が即座に続く。

雷が腕を組む。
「熱を入れたのが失敗だな。甘味は、もう加熱しちゃダメだ」

私は、
はっとする。
「…混ぜないで、分離させた方がいいかも」

ばらばらだった意見が、
少しずつ、
一本の線になる。

風白先生は、
それを一つも否定しない。

「なるほど…」
メモを取りながら、
真剣に頷く。

「では、一度、すべて解体しましょう」

…解体。
その言葉が、
なぜか一番怖かった。



ボウルに移される“それ”。
砕かれ、
潰され、
もはや原型はない。

先生は、
ここで一切、
手を出さなかった。

完全に、部員主導。

―珍しい。

「神谷さん」
先生が、静かに言う。

「今日は、皆さんの判断を優先します」

…え。

雷が、
私の耳元で小さく言う。
「自覚あるんだな…」

私は、
少しだけ息を整えて、
スプーンを握り直した。

冷蔵庫。
氷。
ゼラチン。
砂糖は―
―最小限。

「…先生、味見は…」

「今回は、皆さんが“いける”と思ったらで」

その一言で、
場の空気が変わった。



冷やす時間。

沈黙。

誰も喋らない。
ただ、
時計の音だけが聞こえる。

やがて。

「…固まってる」
紗玖が、そっと言った。

透明感のある、
なんとかデザートと呼べそうな形。

「…匂い、マシ」
茉冬さんが、
慎重に評価する。

私は、
一口。

…食べられる。
ちゃんと、
甘い。

「…っ」
思わず、
息が漏れた。

雷が、覗き込む。
「どうだ?」

「…生きてる」

完全に、
デザートを作っているときに、
出てくるような言葉ではない。
でも、
その瞬間、
部員たちの肩から、
一斉に力が抜けた。



風白先生は、
完成した器を見て、
少しだけ目を細めた。

「…素晴らしいですね」

それは、
教師としての評価でも、
顧問としての言葉でもなく。

ただの、
心からの感想だった。

「皆さんのおかげです」

一瞬、
先生の視線が、
空を切った。

雷の立っている位置。

でも、
やっぱり、見ない。

見えていないふりを、
最後まで貫く。



こうして。

夜食は、
“なんとか食べられるもの”として完成した。

最初から、
先生一人だったら―
確実に、最後の晩餐だった。

でも。

誰も、先生を責めない。
誰も、笑わない。

ただ、
全員が思っている。

―この顧問、
料理は壊滅的。
でも、
人の扱いだけは、
完璧すぎる。

雷が、
ぽつりと言った。

「…なぁ、ゆめ」
「うん」
「この人、
自分がダメな分野、
ちゃんと引くんだな」

私は、
うなずいた。

風白先生は、
“見えないふり”も、
“できないふり”も、
全部、
自覚して選んでいる。

だからこそ。

何でも屋は、
今日も潰れなかった。

―むしろ、
少しだけ、
強くなった気がした。



数日後。

何でも屋の活動日。

ホワイトボードに書かれていた文字が、
いつの間にか、変わっていた。

―本日の活動:相談のみ
(※調理なし)

…誰が書いたかは、やっぱり分からない。



「今日、夜食作らないんですか?」
新しく来た依頼人が、
首を傾げる。

「…作らないよ」
私は、即答した。

「え、なんで?」

部室(図書室の奥)にいた全員が、
一瞬だけ、
風白先生を見る。

先生は、
ちょうど資料を整理していて、
こちらを見ていない。

「…色々あって」
「うん、色々」

説明は、
それ以上増えなかった。



実は。

夜食を作る、
という案は、
誰かが正式に却下したわけじゃない。

でも。

材料を出す人がいなくなり、
家庭科室を使う話題が出ると沈黙が流れ、
鍋、フライパン、包丁、すべてが触れてはいけない過去扱いになった

結果。

夜食は、
やらないものになった。



「先生、夜食やらなくていいんですか?」
誰かが、
軽く聞いた。

風白先生は、
一瞬だけ考えてから、
穏やかに答える。

「ええ。
相談に来る人が、
温かい気持ちになれれば、
それで十分です」

…温かい気持ち。
胃じゃなくて、心の方。

雷が、
私の肩に肘をついて言う。

「つまり―
―この学園、
夜食より平和を選んだってことだな」



その日から。

何でも屋は、
お菓子を“持ち込む”場所になった。

買ってきたパン。
差し入れのクッキー。
誰かの手作り(※風白先生以外)。

「作るのは禁止、
食べるのは自由」

―これも、
誰も決めてないルール。

でも、
全員が守っている。



家庭科室の前を通るたび、
私は思う。

鍋は、
今日も静かだ。

砂糖と塩は、
それぞれの棚で、
平和に眠っている。

風白先生は、
相変わらず完璧な先生で、
料理だけが、
永遠に封印された。

「…結果オーライ、だよね」
私が呟くと、

雷が、
にやっと笑った。

「うん。
一番の被害者が、
世界じゃなくて夜食で済んだ」

何でも屋は、
今日も平和です。

作者メッセージ

風白先生が教員免許廃止になるのも遠くはないでしょう。

でも、
こんな料理が下手なやつ、
いないよね、フツーは?

いないことを願います。

2026/01/25 00:01

KanonLOVE
ID:≫ n00YEDEqgv6kY
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