喫茶店は、もうない。
看板は下ろされ、
星の欠片のようなランプも、
裏道から姿を消した。
地図にも、記憶にも、
あの場所は残らなかった。
それでよかったはずだった。
十二の星は巡り終え、
十三番目は数えられず、
物語は「完成しないまま」終わった。
マスターは、
それを終わりとして受け入れた――
はずだった。
けれど。
夜は相変わらず、正確だった。
眠れない星がある夜。
進むことも、戻ることもできず、
軌道を失った光が、
星にもなれず、闇にも溶けきれずにいる夜。
そんな夜になると、
マスターは、どうしても落ち着かなかった。
店を持たない身になっても、
ポットを持たなくなっても、
紅茶を淹れないと決めても。
――話を、聞かずにはいられなかった。
星座を持たない存在。
線で結ばれない天体。
中心にも、周縁にも属さない光。
それらは、星ではない。
惑星だ。
自ら光らず、
誰かの光を反射しながら、
それでも確かに存在し続けるもの。
誰かの人生のそばを回りながら、
影響を与え、与えられ、
それでも「主役」にはならない。
名前を与えられなかった役割。
選ばれなかった可能性。
誰かの物語の途中で、
静かに置き去りにされた存在。
星座のように語られず、
彗星のように注目もされず、
それでも、夜に迷い続ける者たち。
マスターは、
もう店を開かない。
決まった席も、
星図の壁も、
「いらっしゃいませ」という言葉もない。
ただ、夜のどこかで立ち止まり、
迷っている惑星たちの話を、
一人ずつ、聞くことにした。
癒さない。
救わない。
軌道を正さない。
ただ、
「まだここにいる」ことを、
否定しないために。
星になれなかった者が、
星になれなかった存在の話を聞く。
それは、
物語の続きではない。
終わらなかった夜が、
別の形で、まだ息をしているという証明だ。
こうして第二章は始まる。
星ではない光たちの、
語られなかった軌道の夜。
―惑星たちが、
ようやく立ち止まるための、
静かな場所として。
看板は下ろされ、
星の欠片のようなランプも、
裏道から姿を消した。
地図にも、記憶にも、
あの場所は残らなかった。
それでよかったはずだった。
十二の星は巡り終え、
十三番目は数えられず、
物語は「完成しないまま」終わった。
マスターは、
それを終わりとして受け入れた――
はずだった。
けれど。
夜は相変わらず、正確だった。
眠れない星がある夜。
進むことも、戻ることもできず、
軌道を失った光が、
星にもなれず、闇にも溶けきれずにいる夜。
そんな夜になると、
マスターは、どうしても落ち着かなかった。
店を持たない身になっても、
ポットを持たなくなっても、
紅茶を淹れないと決めても。
――話を、聞かずにはいられなかった。
星座を持たない存在。
線で結ばれない天体。
中心にも、周縁にも属さない光。
それらは、星ではない。
惑星だ。
自ら光らず、
誰かの光を反射しながら、
それでも確かに存在し続けるもの。
誰かの人生のそばを回りながら、
影響を与え、与えられ、
それでも「主役」にはならない。
名前を与えられなかった役割。
選ばれなかった可能性。
誰かの物語の途中で、
静かに置き去りにされた存在。
星座のように語られず、
彗星のように注目もされず、
それでも、夜に迷い続ける者たち。
マスターは、
もう店を開かない。
決まった席も、
星図の壁も、
「いらっしゃいませ」という言葉もない。
ただ、夜のどこかで立ち止まり、
迷っている惑星たちの話を、
一人ずつ、聞くことにした。
癒さない。
救わない。
軌道を正さない。
ただ、
「まだここにいる」ことを、
否定しないために。
星になれなかった者が、
星になれなかった存在の話を聞く。
それは、
物語の続きではない。
終わらなかった夜が、
別の形で、まだ息をしているという証明だ。
こうして第二章は始まる。
星ではない光たちの、
語られなかった軌道の夜。
―惑星たちが、
ようやく立ち止まるための、
静かな場所として。
- 1.ティータイムの始まり。
- 2.乙女座 やさしく、つよくなれなくて。
- 3.蟹座 甘さの奥で、息を止めてきた
- 4.牡牛座 余裕の仮面と、足りない甘さ
- 5.山羊座 ゆっくりでいいと、知らなかった
- 6.双子座 言葉が二つに割れたまま
- 7.天秤座 言葉を量る、沈黙の重さは。
- 8.獅子座 微笑みの奥で、拳を握るひと
- 9.射手座 遠くを願い、声を置いてきた
- 10.水瓶座 笑っているあいだは、自由でいられた
- 11.牡羊座 引き受ける勇気と、静かな覚悟
- 12.魚座 仮の笑顔と振り返ってしまったこと
- 13.蟹座 信じられなかった手の、ぬくもりを思い出すまで
- 14.宇宙という名の空を結びに。
- 15.蛇遣い座 13番目になれなくて。
- 16.第二期 惑星たちの夜
- 17.金星 一行の本音は、金星に預けて
- 18.土星 抱え込めてしまった者は、零れ方を知らない
- 19.天王星 光を残す星