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仮面と鏡

#3

選ばれて見つかる仮面

影は、
私の動きより一拍遅れて、地面をなぞった。

足を一歩前に出すと、
影も同じように伸びる。
けれど、その形は―

―私のものではない。

角が、ある。

はっきりした形ではない。
けれど、
頭のあたりから、
何かが伸びかけているような、
不自然な歪み。

「…これ」

そう呟くと、
狐のお面の少年が、ちらりと影を見た。

「もう、始まってるね」

他人事のような声だった。

それでもどこか明るい感じがして、
それがかえって不気味だった。

「影が変わるのは、
仮面が“気づいた”合図なんだ」

「仮面が…?」

「うん。君のことを」

彼は歩き出す。
私は、
少し遅れて、
その後を追った。

灯りの下を抜けるたび、
周囲の景色が、
はっきりしていく。

屋台のようなものが、
道の両脇に並んでいた。
布を垂らした簡素な店もあれば、
骨組みだけのもの、
最初から何も置いていない場所もある。

共通しているのは―
売っているものが、
仮面だけだということ。

鬼の顔。
泣き顔。
ひび割れた陶器のようなもの。
人の顔に酷似しているのに、
決定的に“人ではない”表情。

それらが、
無言で並んでいる。

値札はない。
呼び込みの声もない。

ただ、
仮面の前に立った人影だけが、
いつの間にか姿を消していく。

「選ぶ場所、じゃないんだ」

私がそう言うと、
狐面の少年は、小さく笑った。

「うん。気づいた?
ここはね、
仮面に“見つかる”場所」

彼の言葉に、
背中が、ぞくりとした。

「見つかったら、
どうなるの?」

「被る」

即答だった。

「被って、被ったまま、それで完成」

完成、という言い方が、
妙に引っかかった。

「…完成しなかった人は?」

問いかけると、
少年の歩みが、ほんの一瞬だけ、遅れた。

本当に、ほんの一瞬。

けれど、私は見逃さなかった。

「さあ」

彼は、肩をすくめる。

「仮面にも、好みがあるから」

その言い方は、
冗談めいているのに、
どこか冷えていた。

一つの屋台の前で、
少年が足を止める。

そこには、
何も置かれていなかった。

布もない。
台もない。

ただ、空間だけが、
ぽっかりと空いている。

「…ここは?」

「昔、仮面があった場所」

「昔?」

私が聞き返すと、
狐のお面の奥で、
彼の視線が、
わずかに逸れた気がした。

「外れちゃったんだ」

軽い口調だった。

「顔から」

その一言で、
空気が、少し重くなる。

「仮面って、外れるの?」

「普通は、外れない」

彼は言った。

「でも、
無理に剥がそうとしたり、
鏡を見たりするとね」

鏡。

その言葉に、
胸の奥が、きしんだ。

「君は、割ったんだよね」

責める調子ではなかった。
確認するような、
それでいて、どこか懐かしむような声。

「…あなたも?」

私がそう尋ねると、
狐面の少年は、答えなかった。

代わりに、
自分の狐のお面に、
指先で触れる。

撫でる、
というより、
確かめるように。

「僕はね」

ぽつりと、言った。

「割れたまま、ここに来た」

それ以上は、
何も語られなかった。

そのとき、
私の足元の影が、
ゆっくりと、
はっきりした形を取り始める。

今度は、
はっきりと分かる。

―狐ではない。

けれど、
人でもない。

「ほら」

少年が、こちらを見る。

「君の仮面、
―もうすぐ来るよ」

灯りが、一斉に揺れた。

作者メッセージ

もうねむい…

活動報告書いて終わりにしよう…

というわけで、
活動報告へ、
ご―!(zzz😴

2026/01/21 00:00

KanonLOVE
ID:≫ n00YEDEqgv6kY
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仮面和風ファンタジー

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