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閲覧数100ッ!? 参加〆切1月31日です! 【参加型】あなたは何の宝石ですか?話を聞かせてください。

#2

アレキサンドライト 秘めた光の奥には。

ボクは、自分の足音が嫌いだった。
地面に触れるたび、そこに「確かに存在している」ことを突きつけられる気がして。

でも、魔女は何も言わない。
ただ前を歩く。風に乗るみたいに、軽やかに。

衣の色が、水色から紫へと移ろう。
アレキサンドライトは、迷う宝石だ。
昼と夜で色を変えるのは、きっと世界に合わせるためじゃない。
自分が何者か、決めきれないからだ。

「ねえ、魔女さん」

呼ぶと、彼女は歩調を緩めた。

「貴方は、ボクのこと…信用していますか?」

少し、勇気がいった質問だった。
だってボクは、嘘をつく。
自分でも、どこまでが本当かわからないほど。

魔女は立ち止まり、振り返る。

「信用してるわ」

「即答なんですね」

「嘘をつく理由が、あなたの場合、優しいから」

…そんな言い方、卑怯だ。

胸の奥で、何かがひび割れる音がした。
忘れていた記憶の欠片が、ほんの少しだけ、動いた気がする。

ボクは、かつて守護者だった。
それは事実だ。
でも、守れなかった。

誰を?
何を?
なぜ?

そこだけが、霧に覆われている。

夜、焚き火のそばで、宝石は静かに光る。
紫色が、深く、深く染み込む。

「ボクね」

火を見つめたまま、口を開く。

「昔、何かを失ったんです」

それは、嘘じゃない。
でも、具体的なことは言えない。
言えないから、涙も出ない。

「それで…怖くなった。だから、嘘をつくようになったんだと思います」

魔女は、黙って聞いている。
魔法も、言葉も使わない。

「嘘をついていれば、本当を思い出さなくていい。
思い出さなければ、また失うこともない」

声が、少し震えた。

「……でも」

言葉が、喉につかえる。

「貴方と旅をしていると、忘れていたままじゃ、いられなくなる」

魔女は、ゆっくりとボクの方を見た。

「それは、怖い?」

「…はい」

正直に言えたことに、自分でも驚いた。

「でも」

衣の色が、ほんの一瞬、水色に戻る。

「それ以上に、嬉しいんです」

世界がまだ、光を求めていること。
守護者が、完全にいらなくなったわけじゃないこと。

そして何より—
ボク自身が、まだここにいていいと思えたこと。

魔女は、そっと言った。

「思い出さなくてもいい。
でも、今ここで感じたことは、嘘にしなくていい」

その言葉が、胸に落ちる。

ああ、そうか。
宝石は、完全な輝きを取り戻さなくてもいいんだ。

欠けていても、迷っていても、
誰かの隣で、光ることはできる。

「魔女さん」

「なに?」

「もしボクが、思い出して…泣いてしまったら」

少し、間を置いて。

「その時は、そばにいてくれますか?」

彼女は、微笑んだ。

「ええ。風が止まるまで」

その夜、アレキサンドライトは、
水色と紫のあいだで、静かに、確かに、輝いていた。

嘘じゃない光で。



朝の空は、薄く色を変えながら広がっていた。
水色と紫のあいだを、ためらうように。

丘の上で、魔女は足を止める。

「ここまでね」

ただそれだけ。
でも、胸の奥はちゃんと理解してしまった。

ボクは衣の端をつまむ。
きらきらとした布が、光を受けて、また色を変える。

「…ボク、少しだけ思い出しました」

魔女は振り返らない。

「全部じゃないですけど…
隠してた気持ちが、たぶん、いちばん重かった」

風が、間を通り抜ける。

魔女は、独り言みたいに言った。

「大切な想いほど、しまい込んでしまうものよね」

それが、ひとつ目の言葉だと、
ボクは後になって気づく。

「光って、いつも同じ顔をしていなくていい」

彼女は、空を見る。

「昼と夜で違っても、どちらも本物だから」

衣の色が、ゆっくりと移ろう。
水色から紫へ。
紫から、また水色へ。

「選ぶときってね」

魔女は、少しだけ微笑んだ。

「迷いが残るほうが、ちゃんと自分で決めた証だったりする」

胸の奥で、何かがほどける。

ボクは、息を吸って言った。

「…だから、ここで止まります」

魔女は、うなずいた。

「ええ。いい色になったわ」

それだけだった。

宝石の名前も、言葉の意味も、
彼女は一度も口にしない。

でも、確かに—
秘めていた想いは肯定され、
二つの色は否定されず、
この別れは、間違いじゃないと伝えられた。

「ありがとう、如月」

魔女は、また歩き出す。

風に乗って、先へ。
どこへ向かうのかは、語られない。

ボクは、見送らない。
ただ、空を見る。

水色と紫が溶け合う、境目の色。

「…いってらっしゃい」

その言葉は、静かで、確かだった。

変わり続けること。
隠していた想いを抱えたまま、選ぶこと。

それが、ボクの光だ。

物語は続く。
ページをめくる音は、風にまぎれて聞こえなかった。

作者メッセージ

【最後に一言有り!】

アレキサンドライトという宝石は、光によって色を変える。
昼の光の下では涼やかな緑や青を帯び、夜の灯りの中では赤や紫へと姿を変える。その性質から、この宝石には「秘めた想い」や「二面性」という言葉が与えられてきた。どちらか一方が偽りなのではなく、相反する色のすべてが本当である、という考え方がそこにはある。

また、色が定まらないことは「変化」や「再生」の象徴でもある。一度失われた輝きも、環境が変われば再び異なる光を宿す。そのためアレキサンドライトは、過去に縛られず、何度でも生まれ直す力を持つ宝石とされてきた。

さらにこの石には、「高貴な決断」という意味も重ねられている。迷いを抱えたまま選び取ること、自分自身の意思で進むこと。その静かな選択こそが、この宝石の最も深い輝きなのだと考えられている。

揺れながら変わり続けること。
その曖昧さを否定しない姿勢こそが、アレキサンドライトの宝石言葉の本質なのである。


貴方にも、レキサンドライトの秘めた想いと変化のご加護が訪れますように。

2026/01/21 00:00

KanonLOVE
ID:≫ n00YEDEqgv6kY
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