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あさがおのかんさつにっき

7月21日 はれ
きょう、あさがおのたねをうえました。
おかあさんが、
「まいにちちゃんとおみずをあげるのよ」
といいました。

たねは3つです。

あさがおがさいたら、おにいちゃんにみせます。

おにいちゃんは、あさがおがだいすきだからです。

7月25日 はれ
めがでました。
みどりいろで、ちいさくて、かわいいです。

たねは3つだったのに、めは4つありました。

おかあさんにいったら、

「よかったね」

といいました。

7月30日 くもり
はっぱが大きくなりました。
おみずをあげていたら、となりのへやから音がしました。

ドン。

ドン。

ドン。

おにいちゃんかなと思いました。

でも、おかあさんに、

「おにいちゃん、まだねてるからね」

といわれました。

だから、あさがおにおみずをあげました。

8月3日 はれ
つるがのびました。
おにいちゃんが、

「こっちだよ」

といった気がしました。

でも、へやにはだれもいませんでした。

おかあさんに言ったら、

「空耳よ」

と笑いました。

あさがおは、ちゃんとおひさまのほうへ伸びています。

8月8日 はれ
つぼみができました。
あしたには、さいているかもしれません。

おにいちゃんに見せたいです。

おにいちゃんは、もうすぐ帰ってくるそうです。

おかあさんがそう言っていました。

8月9日 はれ
あさがおがさいた。
青い花です。

とてもきれい。

でも、おにいちゃんは見てくれませんでした。

おかあさんが、

「まだ帰ってきてないからね」

と言いました。

おかしいです。

きのうは「もうすぐ」って言ってたのに。

8月14日 あめ
あさがおがたくさんさいています。
でも、へんなことがあります。

あさがおのはっぱのうらに、白い粉みたいなものがついています。

おかあさんに聞いたら、

「さわっちゃだめ」

と言われました。

どうしてかな。

8月18日 はれ
きょう、おにいちゃんのへやに入りました。
ベッドはありませんでした。

おにいちゃんの服もありませんでした。

写真だけがありました。

写真のおにいちゃんは笑っています。

でも、写真のうしろに、

「去年の8月18日」

と書いてありました。

おにいちゃんは去年、死んだそうです。

おかあさんが泣きながら教えてくれました。

わたしはびっくりしました。

だって、毎日おにいちゃんと話していたからです。

8月19日 はれ
おかあさんに聞きました。
「じゃあ、いままで話してたおにいちゃんはだれ?」

おかあさんは何も答えませんでした。

そのかわり、

「朝顔には近づかないで」

と言いました。

どうして?

8月20日 はれ
きょうの朝、朝顔がぜんぶ枯れていました。
昨日まであんなに元気だったのに。

おかあさんは、朝顔を全部抜きました。

そして、土も全部入れ替えました。

「もう大丈夫だから」

と言いました。

何が大丈夫なのか、わかりません。

8月21日 くもり
おにいちゃんの声がしません。
ちょっとさびしいです。

でも、おかあさんは嬉しそうです。

「これで、やっと終わった」

と言いました。

8月22日 はれ
学校の先生が家に来ました。
先生は、おかあさんと長い時間話していました。

帰るとき、

「妹さんには、まだ話さなくていいんですね」

と言いました。

おかあさんは、

「はい」

と言いました。

なんの話かは教えてくれませんでした。

8月29日 はれ
夏休みがおわります。
あさがおは、もうありません。

先生に観察日記を見せます。

たねは3つだったのに、めが4つ出たこと。

夜にとなりのへやから音がしたこと。

おにいちゃんの声が聞こえたこと。

朝顔のはっぱに白い粉がついていたこと。

全部書きました。

先生に見せたら、

「この日記、誰と一緒に書いたの?」

と聞かれました。

わたしは、

「おにいちゃん」

と答えました。

先生は、しばらく黙っていました。

そして、最後のページをめくりました。

そこには、わたしが書いた覚えのない文字がありました。

『来年は、四人で咲かせようね』

作者メッセージ

解説
「お兄ちゃん」は実は去年亡くなっていて、主人公が毎日話していた存在が何者なのかは最後まで明かされません。
「3つの種から4つの芽」「四人で咲かせようね」という言葉から、家の中に"もう一人"何かが増えていたことが示唆されています。
つまりこの日記は、亡くなった兄の幽霊だけでなく、主人公も知らない「四人目」の存在を記録していたのかもしれません。

どうでしたか?

2026/08/29 21:40

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