明日の天気はハレのちアメ!
「明日の天気は、晴れのち雨だって」
昼休み、窓際の席でスマホを見ていた美咲が言った。
「じゃあ傘いるじゃん」
「朝は晴れるから忘れるんだよ、こういう日は」
隣の席の悠斗が言うと、美咲は呆れた顔をした。
「悠斗は毎日忘れてるでしょ」
「それは天気のせいじゃない」
「じゃあ何のせい?」
「俺の性格」
「開き直るな」
二人で笑った。
高校二年の五月。
特別なことなんて何もない、いつもの昼休みだった。
五時間目のチャイムが鳴って、みんなが教室へ戻っていく。
美咲は自分の机の横に置いていた折り畳み傘を確認した。
「ほら、私って偉い」
「それ、昨日から入ってただけじゃない?」
「……そういう細かいところ嫌い」
「俺も」
窓の外を見ると、青空が広がっていた。
雨が降るなんて、とても思えない。
放課後。
美咲は昇降口で靴を履き替えながら、空を見上げた。
「やっぱり晴れてる」
「だから言っただろ」
悠斗も隣で空を見上げる。
「傘、持ってきた?」
「もちろん」
「珍しい」
「美咲に馬鹿にされたから」
「私のおかげじゃん」
「そういうことにしとく」
二人は並んで校門を出た。
駅までの道には、コンビニ、古い本屋、小さな公園がある。
毎日通る道だ。
だから二人とも、特に話すことがない。
「今日の数学、分かった?」
「全然」
「昨日の宿題は?」
「やってない」
「じゃあ何しに学校来てるの?」
「美咲に会いに」
「……そういう冗談、急に言うのやめて」
「冗談じゃないけど」
「もっとやめて」
美咲は少しだけ歩く速度を速めた。
悠斗は笑いながら追いかける。
駅前の信号が赤になった。
二人は立ち止まった。
「そういえばさ」
美咲が言った。
「明日、土曜日じゃん」
「うん」
「暇?」
「暇」
「じゃあ駅前の新しいクレープ屋行かない?」
「いいよ」
「やった」
信号が青になる。
二人はまた歩き出した。
そのとき、ぽつ、と頬に冷たいものが当たった。
「……雨?」
美咲が空を見る。
さっきまで青かった空の端から、薄い雲が広がっていた。
「天気予報、当たった」
悠斗が言う。
「まだ晴れのち雨の“ち”くらいだけどね」
「何それ」
「晴れと雨の間」
「そんな天気ある?」
「今できた」
雨粒が少しずつ増えていく。
美咲は鞄から折り畳み傘を出した。
「入る?」
「いいの?」
「濡れるよりいいでしょ」
二人で一本の傘に入る。
肩が少し触れる。
美咲は何も言わない。
悠斗も何も言わない。
駅までは、あと五分。
雨の音が傘を叩いている。
「ねえ」
「ん?」
「明日、雨だったらどうする?」
「クレープ?」
「もちろん行く」
「じゃあ、雨でもいいじゃん」
「……そうだね」
美咲が笑った。
特別な一日じゃない。
何か大きな出来事があったわけでもない。
ただ、いつもの帰り道を歩いて、明日の約束をしただけ。
それでも、こういう日がずっと続けばいいと、ふと思う。
晴れの日も。
雨の日も。
その間の、名前のない天気の日も。
「明日の天気、何だろうね」
美咲が言う。
「晴れのち雨」
「また?」
「でも、たぶん大丈夫」
「何が?」
「明日も傘、持ってくるから」
美咲は少し笑って、
「じゃあ私も忘れないようにする」
そう言った。
二人の傘の上で、雨は静かに降り続いていた。
昼休み、窓際の席でスマホを見ていた美咲が言った。
「じゃあ傘いるじゃん」
「朝は晴れるから忘れるんだよ、こういう日は」
隣の席の悠斗が言うと、美咲は呆れた顔をした。
「悠斗は毎日忘れてるでしょ」
「それは天気のせいじゃない」
「じゃあ何のせい?」
「俺の性格」
「開き直るな」
二人で笑った。
高校二年の五月。
特別なことなんて何もない、いつもの昼休みだった。
五時間目のチャイムが鳴って、みんなが教室へ戻っていく。
美咲は自分の机の横に置いていた折り畳み傘を確認した。
「ほら、私って偉い」
「それ、昨日から入ってただけじゃない?」
「……そういう細かいところ嫌い」
「俺も」
窓の外を見ると、青空が広がっていた。
雨が降るなんて、とても思えない。
放課後。
美咲は昇降口で靴を履き替えながら、空を見上げた。
「やっぱり晴れてる」
「だから言っただろ」
悠斗も隣で空を見上げる。
「傘、持ってきた?」
「もちろん」
「珍しい」
「美咲に馬鹿にされたから」
「私のおかげじゃん」
「そういうことにしとく」
二人は並んで校門を出た。
駅までの道には、コンビニ、古い本屋、小さな公園がある。
毎日通る道だ。
だから二人とも、特に話すことがない。
「今日の数学、分かった?」
「全然」
「昨日の宿題は?」
「やってない」
「じゃあ何しに学校来てるの?」
「美咲に会いに」
「……そういう冗談、急に言うのやめて」
「冗談じゃないけど」
「もっとやめて」
美咲は少しだけ歩く速度を速めた。
悠斗は笑いながら追いかける。
駅前の信号が赤になった。
二人は立ち止まった。
「そういえばさ」
美咲が言った。
「明日、土曜日じゃん」
「うん」
「暇?」
「暇」
「じゃあ駅前の新しいクレープ屋行かない?」
「いいよ」
「やった」
信号が青になる。
二人はまた歩き出した。
そのとき、ぽつ、と頬に冷たいものが当たった。
「……雨?」
美咲が空を見る。
さっきまで青かった空の端から、薄い雲が広がっていた。
「天気予報、当たった」
悠斗が言う。
「まだ晴れのち雨の“ち”くらいだけどね」
「何それ」
「晴れと雨の間」
「そんな天気ある?」
「今できた」
雨粒が少しずつ増えていく。
美咲は鞄から折り畳み傘を出した。
「入る?」
「いいの?」
「濡れるよりいいでしょ」
二人で一本の傘に入る。
肩が少し触れる。
美咲は何も言わない。
悠斗も何も言わない。
駅までは、あと五分。
雨の音が傘を叩いている。
「ねえ」
「ん?」
「明日、雨だったらどうする?」
「クレープ?」
「もちろん行く」
「じゃあ、雨でもいいじゃん」
「……そうだね」
美咲が笑った。
特別な一日じゃない。
何か大きな出来事があったわけでもない。
ただ、いつもの帰り道を歩いて、明日の約束をしただけ。
それでも、こういう日がずっと続けばいいと、ふと思う。
晴れの日も。
雨の日も。
その間の、名前のない天気の日も。
「明日の天気、何だろうね」
美咲が言う。
「晴れのち雨」
「また?」
「でも、たぶん大丈夫」
「何が?」
「明日も傘、持ってくるから」
美咲は少し笑って、
「じゃあ私も忘れないようにする」
そう言った。
二人の傘の上で、雨は静かに降り続いていた。
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