夜の街は、
ざわめきを残したまま、
深夜へと沈み始めていた。
人影は少なくなり、
信号の音も遠くなる。
でも、
どこか忙しなく、
街全体が眠る気配はなかった。
そのとき、一本裏道に入った瞬間。
星の欠片のような小さなランプが、
淡く揺れているのが見えた。
「…あれ?」
思わず足を止める。
知らないはずの道。
知らないはずの喫茶店。
でも、
なぜか、
立ち止まった足が動かない。
カラン。
鈴の音が鳴ると、
外のざわめきはすっと遠くなる。
店内は静かで、
柔らかな光が満ちていた。
壁には星図のような模様。
時計はあるが針の進みは曖昧で、
時間の感覚が少し遠のく。
カウンターの向こうに立つ人物は、
年齢も感情も読み取れない。
「こんにちは。いらっしゃいませ」
「俺は、彪華 焔。牡羊座だ」
声を出す。
自然に、
素直に出た。
少し照れくさい。
でも、
この場所なら、
胸を張って言える気がした。
マスターは頷くだけで、余計なことは聞かない。
差し出された紅茶は、
透明に近い色をしていた。
香りは控えめ。
口に含むと、
ほんのわずかに苦みがあった。
「…頼まれると、断れないんだ」
指先でカップを回しながら、
小さくつぶやく。
「誰かが困ってると、つい…俺がやるって言っちゃう」
胸の奥が少し痛む。
頼まれることの喜びと、
逃れられない重さ。
どちらも、
同じくらい俺を縛る。
「そのせいで、汚れ役も…全部俺に回ってくる」
マスターは、
ただ静かに紅茶を温め直す。
何も言わない。
でも、視線だけで少し、
肩の力が抜ける。
「前に…罪をなすりつけられたこともある」
小さく息をつく。
「でも、断れないからって、誰かを傷つけないって思って…そうやってやってきた」
マスターは微かに頷く。
[明朝体][太字][水平線][斜体][大文字]「牡羊座は、誰かのために突き進む星です」
[/大文字][/斜体][/太字][/明朝体]
「…強いってわけじゃないんだ」
紅茶を見つめながら、そっとつぶやく。
[明朝体][太字][大文字]「ただ、逃げるより、引き受けることを選んだだけ」
[/大文字][/太字][/明朝体]
一口飲み干すと、
胸の奥にあった重みが、少し軽くなる。
星図の壁の一点が、
わずかに線を持ち始めた。
─焔の勇気の軌跡として。
カラン。
扉が閉まると、
夜の街のざわめきが戻ってくる。
でも、
焔の中には、
少しだけ温かい光が残った。
夜がさらに深くなると、
喫茶店にはまた新しい気配が近づく。
焔は角に腰を下ろすと、
ゆっくりと息を吐いた。
「…ああ、でもさ」
心の中で、笑う。
「俺、頼まれると断れないから、また次も…やっちゃうんだろうな」
その瞬間、
星図の壁の焔の線が、
少しだけ輝いた。
それは、
決して派手ではない。
でも、
静かに、
確かに、
星座に刻まれる軌跡だった。
「…まあ、いいか」
焔は肩の力を抜き、
カップを手に取る。
苦みのある紅茶が、
胸の中にすっと染み込む。
「誰かのために頑張ることは、間違いじゃない…よな」
マスターは微かに微笑む。
「扉は、あなたを覚えています」
カラン。
扉が閉まると、
夜はまだ深い。
次の星もまた、
静かに息を整えているところだった。
ざわめきを残したまま、
深夜へと沈み始めていた。
人影は少なくなり、
信号の音も遠くなる。
でも、
どこか忙しなく、
街全体が眠る気配はなかった。
そのとき、一本裏道に入った瞬間。
星の欠片のような小さなランプが、
淡く揺れているのが見えた。
「…あれ?」
思わず足を止める。
知らないはずの道。
知らないはずの喫茶店。
でも、
なぜか、
立ち止まった足が動かない。
カラン。
鈴の音が鳴ると、
外のざわめきはすっと遠くなる。
店内は静かで、
柔らかな光が満ちていた。
壁には星図のような模様。
時計はあるが針の進みは曖昧で、
時間の感覚が少し遠のく。
カウンターの向こうに立つ人物は、
年齢も感情も読み取れない。
「こんにちは。いらっしゃいませ」
「俺は、彪華 焔。牡羊座だ」
声を出す。
自然に、
素直に出た。
少し照れくさい。
でも、
この場所なら、
胸を張って言える気がした。
マスターは頷くだけで、余計なことは聞かない。
差し出された紅茶は、
透明に近い色をしていた。
香りは控えめ。
口に含むと、
ほんのわずかに苦みがあった。
「…頼まれると、断れないんだ」
指先でカップを回しながら、
小さくつぶやく。
「誰かが困ってると、つい…俺がやるって言っちゃう」
胸の奥が少し痛む。
頼まれることの喜びと、
逃れられない重さ。
どちらも、
同じくらい俺を縛る。
「そのせいで、汚れ役も…全部俺に回ってくる」
マスターは、
ただ静かに紅茶を温め直す。
何も言わない。
でも、視線だけで少し、
肩の力が抜ける。
「前に…罪をなすりつけられたこともある」
小さく息をつく。
「でも、断れないからって、誰かを傷つけないって思って…そうやってやってきた」
マスターは微かに頷く。
[明朝体][太字][水平線][斜体][大文字]「牡羊座は、誰かのために突き進む星です」
[/大文字][/斜体][/太字][/明朝体]
「…強いってわけじゃないんだ」
紅茶を見つめながら、そっとつぶやく。
[明朝体][太字][大文字]「ただ、逃げるより、引き受けることを選んだだけ」
[/大文字][/太字][/明朝体]
一口飲み干すと、
胸の奥にあった重みが、少し軽くなる。
星図の壁の一点が、
わずかに線を持ち始めた。
─焔の勇気の軌跡として。
カラン。
扉が閉まると、
夜の街のざわめきが戻ってくる。
でも、
焔の中には、
少しだけ温かい光が残った。
夜がさらに深くなると、
喫茶店にはまた新しい気配が近づく。
焔は角に腰を下ろすと、
ゆっくりと息を吐いた。
「…ああ、でもさ」
心の中で、笑う。
「俺、頼まれると断れないから、また次も…やっちゃうんだろうな」
その瞬間、
星図の壁の焔の線が、
少しだけ輝いた。
それは、
決して派手ではない。
でも、
静かに、
確かに、
星座に刻まれる軌跡だった。
「…まあ、いいか」
焔は肩の力を抜き、
カップを手に取る。
苦みのある紅茶が、
胸の中にすっと染み込む。
「誰かのために頑張ることは、間違いじゃない…よな」
マスターは微かに微笑む。
「扉は、あなたを覚えています」
カラン。
扉が閉まると、
夜はまだ深い。
次の星もまた、
静かに息を整えているところだった。
- 1.ティータイムの始まり。
- 2.乙女座 やさしく、つよくなれなくて。
- 3.蟹座 甘さの奥で、息を止めてきた
- 4.牡牛座 余裕の仮面と、足りない甘さ
- 5.山羊座 ゆっくりでいいと、知らなかった
- 6.双子座 言葉が二つに割れたまま
- 7.天秤座 言葉を量る、沈黙の重さは。
- 8.獅子座 微笑みの奥で、拳を握るひと
- 9.射手座 遠くを願い、声を置いてきた
- 10.水瓶座 笑っているあいだは、自由でいられた
- 11.牡羊座 引き受ける勇気と、静かな覚悟
- 12.魚座 仮の笑顔と振り返ってしまったこと
- 13.蟹座 信じられなかった手の、ぬくもりを思い出すまで
- 14.宇宙という名の空を結びに。
- 15.蛇遣い座 13番目になれなくて。
- 16.第二期 惑星たちの夜
- 17.金星 一行の本音は、金星に預けて
- 18.土星 抱え込めてしまった者は、零れ方を知らない
- 19.天王星 光を残す星