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【完結】【参加〆切】星を紡ぐティータイム

#25

月は、夜の店を見ていた

わたしは、
月だった。
そう言うと大抵の人は笑うけれど、
事実は変わらない。

夜を照らす役目は、
ずっと昔からそう決まっている。

でもそれは“照らす”というより、
「見ている」ほうが近い。

全部を助けることはできない。
全部に手を伸ばすこともできない。

ただ、
落ちていく軌道を、
見送ることだけができる。

それがわたしの位置だった。

だから、
あの喫茶店も最初から見えていた。

正確には「存在していた」というより、
夜の隙間にだけ浮かぶ“観測点”のようなものだった。

誰かが迷ったときだけ、
輪郭が濃くなる場所。

名前はなかった。

でも、
わたしには分かっていた。

あれは喫茶店ではない。

“軌道を一度だけ触れ直すための装置”だ。

最初の惑星が入った夜を、
わたしは覚えている。
金星。

あの子は、
あまりにも眩しくて、
でもその眩しさを自分で持て余していた。

扉の向こうで、
何かが静かにほどけた。

その瞬間、
わたしは少しだけ目を細めた。

ああ、
始まったんだ、
と思った。

土星の夜は、
静かだった。
あの子は、
すでに自分の枠の中で完成していた。
だからこそ、
壊れないように抱え続けていた。

環が皿の上に現れたとき、
わたしは思わず息を止めた。

あれは「守る形」ではなく、
「閉じ込める形」にも見えたから。

火星は、
まっすぐすぎた。
立ち止まることを知らない軌道。
燃え続けることでしか、
自分を保てない子。

あの夜だけ、
少しだけ速度が落ちた。

それだけで十分だった。

木星は、
重かった。
重力というより、
“責任そのもの”みたいだった。

あの子は何も壊さない代わりに、
自分もどこにも逃がしていなかった。

皿の上の軌道を見たとき、
ほんの一瞬だけ、
揺れたのをわたしは見ている。

天王星は、
冷たかった。
でもそれは拒絶じゃない。

ただ、
距離を保つことでしか優しくなれない形だった。

あの子が「残す」と言ったとき、
初めて自分の温度を少しだけ信じていた。

海王星は、
溶けていた。
現実と夢の境目が曖昧で、
どこまでが本心かも分からない子。

でもあの店では、
それすら否定されなかった。

ただ「そこにある」とだけ扱われていた。

そして――水星。
あの子は、
もっとも危うかった。

速すぎる思考。
届く前に消える言葉。

でも喫茶店は、
それを“待たなかった”。

止めもしなかった。

ただ、
置ける場所だけを用意した。

それが一番正しい接し方だった。

わたしはずっと見ていた。
扉の内側ではなく、
外側から。

介入はできない。

それは規則でもあり、
役割でもある。

「観測者は、軌道を変えてはいけない」

でも、
ひとつだけ例外がある。

それは――

その場所が“消える瞬間”だ。

ある夜。
喫茶店は、
静かに境界を失った。

壊れたわけではない。

燃えたわけでもない。

ただ、「店」という形をやめた。

星図の線がほどけていくのを見ながら、
わたしは初めて目を閉じた。

役目が終わったのではない。

“観測対象が、観測される必要をやめた”だけだ。

そして今。
そこにはもう店はない。

扉もない。

カウンターもない。

でも完全に消えたわけでもない。

夜のどこかに、
まだ残っている。

迷った誰かの思考の端にだけ、
一瞬だけ現れる。

わたしはそれを知っている。

なぜなら――

それはもう「場所」ではないからだ。

わたしは月だ。
だから今も見ている。

喫茶店ではなく。

そこに一度だけ生まれた“選択の気配”を。

惑星たちは、
もうここにはいない。

でも軌道は消えない。

選ばれたことも、
選ばれなかったことも。

全部、
夜の中に残る。

わたしはそれを、
ただ照らし続ける。

救わないまま。

終わらせないまま。

静かに。

ずっと。

作者メッセージ

はいどーも。
KanonLOVEです!

私の初の参加型作品も終了となりました。
えっとですね、ちょっと長話に付き合ってくれる方のみ以下を閲覧することを推奨します。

今作を書き始めた時、まだ「教科✕感情」しか書いていない時、
「あークソ伸びねー、あ、なんか参加型作品クソ伸びてるな、よし書くか、でも思いつかないから適当でいっかから」
始まったのを嫌でも覚えています。

そして終わりました。
省いてすみません。

まあというわけで星を紡ぐティータイムは完結となりました。
という感じですが。

最近増えすぎた参加型をできるだけ早く消耗し、次の参加型の執筆へと移るための作業の一貫です。
多分このあと募集またするでしょう。

はい。(じゃあなんでこんな長いの書いた)

というわけでお楽しみに!
では!

追伸:今回(25話)に出てきた人が誰か分かった人は天才です(合作でしか出てきてないので)

2026/07/13 06:39

KanonLOVE
ID:≫ n00YEDEqgv6kY
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