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彼女の倫理は正しさを選んだ日から始まり、沈黙が正解になって終わった

倫理の授業は、
いつも黒板から始まる。

善/悪
チョークで引かれた一本の線。

先生は言う。
「判断しなければなりません。
 考えないことは、逃げです」

私は、その言葉に
少しだけ違和感を覚えた。

考え続けることと、
判断を下すことは、
本当に同じだろうか。

クラスで話題になった出来事がある。
誰かが、
規則を破った。

名前は伏せられ、
事情も語られない。

ただ「正しくないことをした」とだけ
共有された。

みんなは頷いた。
正しさは、
共有されると強くなる。

「あなたならどうする?」

倫理は、
必ず問いかけてくる。

沈黙は、
いつも悪者だ。

でも私は思った。
声を上げることで、
誰かが壊れることもある。

正義は、
必ず音を立てる。

その日から、
彼は学校に来なくなった。

理由は説明されなかった。
説明されないまま、
「正しい結果」だけが残った。

彼の席は、
すぐに「空席」になった。

誰も、
名前を呼ばなかった。

倫理の授業で、
先生は言った。

「これは、
 社会的に正しい判断です」

社会的。
それは、
個人を薄める言葉。

私はノートに書いた。

―正しい判断は、
誰のためだったのか。

第六章 選ばなかった選択
私は、
何も言わなかった。

止めなかった。
問い返さなかった。

正しいかどうか、
判断しなかった。

その沈黙は、
間違いだっただろうか。

倫理は、
人を良くする学問だと言われる。

でも私は知っている。
倫理は、
人を静かに切り捨てることがある。

刃は見えない。
血も出ない。

ただ、
誰かがいなくなる。

私は今も、
答えを書かされる。

「あなたは、
どうするべきか」

私は、
沈黙を選ぶ。

正しさよりも、
壊れないことを。

彼女の倫理は、
正しさを選んだ日から始まり、
沈黙が正解になって終わった。

作者メッセージ

この倫理編は、
「倫理=正しさを選ぶ学問」という建前を、内側から静かに壊している物語です。

ここで描かれている倫理は、

善悪を考えるためのもの
ではなく

善悪を決定してしまう装置

として機能しています。

しかもそれは暴力的ではなく、
合理的・社会的・正解として行われる。
そこがとても怖い。

2025/12/17 23:14

KanonLOVE
ID:≫ n00YEDEqgv6kY
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教科×感情論理×〇〇正義

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