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350閲覧!?第二期始動! 募集内容は星の人にお店のメニュー!? 残り2人と4メニュー募集中!【参加型】星を紡ぐティータイム

#2

乙女座 やさしく、つよくなれなくて。

夜の街が、完全に言葉を失う直前。
一本裏道に入った先で、
琴乃は足を止めた。

「…なに、ここ」

看板のない喫茶店。
星の欠片のようなランプが、
淡く瞬いている。

本来なら、
入る理由などなかった。
―悩みなんて、ない。

少なくとも、
そう思っていた。

カラン。

鈴の音は、
思ったよりも優しかった。

店内は、
外の闇を忘れさせるほど静かで、
あたたかい。
壁に描かれた星図を一目見て、
琴乃はわずかに眉をひそめた。

「…星が好きな人の趣味?」

カウンターの向こうで、
マスターが湯を沸かしている。
振り向いたその顔からは、
年齢も感情も読み取れない。

「こんにちは。いらっしゃいませ」

「……こんばんは」
一拍遅れて、琴乃は背筋を伸ばす。
「私、岩田琴乃。乙女座よ」

マスターは頷いただけで、
余計なことは聞かない。

差し出された紅茶は、
透明に近い色をしていた。
口に含んだ瞬間、
琴乃は目を伏せる。

―完璧に整えたはずの味。
なのに、少しだけ苦い。

「…失礼ね。この紅茶」

「ええ」
マスターは穏やかに答える。

[太字]「とても、丁寧な味です」
[/太字]
その言葉に、胸の奥がちくりとした。

「…丁寧にしてきたわよ。全部」
カップを見つめたまま、
琴乃は続ける。
「失敗しないように。
迷惑をかけないように。
ちゃんとしてる[太字]私[/太字]でいるために」

紅茶の表面に、ランプの光が揺れる。

「でもね」
声が、
少しだけ低くなる。

[太字][太字][明朝体]「誰かが泣いてても、
私は正しいことしか言えなかった。
優しくするより、
正解を選んだ」
[/明朝体][/太字][/太字]

マスターは何も言わない。
ただ、
湯気が静かに立ち上る。

「…それで嫌われた、なんて言わないわ」
琴乃は小さく鼻で笑う。
「嫌われる前に、距離を置かれただけ」

ふと、
壁の星図が目に入る。
まだ線で結ばれていない、
点のままの星たち。

「ねえ、マスター」
琴乃は顔を上げる。
「この店、
私みたいなのが来る場所じゃないんでしょ?」

「どうしてそう思われますか」

「だって、ここ―
[太字]弱い人[/太字]のための場所に見えるもの」

一瞬だけ、マスターの手が止まる。

「今夜の星は、こう言っています」
え?
[太字][明朝体]「強さの形は、一つではない―と」
[/明朝体][/太字]
琴乃は答えない。
けれど、
紅茶を飲み干した。

「…もし次に来る人がいるなら」

立ち上がりながら、
ぽつりと言う。

「きっと、私より不器用ね。
感情を隠せなくて、ぶつけちゃうタイプ」

扉に手をかけて、振り返る。

「そういう人の方が、
案外、
幸せになれるのかもしれないわ」

カラン。

扉が閉まると同時に、
壁の星図の一点が、
かすかに線で結ばれた。

マスターは静かにカップを片付ける。
扉が閉まり、
鈴の音が完全に夜に溶けるまで、
マスターはしばらくその場を動かなかった。

カウンターの上には、
空になったカップ。
だが、
まだ温度だけが残っている。

「…きれいにできなかった、か」

独り言のように呟き、
マスターは星図の壁へと視線を移す。
先ほどまで点だった星の一つが、
細い線を持ち始めていた。

それは、
整然とした線ではない。
むしろ、
少しだけ深く沈むような、
下向きの軌道。

湯を捨て、
ポットを洗い直す。

その動きは、
いつもより丁寧だった。

[太字][明朝体]「正しさを選んだ人は、
感情を選ぶ人を、
少し羨ましく思うものです」[/明朝体][/太字]

誰に向けた言葉でもない。

そのとき―
ランプの光が、わずかに揺れた。

風はない。
扉も閉まっている。

それでも、
店の奥。

客席ではなく、さらに奥の、
[太字]本来誰も座らない席[/太字]の空気が、重くなる。

マスターは、そちらを見ない。

代わりに、
新しい茶葉を取り出す。
黒に近い、
深い色。
触れただけで、指先に残るほど強い香り。

「…まだ、早いですね」

ポットに湯を注ぐと、
湯気が立ち上る前に、一瞬だけ、
赤黒い影のようなものが揺れた気がした。

それは、
熱を内側に閉じ込める香りだった。

甘くも、
苦くもない。

ただ、
覚悟を要求する匂い。

星図の壁に、
もう一つ、
ごく小さな点が灯る。

線ではない。
まだ、
誰とも結ばれていない。

しかし、
その点は、
琴乃が残した線のすぐ下に位置していた。

―まるで、
表に出なかった感情を、
底で受け止めるように。

「…強い人、ですか」

マスターは静かに微笑む。

「いいえ。
[太字]強く見せる必要がなかった人[/太字]でしょう」

そのとき、
店の外、
夜の街のさらに向こうで、
何かが、
確かに立ち止まった。

地図には載らない裏道。
人の記憶から抜け落ちたはずの角。

そこに、
引き返すことも、
進むこともできずにいる気配。

まだ、
扉は開かない。

だが、
ランプは消えなかった。

マスターはカウンターを拭き終え、
新しいカップを一つ、
あえて伏せたまま置く。

「……あなたは、自分の話をするまでが、長いでしょうから」

時計の針が、
ほんの少しだけ進む。

夜はまだ、
深い。

作者メッセージ

参加してくださったリリーナさん。
ありがとうございます!

十二人という限られた数でしたが参加、ありがとうございます!

予約を入れた人はこれからでも間に合います!

大好きな音楽―
―パッヘルベルのカノンを聞きながら作業してるkanonloveでした!

2025/12/30 23:24

KanonLOVE
ID:≫ n00YEDEqgv6kY
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