会場はざわめきで満ちていた。
幕が上がり、
三人の姿が視界に入った瞬間、
歓声は叫び声へと変わる。
「ゆめ――!」
「センターだ!」
「終ちゃん、今日もカッコいい!」
ペンライトが波のように揺れ、
銀と金の光が会場を染める。
だが、
その声の端に、
ささやきも混じる。
「え……終、引退するって本当?」
「次の偶像はゆめ……?」
「まだ未経験なのに?」
舞台袖の関係者も、
少しざわついた表情を見せている。
終はステージ中央で淡々と立ち、
透き通る白髪と銀灰色の衣装が光を吸い込むように輝く。
一歩も動かず、
視線だけで会場を支配するその姿は、
まさに「終わり」を象徴する偶像。
引退の噂が観客席に小さな動揺を生んだのは、
この静けさの裏にある力を知っているからだ。
その横で、
ゆめはまだ手を握るだけで精一杯だった。
視線は前に出せず、
少し震えている。
でも、
胸の奥で、
ステージに立つ覚悟が少しずつ固まっていく。
Aメロを、ゆめの明るい声が包む。
[斜体][太字]震える手を 隠してた
拍手の影で 笑ってた
眩しい背中 追いながら
「私はここでいい」と 呟いた
夢を見るのは 怖かった
壊してしまいそうで
でも本当は ずっと
その光に 触れたかった
[/太字][/斜体]
ゆめはステージ中央に一歩踏み出し、
手を胸に当て、
右手でペンライトを握る。
振り付けは小さくも確かな動作で、
両手を胸から前方に押し出す。
彼女の声は震えながらも、
会場全体に静かに届く。
観客席は一瞬、
静寂に包まれる。
ペンライトの波が止まり、
全員の目線がゆめに注がれる。
その瞬間、
隣の如月がゆめと目を合わせ、
冷静ながらも指先で空間を切るように動き、
光の線を描く。
[太字]Bメロ:如月
[/太字]
[斜体][太字]問いかけ続けた 答えのない空へ
偶像とは何か 何度も測った
選ばれることが 正解じゃないと
今ならわかる
光は理屈じゃない
願いが形になる瞬間だ[/太字][/斜体]
如月の動きは流れるようで正確、
観客はその軌跡に吸い込まれる。
「ゆめがここに立つ意味」が静かに伝わり、
噂とざわつきは徐々に沈黙に変わる。
その後ろで、
みんとはステージ右側で華やかにジャンプしながらサビへと入る。
みんとの動きは大胆で、
腕を大きく広げ、
ステージ全体に存在感を見せる。
AメロからBメロを経て、
観客の視線は三人を追う。
ゆめの震える手、
如月の美しい線、
みんとの光と熱。
三者三様の光が混ざり合い、
観客は一体感に飲まれる。
[太字]サビ①:みんと
[/太字]
[斜体][太字]守られてたんじゃない
繋がれてきたんだ
涙も迷いも
全部 抱きしめて
誰かの代わりじゃない
私たちは 私たち
隣にいた声が
ここまで運んだ[/太字][/斜体]
振り付けは揃っているが、
三人の個性を際立たせる。
みんとはジャンプの高さを変えず、
力強く腕を振る。
如月は指先の「止め」で空間を支配し、
ゆめは手を広げて声を届ける。
光が三方向から会場に降り注ぎ、
観客のペンライトがさらに揺れ、
まるで舞台全体が一つの生命を持つかのように輝く。
舞台袖では、
管理人が静かに見守る。
目には光を宿したまま、
小さく息を吐く。
「……届いたな」
ゆめはまだ震えている。
でも、
舞台に立つ覚悟が確かに胸の中で固まった瞬間だった。
観客のざわつきも、
終の引退の噂も、
ゆめの声の前にはただの背景にすぎない。
ペンライトの海が、
彼女の決意を祝福していた。
[太字]間奏(アカペラ:ゆめ)
[/太字]
[太字][斜体]「……ありがとう」
[/斜体][/太字]
その小さな声に、
会場全体が止まる。
ざわめきは完全に消え、
ペンライトが静止する。
観客一人ひとりの視線がゆめを追い、
初めて、
ゆめの歌だけが会場を支配する。
アカペラで静まり返った会場に、
ゆめの声が柔らかく残る。
小さく震えるその声は、
しかし確かな意思を帯びていた。
観客は息を飲み、
ペンライトを止めて耳を澄ます。
[太字]Cメロ:三人
[斜体]折れそうな夜もあった
比べられる日々もあった
それでも手を離さなかった
声が重なるたび
一人じゃないと知った
[/斜体][/太字]
ゆめは一歩前に踏み出し、
両手を胸の前で組み、
徐々に両腕を左右に広げる。
その動きに合わせて、
みんとが右側から大きくジャンプし、
片手を天へ。
如月は左側で指先を揃え、
空中に光の線を描く。
三人の動きは個性を失わずに調和し、
舞台全体が生きた光の渦になる。
観客は静寂から一気に息を吹き返す。
ざわめきではなく、
心からの共鳴が起きた。
小さな「うわぁ…」という感嘆が、
次第に大きな呼吸の波となり、
ペンライトが再び揺れ始める。
ゆめの声が次第に安定してくる。
最初の震えは残るが、
力強くなり、
隣に立つみんとの腕の動き、
如月の線の揺れに合わせて声が伸びる。
それぞれが互いを見つめ、
目で呼吸を合わせる。
観客は息をのんだまま、
その瞬間を「聴いている」。
[太字]ラスサビ:ゆめセンター
[/太字]
[斜体][太字]光は遠くにない
最初から ここにあった
隣で笑ってた
君の中にあった
支えるだけじゃない
疑うだけじゃない
守るだけじゃない
今度は 私が
光になる番だ[/太字][/斜体]
ゆめがセンターで両手を広げ、
胸を張る。
みんとは右で力強くジャンプしながらステップを踏み、
左手でゆめを軽くサポートするようなポーズ。
如月は左で冷静に、
しかし指先の動きが観客の目を釘付けにする。
「止め」の振り付けで空気を切り取り、
静と動のコントラストで舞台全体の迫力を増す。
[太字]大サビ:三人ユニゾン
[/太字]
[斜体][太字]響け 響け
この声は消えない
過去も未来も
越えていく
偶像は 生まれない
想いで 繋がれる
光は、隣で
育っていた[/太字][/斜体]
三人の声が完全に重なり、
会場に轟音のように響く。
ステージ全体が光に包まれ、
ペンライトの光も三色に揺れながら一つの波を作る。
観客は声に合わせて揺れ、
涙を拭う人も多い。
ステージ中央でゆめは深呼吸しながら、
手を握ったまま微笑む。
みんとと如月が、
少し肩を寄せ合い、
互いの目を見る。
三人の視線が交わった瞬間、
観客はその関係性の深さを感じ、
声援がさらに高まる。
舞台袖では、管理人が静かに見守る。
瞳にわずかな光を宿し、
肩の力を抜く。
「……届いたな」
ゆめの声が、
確実に観客の心に届いた瞬間だった。
恐れや不安は消え去り、
今はただ「立った」という実感だけが残る。
隣にいるみんとと如月の温もりが、
彼女を包み込む。
観客の歓声と涙が舞台を揺らす中、
ゆめは初めて、
自分がこの舞台の「光の一部」であることを実感する。
スポットライトの中心に立つゆめの手が、
まだ微かに震えている。
だが、
肩越しにみんとと如月の視線を感じ、
胸の奥で少しずつ強さが芽生える。
[太字][大文字][明朝体]「大丈夫、私は一人じゃない――」
[/明朝体][/大文字][/太字]
心の中でそう呟き、
握った拳をそっと開く。
舞台の床に、
三人の影が並ぶ。
みんとは微笑みながら、
小さく囁く。
「ゆめ、センター似合ってた」
如月は少し目元を押さえながらも、
柔らかく言う。
「遅いよ。待ってた」
ゆめの胸に込み上げる感情が溢れ、
涙が頬を伝う。
しかしその涙は、
不安や迷いのものではない。
覚悟の涙。
決意の涙。
彼女は、
目の前の光の海を見つめ、
観客の声を全身で受け止める。
暗転の瞬間、
会場のざわめきが一瞬止まる。
三人のペンライトが一斉に揺れ、
まるで無数の星が瞬く宇宙のよう。
ゆめは深く息を吸い、
マイクに口を近づける。
[太字][明朝体]「……私は、[漢字]偶像[/漢字][ふりがな]アイドル[/ふりがな]になります」
[/明朝体][/太字]
会場は一瞬、
静寂に包まれる。
その静寂の中で、
観客は息をのむ。
ステージ上の三人、
特にゆめの存在が、
一瞬にして観客の心を掴む。
みんとがゆめの肩に軽く手を置き、
如月も隣で静かに頷く。
三人の視線が交わるたび、
光は確かに繋がっていく。
客席後方、
暗がりでスーツ姿の管理人が立つ。
舞台袖から移動し、
観客視点から演奏を見ていた。
誰にも気づかれない位置で、
胸の奥に暖かい何かが広がるのを感じる。
小さく息を吐き、
目を潤ませる。
「……届いたな」
その瞬間、
過去の自分のすべての決断が、
間違っていなかったと確信する。
二度とステージに立たない自分の声は、
今、
三人の声として生き続ける。
光は、
一人で輝くのではない。
隣に育つ存在と共に、
広がっていくものだと知る。
三人は手をつなぎ、
ステージ中央で肩を寄せ合う。
みんとはにっこり笑い、
如月はわずかに目を細める。
ゆめは、
震えていた手を胸に戻し、
深呼吸する。
心の中で、
静かに誓う。
[太字][中央寄せ][大文字]「もう、逃げない。これが私の光――」
[/大文字][/中央寄せ][/太字]
観客の歓声が再び巻き起こる。
割れんばかりの拍手、
泣き声、
歓声、
ペンライトの光。
三人はその光の中で、
初めて「同じ高さの光」として立っている。
幕が降りる前、
ゆめの視線は一度、
観客席後方の管理人に向く。
彼は小さく微笑み、
黙って頷く。
ゆめは心の中で、
彼女に言う。
「ありがとう、ここまで守ってくれて」
舞台の照明が落ち、
会場が暗転しても、
三人の声の余韻は空気に溶け、
観客の胸に残り続ける。
光は、
決して一人で育つものではない。
誰かと支え合い、
互いに磨き合い、
繋がって初めて輝くものなのだと――
最後の一瞬、
三人の手がしっかりと握られた。
ゆめの胸は上下し、
目は光に満ちている。
逃げずに立った瞬間、
初めて「私も偶像だ」と実感する。
拍手は鳴り止まず、
会場全体が一つの光の波に包まれたまま、
幕が下りる。
[太字][斜体][大文字][明朝体]――光は、隣で育っていた。
――最後の音が、消えた。[/明朝体][/大文字][/斜体][/太字]
三人の声が重なった余韻だけが、
会場の天井にゆっくりと溶けていく。
誰も、
すぐには拍手できなかった。
まるで、
壊してはいけないものを目の前にしているみたいに。
ゆめの胸は、
まだ大きく上下している。
手の震えは止まらない。
視界が滲んで、
客席の光が揺れている。
怖かった。
途中、
何度も。
でも――逃げなかった。
ゆっくりと顔を上げる。
目の前には、
光の海。
ペンライトが、
まるで星空のように揺れている。
最前列で、
みんとが泣いている。
頬をぐしゃぐしゃにして、
それでも笑っている。
その隣で如月が、
静かに目元を押さえていた。
いつも冷静な彼女の指先が、
わずかに震えている。
ゆめの喉の奥が、
熱くなる。
何か言わなきゃ。
でも言葉が出ない。
沈黙の数秒。
そして――
一人が、
拍手をした。
小さな音。
それが、
波紋のように広がる。
二人。
三人。
十人。
次の瞬間。
会場が揺れた。
割れんばかりの拍手。
歓声。
泣き声。
「ゆめ――!!」
誰かが名前を叫ぶ。
それが何人にも重なっていく。
ゆめの足から力が抜けそうになる。
その瞬間。
右手を、
みんとが握った。
強く。
左手を、
如月が握る。
しっかりと。
三人で、
中央に立つ。
ゆめは、
客席をまっすぐ見た。
涙が頬を伝う。
でも、
笑っている。
「……」
息を吸う。
今度は、
震えていない。
「ありがとうございました」
それだけ。
たった一言なのに、
会場の空気がまた揺れる。
客席後方。
暗がりの中で、
スーツ姿の管理人が立っている。
誰にも気づかれない位置。
その瞳が、
わずかに潤んでいる。
小さく、
息を吐く。
「……やっと、立ったな」
拍手はまだ止まらない。
スポットライトの中で、
ゆめは初めて思う。
[斜体][太字]――逃げなくてよかった。
――隣にいて、よかった。[/太字][/斜体]
両隣の温もりが、
確かにある。
みんとが小さく囁く。
「ゆめ、センター似合ってた」
如月が続ける。
「遅いよ。待ってた」
また涙が溢れる。
でももう、
それは不安の涙じゃない。
ステージの床に、
三人の影が並んでいる。
もう、
一歩後ろじゃない。
同じ位置。
光のど真ん中。
歓声の中、
ゆめは心の中で、
静かに言う。
[太字][斜体]――私は、偶像になります。
[/斜体][/太字]
拍手は、
まだ鳴り止まない。
◇
客席後方。
暗がり。
管理人はそこから動こうとしない。
拍手の中、
小さく呟く。
「……届いたな」
誰にも聞こえない。
そして一筋、
涙。
ソノスは、
二度とステージに上がらない。
でも。
その声は、
繋がった。
幕が上がり、
三人の姿が視界に入った瞬間、
歓声は叫び声へと変わる。
「ゆめ――!」
「センターだ!」
「終ちゃん、今日もカッコいい!」
ペンライトが波のように揺れ、
銀と金の光が会場を染める。
だが、
その声の端に、
ささやきも混じる。
「え……終、引退するって本当?」
「次の偶像はゆめ……?」
「まだ未経験なのに?」
舞台袖の関係者も、
少しざわついた表情を見せている。
終はステージ中央で淡々と立ち、
透き通る白髪と銀灰色の衣装が光を吸い込むように輝く。
一歩も動かず、
視線だけで会場を支配するその姿は、
まさに「終わり」を象徴する偶像。
引退の噂が観客席に小さな動揺を生んだのは、
この静けさの裏にある力を知っているからだ。
その横で、
ゆめはまだ手を握るだけで精一杯だった。
視線は前に出せず、
少し震えている。
でも、
胸の奥で、
ステージに立つ覚悟が少しずつ固まっていく。
Aメロを、ゆめの明るい声が包む。
[斜体][太字]震える手を 隠してた
拍手の影で 笑ってた
眩しい背中 追いながら
「私はここでいい」と 呟いた
夢を見るのは 怖かった
壊してしまいそうで
でも本当は ずっと
その光に 触れたかった
[/太字][/斜体]
ゆめはステージ中央に一歩踏み出し、
手を胸に当て、
右手でペンライトを握る。
振り付けは小さくも確かな動作で、
両手を胸から前方に押し出す。
彼女の声は震えながらも、
会場全体に静かに届く。
観客席は一瞬、
静寂に包まれる。
ペンライトの波が止まり、
全員の目線がゆめに注がれる。
その瞬間、
隣の如月がゆめと目を合わせ、
冷静ながらも指先で空間を切るように動き、
光の線を描く。
[太字]Bメロ:如月
[/太字]
[斜体][太字]問いかけ続けた 答えのない空へ
偶像とは何か 何度も測った
選ばれることが 正解じゃないと
今ならわかる
光は理屈じゃない
願いが形になる瞬間だ[/太字][/斜体]
如月の動きは流れるようで正確、
観客はその軌跡に吸い込まれる。
「ゆめがここに立つ意味」が静かに伝わり、
噂とざわつきは徐々に沈黙に変わる。
その後ろで、
みんとはステージ右側で華やかにジャンプしながらサビへと入る。
みんとの動きは大胆で、
腕を大きく広げ、
ステージ全体に存在感を見せる。
AメロからBメロを経て、
観客の視線は三人を追う。
ゆめの震える手、
如月の美しい線、
みんとの光と熱。
三者三様の光が混ざり合い、
観客は一体感に飲まれる。
[太字]サビ①:みんと
[/太字]
[斜体][太字]守られてたんじゃない
繋がれてきたんだ
涙も迷いも
全部 抱きしめて
誰かの代わりじゃない
私たちは 私たち
隣にいた声が
ここまで運んだ[/太字][/斜体]
振り付けは揃っているが、
三人の個性を際立たせる。
みんとはジャンプの高さを変えず、
力強く腕を振る。
如月は指先の「止め」で空間を支配し、
ゆめは手を広げて声を届ける。
光が三方向から会場に降り注ぎ、
観客のペンライトがさらに揺れ、
まるで舞台全体が一つの生命を持つかのように輝く。
舞台袖では、
管理人が静かに見守る。
目には光を宿したまま、
小さく息を吐く。
「……届いたな」
ゆめはまだ震えている。
でも、
舞台に立つ覚悟が確かに胸の中で固まった瞬間だった。
観客のざわつきも、
終の引退の噂も、
ゆめの声の前にはただの背景にすぎない。
ペンライトの海が、
彼女の決意を祝福していた。
[太字]間奏(アカペラ:ゆめ)
[/太字]
[太字][斜体]「……ありがとう」
[/斜体][/太字]
その小さな声に、
会場全体が止まる。
ざわめきは完全に消え、
ペンライトが静止する。
観客一人ひとりの視線がゆめを追い、
初めて、
ゆめの歌だけが会場を支配する。
アカペラで静まり返った会場に、
ゆめの声が柔らかく残る。
小さく震えるその声は、
しかし確かな意思を帯びていた。
観客は息を飲み、
ペンライトを止めて耳を澄ます。
[太字]Cメロ:三人
[斜体]折れそうな夜もあった
比べられる日々もあった
それでも手を離さなかった
声が重なるたび
一人じゃないと知った
[/斜体][/太字]
ゆめは一歩前に踏み出し、
両手を胸の前で組み、
徐々に両腕を左右に広げる。
その動きに合わせて、
みんとが右側から大きくジャンプし、
片手を天へ。
如月は左側で指先を揃え、
空中に光の線を描く。
三人の動きは個性を失わずに調和し、
舞台全体が生きた光の渦になる。
観客は静寂から一気に息を吹き返す。
ざわめきではなく、
心からの共鳴が起きた。
小さな「うわぁ…」という感嘆が、
次第に大きな呼吸の波となり、
ペンライトが再び揺れ始める。
ゆめの声が次第に安定してくる。
最初の震えは残るが、
力強くなり、
隣に立つみんとの腕の動き、
如月の線の揺れに合わせて声が伸びる。
それぞれが互いを見つめ、
目で呼吸を合わせる。
観客は息をのんだまま、
その瞬間を「聴いている」。
[太字]ラスサビ:ゆめセンター
[/太字]
[斜体][太字]光は遠くにない
最初から ここにあった
隣で笑ってた
君の中にあった
支えるだけじゃない
疑うだけじゃない
守るだけじゃない
今度は 私が
光になる番だ[/太字][/斜体]
ゆめがセンターで両手を広げ、
胸を張る。
みんとは右で力強くジャンプしながらステップを踏み、
左手でゆめを軽くサポートするようなポーズ。
如月は左で冷静に、
しかし指先の動きが観客の目を釘付けにする。
「止め」の振り付けで空気を切り取り、
静と動のコントラストで舞台全体の迫力を増す。
[太字]大サビ:三人ユニゾン
[/太字]
[斜体][太字]響け 響け
この声は消えない
過去も未来も
越えていく
偶像は 生まれない
想いで 繋がれる
光は、隣で
育っていた[/太字][/斜体]
三人の声が完全に重なり、
会場に轟音のように響く。
ステージ全体が光に包まれ、
ペンライトの光も三色に揺れながら一つの波を作る。
観客は声に合わせて揺れ、
涙を拭う人も多い。
ステージ中央でゆめは深呼吸しながら、
手を握ったまま微笑む。
みんとと如月が、
少し肩を寄せ合い、
互いの目を見る。
三人の視線が交わった瞬間、
観客はその関係性の深さを感じ、
声援がさらに高まる。
舞台袖では、管理人が静かに見守る。
瞳にわずかな光を宿し、
肩の力を抜く。
「……届いたな」
ゆめの声が、
確実に観客の心に届いた瞬間だった。
恐れや不安は消え去り、
今はただ「立った」という実感だけが残る。
隣にいるみんとと如月の温もりが、
彼女を包み込む。
観客の歓声と涙が舞台を揺らす中、
ゆめは初めて、
自分がこの舞台の「光の一部」であることを実感する。
スポットライトの中心に立つゆめの手が、
まだ微かに震えている。
だが、
肩越しにみんとと如月の視線を感じ、
胸の奥で少しずつ強さが芽生える。
[太字][大文字][明朝体]「大丈夫、私は一人じゃない――」
[/明朝体][/大文字][/太字]
心の中でそう呟き、
握った拳をそっと開く。
舞台の床に、
三人の影が並ぶ。
みんとは微笑みながら、
小さく囁く。
「ゆめ、センター似合ってた」
如月は少し目元を押さえながらも、
柔らかく言う。
「遅いよ。待ってた」
ゆめの胸に込み上げる感情が溢れ、
涙が頬を伝う。
しかしその涙は、
不安や迷いのものではない。
覚悟の涙。
決意の涙。
彼女は、
目の前の光の海を見つめ、
観客の声を全身で受け止める。
暗転の瞬間、
会場のざわめきが一瞬止まる。
三人のペンライトが一斉に揺れ、
まるで無数の星が瞬く宇宙のよう。
ゆめは深く息を吸い、
マイクに口を近づける。
[太字][明朝体]「……私は、[漢字]偶像[/漢字][ふりがな]アイドル[/ふりがな]になります」
[/明朝体][/太字]
会場は一瞬、
静寂に包まれる。
その静寂の中で、
観客は息をのむ。
ステージ上の三人、
特にゆめの存在が、
一瞬にして観客の心を掴む。
みんとがゆめの肩に軽く手を置き、
如月も隣で静かに頷く。
三人の視線が交わるたび、
光は確かに繋がっていく。
客席後方、
暗がりでスーツ姿の管理人が立つ。
舞台袖から移動し、
観客視点から演奏を見ていた。
誰にも気づかれない位置で、
胸の奥に暖かい何かが広がるのを感じる。
小さく息を吐き、
目を潤ませる。
「……届いたな」
その瞬間、
過去の自分のすべての決断が、
間違っていなかったと確信する。
二度とステージに立たない自分の声は、
今、
三人の声として生き続ける。
光は、
一人で輝くのではない。
隣に育つ存在と共に、
広がっていくものだと知る。
三人は手をつなぎ、
ステージ中央で肩を寄せ合う。
みんとはにっこり笑い、
如月はわずかに目を細める。
ゆめは、
震えていた手を胸に戻し、
深呼吸する。
心の中で、
静かに誓う。
[太字][中央寄せ][大文字]「もう、逃げない。これが私の光――」
[/大文字][/中央寄せ][/太字]
観客の歓声が再び巻き起こる。
割れんばかりの拍手、
泣き声、
歓声、
ペンライトの光。
三人はその光の中で、
初めて「同じ高さの光」として立っている。
幕が降りる前、
ゆめの視線は一度、
観客席後方の管理人に向く。
彼は小さく微笑み、
黙って頷く。
ゆめは心の中で、
彼女に言う。
「ありがとう、ここまで守ってくれて」
舞台の照明が落ち、
会場が暗転しても、
三人の声の余韻は空気に溶け、
観客の胸に残り続ける。
光は、
決して一人で育つものではない。
誰かと支え合い、
互いに磨き合い、
繋がって初めて輝くものなのだと――
最後の一瞬、
三人の手がしっかりと握られた。
ゆめの胸は上下し、
目は光に満ちている。
逃げずに立った瞬間、
初めて「私も偶像だ」と実感する。
拍手は鳴り止まず、
会場全体が一つの光の波に包まれたまま、
幕が下りる。
[太字][斜体][大文字][明朝体]――光は、隣で育っていた。
――最後の音が、消えた。[/明朝体][/大文字][/斜体][/太字]
三人の声が重なった余韻だけが、
会場の天井にゆっくりと溶けていく。
誰も、
すぐには拍手できなかった。
まるで、
壊してはいけないものを目の前にしているみたいに。
ゆめの胸は、
まだ大きく上下している。
手の震えは止まらない。
視界が滲んで、
客席の光が揺れている。
怖かった。
途中、
何度も。
でも――逃げなかった。
ゆっくりと顔を上げる。
目の前には、
光の海。
ペンライトが、
まるで星空のように揺れている。
最前列で、
みんとが泣いている。
頬をぐしゃぐしゃにして、
それでも笑っている。
その隣で如月が、
静かに目元を押さえていた。
いつも冷静な彼女の指先が、
わずかに震えている。
ゆめの喉の奥が、
熱くなる。
何か言わなきゃ。
でも言葉が出ない。
沈黙の数秒。
そして――
一人が、
拍手をした。
小さな音。
それが、
波紋のように広がる。
二人。
三人。
十人。
次の瞬間。
会場が揺れた。
割れんばかりの拍手。
歓声。
泣き声。
「ゆめ――!!」
誰かが名前を叫ぶ。
それが何人にも重なっていく。
ゆめの足から力が抜けそうになる。
その瞬間。
右手を、
みんとが握った。
強く。
左手を、
如月が握る。
しっかりと。
三人で、
中央に立つ。
ゆめは、
客席をまっすぐ見た。
涙が頬を伝う。
でも、
笑っている。
「……」
息を吸う。
今度は、
震えていない。
「ありがとうございました」
それだけ。
たった一言なのに、
会場の空気がまた揺れる。
客席後方。
暗がりの中で、
スーツ姿の管理人が立っている。
誰にも気づかれない位置。
その瞳が、
わずかに潤んでいる。
小さく、
息を吐く。
「……やっと、立ったな」
拍手はまだ止まらない。
スポットライトの中で、
ゆめは初めて思う。
[斜体][太字]――逃げなくてよかった。
――隣にいて、よかった。[/太字][/斜体]
両隣の温もりが、
確かにある。
みんとが小さく囁く。
「ゆめ、センター似合ってた」
如月が続ける。
「遅いよ。待ってた」
また涙が溢れる。
でももう、
それは不安の涙じゃない。
ステージの床に、
三人の影が並んでいる。
もう、
一歩後ろじゃない。
同じ位置。
光のど真ん中。
歓声の中、
ゆめは心の中で、
静かに言う。
[太字][斜体]――私は、偶像になります。
[/斜体][/太字]
拍手は、
まだ鳴り止まない。
◇
客席後方。
暗がり。
管理人はそこから動こうとしない。
拍手の中、
小さく呟く。
「……届いたな」
誰にも聞こえない。
そして一筋、
涙。
ソノスは、
二度とステージに上がらない。
でも。
その声は、
繋がった。
- 1.第一部 第零話 スタートライン手前にて
- 2.第一部 第一話 スタートラインに立ったもの
- 3.第一部 第二話 開始のブザーが鳴り
- 4.第一部 第三話 前傾姿勢になって。
- 5.第一部 第四話 もう一度?
- 6.第一部 第五話 採点室にて
- 7.第一部 第六話 歌い手に。 そして本当のスタートを前に。
- 8.第一部 最終話 説明会前日
- 9.第二部 第零話 静かな会議室にて
- 10.第二部 第一話 お披露目会
- 11.第二部 第二話 お披露目会・終了後
- 12.第二部 第三話 初舞台
- 13.第二部 第四話 朱、降臨
- 14.第二部 第五話 黄、すべてを照らす
- 15.第二部 第六話 声を並べる者たち
- 16.第二部 第七話 声を剥ぐ
- 17.第二部 第七・五話 身体は嘘をつかない
- 18.第二部 最終話 管理人の記録
- 19.第三部 第零話 週刊誌
- 20.第三部 第一話 予定外の光
- 21.第三部 第二話 知らされる星
- 22.第三部 第三話 星降る夜、未来を夢見る
- 23.第三部 チーム編成
- 24.第三部 第四話 チーム分けと練習、そして思い出
- 25.第三部 第五話 グループで発表会
- 26.第三部 第六話 如月の成長
- 27.第三部 第七話 みんとは。
- 28.第三部 第八話 如月の本音
- 29.第三部 第九話 火が付く
- 30.第三部 第十話 炎上
- 31.第三部 第十一話 お願い
- 32.第三部 最終話 管理人は。
- 33.第四部 第零話 声を捨てたもの
- 34.第四部 第一話 揺れる光
- 35.第四部 第二話 疑問を持つ者
- 36.第四部 第三話 新たな火種
- 37.第四部 第四話 崩れる夜
- 38.第四部 第五話 管理人の決断
- 39.第四部 最終話 継ぐ光
- 40.第五部 第零話 余光を見つめて
- 41.第五部 第一話 違和感
- 42.第五部 第2話 選ばれない側
- 43.第五部 第三話 管理人の視線
- 44.第五部 第四話 事件、そして―
- 45.第五部 最終話 光の交代
- 46.第六部 第零話 今年の光
- 47.第六部 第一話 光の隣で
- 48.第六部 第二話 崩れた予定
- 49.第六部 第三話 本音
- 50.第六部 第四話 ソノスの役目
- 51.第六部 最終話 光は、隣で
- 52.最後に。