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900閲覧!!【完結いたしました!】 憧れのアイドル―偶像と同じステージに立つ日まで―勝つか、消えるか、歌い手としての最初の一歩

#50

第六部 第四話 ソノスの役目

楽屋の空気は、まだライブの余韻で熱く、しかしどこか静かだった。
照明は落とされ、モニターの光だけが薄く壁を照らす。
そこに、管理人――かつての偶像ソノスが立っていた。

「……私は、声から逃げた」

その言葉は、ゆめに届く。
ステージ上で歌うことを恐れ、裏で支えるだけに徹してきた自分自身の告白。
「逃げた……あの声も、あの光も、全部、閉じ込めた」

ゆめは息を詰める。
今までは想像の中でしか聞けなかった声、直接自分に向けられたその告白に、胸が締め付けられる。

「でも君は逃げなかった」

ソノスの瞳は、ゆめをまっすぐに見つめる。
その視線は厳しくもあり、優しくもある。
「偶像は才能じゃない。覚悟だ」

覚悟。
ゆめはその言葉の重みを、胸の奥でじんわりと感じた。
「私は……覚悟を……」
震える声を、思わず小さく漏らす。

「次の偶像は、君だ」

その一言に、ゆめは崩れ落ちそうになる。
目の前の管理人――ソノスが、今、初めて自分の正体を明かした瞬間。
胸の奥で押さえ込んでいた感情が、一気に溢れ出す。

ゆめの視界が揺れる。涙が頬を伝い落ちる。
「え……私……? 本当に……?」

ソノスは微笑んだわけではない。
しかし、その静かな表情の奥には確かな信頼があった。
「逃げずに立った者には、光が届く。君は、それを見せてくれた」

ゆめはその言葉を何度も反芻する。
ステージ上で震えながらも歌った自分。
観客の前で恐れを乗り越えた自分。
そのすべてを、ソノスは見ていてくれた。

「私……私は……!」
ゆめの声は、抑えきれない感情で震える。
胸がいっぱいになり、足元がふらつきそうになる。

ソノスは一歩近づき、手を差し伸べた。
「君はもう、逃げる必要はない。光は、君自身がつかむものだ」

その瞬間、ゆめは深く息を吸い込む。
震えながらも、少しずつ前を向く。
「……はい、わかりました……!」

管理人として、裏で支えてきた者の役目は、ここで一つの終わりを迎える。
彼はもう、直接光を奪うことはしない。
ただ、必要なときに背中を押すだけ――それが今の自分の役目だと、静かに自覚する。

楽屋の空気が、ゆめの覚悟と共鳴するように温かく変わる。
観客の歓声は届かない場所でも、確かに、光はそこに生まれた。

「……次の光は、君だ」
ソノスの声は、誰にも聞こえないくらい静かだ。
しかし、ゆめの胸には、確実に響いた。

ゆめは崩れるように膝をつき、涙をこぼす。
でも、その涙は弱さの涙ではない。
今日、覚悟を決めた者の涙。

「私は……偶像になります」
心の中で、ゆめは小さく、しかし確かに宣言する。

ステージの向こう側、管理人の姿は暗がりに溶けていた。
だが、その存在はゆめの胸の奥で、確かな光として生き続ける。
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作者メッセージ

今日の深夜分の投稿です。

やっぱり見にくくなっててすみません。

では!

2026/03/13 06:05

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歌い手研修生から参加型

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