ライブ後、楽屋はまだ熱気に包まれていた。
歓声の余韻、観客の光の海、ステージ上の緊張感――
全てが胸に残り、ゆめの手はまだ震えていた。
彼女は椅子に腰かけ、目を伏せる。
肩で小さく息をするたびに、まだ心臓が高鳴るのがわかった。
静かな涙が頬を伝い落ちる。
「私……本当は、ずっと……」
声にならない言葉が喉から漏れる。
舞台では笑顔で、後ろに立って支えるだけだった自分。
でも、本当はずっと――
光に憧れていた。
誰かの中心に立ちたいと思っていた。
その時、みんとが近づき、そっと肩に手を置く。
「ゆめ……」
抱きしめると、ゆめの震えがさらに大きくなる。
抱きしめ返すゆめの手は、力が入りすぎて硬く、でも確かに温かかった。
如月は、普段は冷静で理知的な彼女の目が、ほんの少し柔らかくなる瞬間を見せた。
「なんで言わなかったの……?」
その声は穏やかで、しかしゆめの胸に刺さる。
「ずっと、見ているだけでいいと思ったの? 支える側で?」
ゆめは小さく首を振る。
「違う……違うんです……」
声はまだ震えていた。
「偶像が羨ましかった……でも、自分が出たら、壊しちゃうと思った。
バランスが崩れる……私が出ることで、二人の光まで……」
みんとは涙を拭いながら、ゆめの肩を強く抱き寄せる。
「バランスなんて関係ないよ。ゆめ、あなたも光なんだよ」
如月も近づき、静かに手を伸ばす。
「ずっと待ってたんだよ。君が自分の声を出すのを」
ゆめの胸の中に、これまでの“支える側”としての意識と、今日初めて感じた“自分も光になれる”という確信がぶつかり合う。
涙が止まらない。言葉も途切れ途切れになる。
「怖かった……壊したくなかった……でも、本当は……ずっと光の側にいたかった……」
言いながら、ゆめは両手で顔を覆い、嗚咽を漏らす。
みんとはそっと背中をさすり、如月は肩に手を置いたまま、ゆめの存在を認める静かな力を与える。
「怖くて当然だよ。でも、逃げる必要なんてない。ボクたちがここにいる」
如月の声は、初めて柔らかく、温かく、ゆめの胸に届く。
その瞬間、ゆめは理解する。
光を羨むだけではなく、自分も光になれること。
そして支えるだけではなく、支えられることも悪くないこと。
「……ありがとう……二人とも……」
震える声が、少しずつ落ち着きを取り戻す。
「私……前に出ても、いい……?」
みんとが微笑み、如月も頷く。
「うん。君も光だよ」
涙で滲む視界の先、楽屋の明かりが温かく感じられる。
初めて、自分がこの場所で、偶像として立てる可能性を信じられた瞬間だった。
歓声の余韻、観客の光の海、ステージ上の緊張感――
全てが胸に残り、ゆめの手はまだ震えていた。
彼女は椅子に腰かけ、目を伏せる。
肩で小さく息をするたびに、まだ心臓が高鳴るのがわかった。
静かな涙が頬を伝い落ちる。
「私……本当は、ずっと……」
声にならない言葉が喉から漏れる。
舞台では笑顔で、後ろに立って支えるだけだった自分。
でも、本当はずっと――
光に憧れていた。
誰かの中心に立ちたいと思っていた。
その時、みんとが近づき、そっと肩に手を置く。
「ゆめ……」
抱きしめると、ゆめの震えがさらに大きくなる。
抱きしめ返すゆめの手は、力が入りすぎて硬く、でも確かに温かかった。
如月は、普段は冷静で理知的な彼女の目が、ほんの少し柔らかくなる瞬間を見せた。
「なんで言わなかったの……?」
その声は穏やかで、しかしゆめの胸に刺さる。
「ずっと、見ているだけでいいと思ったの? 支える側で?」
ゆめは小さく首を振る。
「違う……違うんです……」
声はまだ震えていた。
「偶像が羨ましかった……でも、自分が出たら、壊しちゃうと思った。
バランスが崩れる……私が出ることで、二人の光まで……」
みんとは涙を拭いながら、ゆめの肩を強く抱き寄せる。
「バランスなんて関係ないよ。ゆめ、あなたも光なんだよ」
如月も近づき、静かに手を伸ばす。
「ずっと待ってたんだよ。君が自分の声を出すのを」
ゆめの胸の中に、これまでの“支える側”としての意識と、今日初めて感じた“自分も光になれる”という確信がぶつかり合う。
涙が止まらない。言葉も途切れ途切れになる。
「怖かった……壊したくなかった……でも、本当は……ずっと光の側にいたかった……」
言いながら、ゆめは両手で顔を覆い、嗚咽を漏らす。
みんとはそっと背中をさすり、如月は肩に手を置いたまま、ゆめの存在を認める静かな力を与える。
「怖くて当然だよ。でも、逃げる必要なんてない。ボクたちがここにいる」
如月の声は、初めて柔らかく、温かく、ゆめの胸に届く。
その瞬間、ゆめは理解する。
光を羨むだけではなく、自分も光になれること。
そして支えるだけではなく、支えられることも悪くないこと。
「……ありがとう……二人とも……」
震える声が、少しずつ落ち着きを取り戻す。
「私……前に出ても、いい……?」
みんとが微笑み、如月も頷く。
「うん。君も光だよ」
涙で滲む視界の先、楽屋の明かりが温かく感じられる。
初めて、自分がこの場所で、偶像として立てる可能性を信じられた瞬間だった。
- 1.第一部 第零話 スタートライン手前にて
- 2.第一部 第一話 スタートラインに立ったもの
- 3.第一部 第二話 開始のブザーが鳴り
- 4.第一部 第三話 前傾姿勢になって。
- 5.第一部 第四話 もう一度?
- 6.第一部 第五話 採点室にて
- 7.第一部 第六話 歌い手に。 そして本当のスタートを前に。
- 8.第一部 最終話 説明会前日
- 9.第二部 第零話 静かな会議室にて
- 10.第二部 第一話 お披露目会
- 11.第二部 第二話 お披露目会・終了後
- 12.第二部 第三話 初舞台
- 13.第二部 第四話 朱、降臨
- 14.第二部 第五話 黄、すべてを照らす
- 15.第二部 第六話 声を並べる者たち
- 16.第二部 第七話 声を剥ぐ
- 17.第二部 第七・五話 身体は嘘をつかない
- 18.第二部 最終話 管理人の記録
- 19.第三部 第零話 週刊誌
- 20.第三部 第一話 予定外の光
- 21.第三部 第二話 知らされる星
- 22.第三部 第三話 星降る夜、未来を夢見る
- 23.第三部 チーム編成
- 24.第三部 第四話 チーム分けと練習、そして思い出
- 25.第三部 第五話 グループで発表会
- 26.第三部 第六話 如月の成長
- 27.第三部 第七話 みんとは。
- 28.第三部 第八話 如月の本音
- 29.第三部 第九話 火が付く
- 30.第三部 第十話 炎上
- 31.第三部 第十一話 お願い
- 32.第三部 最終話 管理人は。
- 33.第四部 第零話 声を捨てたもの
- 34.第四部 第一話 揺れる光
- 35.第四部 第二話 疑問を持つ者
- 36.第四部 第三話 新たな火種
- 37.第四部 第四話 崩れる夜
- 38.第四部 第五話 管理人の決断
- 39.第四部 最終話 継ぐ光
- 40.第五部 第零話 余光を見つめて
- 41.第五部 第一話 違和感
- 42.第五部 第2話 選ばれない側
- 43.第五部 第三話 管理人の視線
- 44.第五部 第四話 事件、そして―
- 45.第五部 最終話 光の交代
- 46.第六部 第零話 今年の光
- 47.第六部 第一話 光の隣で
- 48.第六部 第二話 崩れた予定
- 49.第六部 第三話 本音
- 50.第六部 第四話 ソノスの役目
- 51.第六部 最終話 光は、隣で
- 52.最後に。