最初に異変が起きたのは、
放課後の屋上だった。
「…あの子、笑ってるのに」
ファイヤー・ルビーが、
双眼鏡を下ろす。
「目が、死んでる」
屋上の端。
三人の生徒が、
空を見上げていた。
笑顔。
穏やかな声。
でも―
Affectusが、低く言う。
「感情が、平坦スギル」
「悲しみも怒りも、ゼロじゃない
でも、[太字][大文字]揺れ[/大文字][/太字]がナイ」
ポラリスは、空を見ていた。
「…星の配置
ズレてる」
「自然じゃない?」
「うん
―[太字][大文字]見せてる[/大文字][/太字]」
◇
私たちは、
屋上には上がらなかった。
代わりに、
階段の踊り場で待つ。
「噂を信じた人は、救われる」
私は、椎奈の言葉を思い出す。
でも―
それは「今」だけだ。
スーラが、
私の袖を引いた。
「…ゆめさん
この人たち」
「[太字][大文字]軽い[/大文字][/太字]の、好きになっちゃってる」
「戻るの、怖い」
私は、
頷く。
「だから、無理に戻さない」
雷が、
少し真面目な顔で言った。
「じゃあ、どうするの?」
「選べるようにする」
即答だった。
◇
原因は、
すぐに見つかった。
屋上の給水塔の影。
小さな、歪んだ結界。
ポラリスが、
指を鳴らす。
「星見用の[太字][大文字]補助装置[/大文字][/太字]だ」
「昔の悪魔の技術
感情を安定させるための」
鬼灯が、
目を細める。
「だが、制限がない」
「使い続ければ―」
Affectusが、
楽しそうに継ぐ。
「考える力から、感情を切り離ス」
「楽だけど、成長しナイ」
ファイヤー・ルビーが、
歯を噛みしめる。
「誰が、こんなものを?」
「善意だよ」
その声は、
背後からだった。
◇
語部 椎奈が、
そこに立っていた。
「昔ね
この学校で、大きな事件があった
傷ついた子たちを、
どうにかしたくて
[太字][大文字]星を見ると落ち着く[/大文字][/太字]って噂を、
誰かが広めた」
私は、
静かに聞く。
「でも」
椎奈は、
少しだけ困ったように笑う。
「楽になる方法は、
だいたい長持ちしない
気づいた時には、
戻れなくなる
だから―」
視線を私に向ける。
「止めてほしかった」
◇
私たちは、
屋上に上がった。
噂を信じていた生徒たちは、
こちらを見る。
私は、言った。
「星を見るのを、
やめなくていい」
ざわめき。
「でも」
一歩、前に出る。
「[太字][大文字]それ以外[/大文字][/太字]も、残してください」
「考えること」
「迷うこと」
「嫌な気持ちになること」
「全部、あなたのものです」
沈黙。
神田先輩が、
静かに続ける。
「楽な場所が悪いんじゃない」
「そこしか無いのが、
問題なんだ」
ファイヤー・ルビーは、
結界に手を伸ばした。
「これは、壊す」
「でも」
振り返る。
「代わりに、話を聞く」
「逃げたくなったら」
「一緒に、別の逃げ道を探す」
◇
ポラリスが、
星の配置を元に戻す。
Affectusが、
感情の流れを[太字][大文字]揺らす[/大文字][/太字]。
スーラが、
小さく呟く。
「…大丈夫」
「戻れる」
結界は、
音もなく消えた。
屋上の空は、
いつもの星に戻る。
生徒の一人が、
小さく泣いた。
「…重い」
私は、
それを否定しなかった。
「はい」
「でも、それは」
星の配置はやけに綺麗だった。
それを見ると声を出せる。
[太字][大文字]「生きてるってことです」
[/大文字][/太字]
◇
後日。
噂は、
自然に消えた。
誰かが禁止したわけじゃない。
ただ―
「それしかない」
場所じゃなくなった。
椎奈は、
去り際に言った。
「いい結末だね」
「物語としては、
少し地味だけど」
私は、笑った。
「何でも屋らしいです」
◇
図書室。
雷が、
椅子に逆さに座りながら言う。
「事件、解決ー?」
神田先輩が、
肩をすくめる。
「たぶん」
ファイヤー・ルビーは、
本を閉じる。
「完全じゃないけど」
私は、頷いた。
「完全じゃないから、
いいんです」
スーラが、
小さく微笑む。
「…軽すぎない」
「ちょうどいい」
鬼灯が、
満足そうに言った。
「うむ」
「人も悪魔も、
まだ捨てたものではない」
Affectusは、
楽しそうに回る。
「次は、どんな感情カナ」
私は、
時計を見る。
放課後は、
まだ終わらない。
何でも屋は、
今日も―
正解を決めずに、
選択肢を残している。
物語は、
静かに続いていく。
放課後の屋上だった。
「…あの子、笑ってるのに」
ファイヤー・ルビーが、
双眼鏡を下ろす。
「目が、死んでる」
屋上の端。
三人の生徒が、
空を見上げていた。
笑顔。
穏やかな声。
でも―
Affectusが、低く言う。
「感情が、平坦スギル」
「悲しみも怒りも、ゼロじゃない
でも、[太字][大文字]揺れ[/大文字][/太字]がナイ」
ポラリスは、空を見ていた。
「…星の配置
ズレてる」
「自然じゃない?」
「うん
―[太字][大文字]見せてる[/大文字][/太字]」
◇
私たちは、
屋上には上がらなかった。
代わりに、
階段の踊り場で待つ。
「噂を信じた人は、救われる」
私は、椎奈の言葉を思い出す。
でも―
それは「今」だけだ。
スーラが、
私の袖を引いた。
「…ゆめさん
この人たち」
「[太字][大文字]軽い[/大文字][/太字]の、好きになっちゃってる」
「戻るの、怖い」
私は、
頷く。
「だから、無理に戻さない」
雷が、
少し真面目な顔で言った。
「じゃあ、どうするの?」
「選べるようにする」
即答だった。
◇
原因は、
すぐに見つかった。
屋上の給水塔の影。
小さな、歪んだ結界。
ポラリスが、
指を鳴らす。
「星見用の[太字][大文字]補助装置[/大文字][/太字]だ」
「昔の悪魔の技術
感情を安定させるための」
鬼灯が、
目を細める。
「だが、制限がない」
「使い続ければ―」
Affectusが、
楽しそうに継ぐ。
「考える力から、感情を切り離ス」
「楽だけど、成長しナイ」
ファイヤー・ルビーが、
歯を噛みしめる。
「誰が、こんなものを?」
「善意だよ」
その声は、
背後からだった。
◇
語部 椎奈が、
そこに立っていた。
「昔ね
この学校で、大きな事件があった
傷ついた子たちを、
どうにかしたくて
[太字][大文字]星を見ると落ち着く[/大文字][/太字]って噂を、
誰かが広めた」
私は、
静かに聞く。
「でも」
椎奈は、
少しだけ困ったように笑う。
「楽になる方法は、
だいたい長持ちしない
気づいた時には、
戻れなくなる
だから―」
視線を私に向ける。
「止めてほしかった」
◇
私たちは、
屋上に上がった。
噂を信じていた生徒たちは、
こちらを見る。
私は、言った。
「星を見るのを、
やめなくていい」
ざわめき。
「でも」
一歩、前に出る。
「[太字][大文字]それ以外[/大文字][/太字]も、残してください」
「考えること」
「迷うこと」
「嫌な気持ちになること」
「全部、あなたのものです」
沈黙。
神田先輩が、
静かに続ける。
「楽な場所が悪いんじゃない」
「そこしか無いのが、
問題なんだ」
ファイヤー・ルビーは、
結界に手を伸ばした。
「これは、壊す」
「でも」
振り返る。
「代わりに、話を聞く」
「逃げたくなったら」
「一緒に、別の逃げ道を探す」
◇
ポラリスが、
星の配置を元に戻す。
Affectusが、
感情の流れを[太字][大文字]揺らす[/大文字][/太字]。
スーラが、
小さく呟く。
「…大丈夫」
「戻れる」
結界は、
音もなく消えた。
屋上の空は、
いつもの星に戻る。
生徒の一人が、
小さく泣いた。
「…重い」
私は、
それを否定しなかった。
「はい」
「でも、それは」
星の配置はやけに綺麗だった。
それを見ると声を出せる。
[太字][大文字]「生きてるってことです」
[/大文字][/太字]
◇
後日。
噂は、
自然に消えた。
誰かが禁止したわけじゃない。
ただ―
「それしかない」
場所じゃなくなった。
椎奈は、
去り際に言った。
「いい結末だね」
「物語としては、
少し地味だけど」
私は、笑った。
「何でも屋らしいです」
◇
図書室。
雷が、
椅子に逆さに座りながら言う。
「事件、解決ー?」
神田先輩が、
肩をすくめる。
「たぶん」
ファイヤー・ルビーは、
本を閉じる。
「完全じゃないけど」
私は、頷いた。
「完全じゃないから、
いいんです」
スーラが、
小さく微笑む。
「…軽すぎない」
「ちょうどいい」
鬼灯が、
満足そうに言った。
「うむ」
「人も悪魔も、
まだ捨てたものではない」
Affectusは、
楽しそうに回る。
「次は、どんな感情カナ」
私は、
時計を見る。
放課後は、
まだ終わらない。
何でも屋は、
今日も―
正解を決めずに、
選択肢を残している。
物語は、
静かに続いていく。