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今を生きる人に私が伝えたいこと

#4

【テーマ:幸運】 小さな光の重さ

午後の公園は、思いのほか静かだった。

平日のベンチには、
同じように少しだけ時間を持て余した人が座っている。

風が、乾いた落ち葉を転がす。
遠くで子どもの笑い声が弾ける。

缶コーヒーのぬるさを感じながら、
空を見上げる。

雲はゆっくりと形を変えていく。

そのとき、ふと声がした。

[明朝体][太字]「あなたは今幸福ですか?」
[/太字][/明朝体]
思わず、周囲を見渡す。

誰もこちらを見ていない。
世界は、いつも通り進んでいる。

幸福?

それは、何かを手に入れたときにだけ
与えられるものだろうか。

成功。
愛情。
安定。
称賛。

たしかに、それらは甘い。

けれど、それが消えた瞬間、
幸福も消えてしまうのだろうか。

古代のある哲学者は、
幸福とは「よく生きること」だと考えた。
外側の偶然ではなく、
内側のあり方だと。

別の思想家は、
人は欲望に振り回されるかぎり満たされない、と語った。

どれだけ手に入れても、
もっと、が生まれるからだ。

では、幸福とは
足し算ではなく、
引き算の果てに残るものだろうか。

ベンチの木目に触れる。
ざらつきが、指先に残る。

風が頬を撫でる。

いま、ここにある感覚。

特別ではない。
劇的でもない。

けれど確かだ。

幸福とは、
歓声の中心に立つことではなく、
この瞬間を「嫌ではない」と感じられることかもしれない。

胸の奥を探ってみる。

完璧ではない。
不安もある。
足りないものも多い。

それでも。

いま、この空を見上げている自分を、
少しだけ許せる。

それは幸福と呼べるだろうか。

声は、もう何も言わない。

ただ、問いだけが残る。

「あなたは今幸福ですか?」

答えは、
はい、でもいい。
いいえ、でもいい。

大きな光でなくてもいい。

消えそうなほど小さくても、
確かに灯っているなら。

幸福は、
遠くに到達する場所ではなく、
気づくかどうかの、静かな重さなのかもしれない。

缶コーヒーを飲み干し、立ち上がる。

風景は変わらない。

けれど、問いを抱いたぶんだけ、
世界はほんの少し、柔らかく見えた。

2026/03/02 00:00

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