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350閲覧!?第二期始動! 募集内容は星の人にお店のメニュー!? 残り2人と4メニュー募集中!【参加型】星を紡ぐティータイム

#7

天秤座 言葉を量る、沈黙の重さは。

夜の街は、
そろそろ朝の気配を思い出し始めていた。

空気がほんの少しだけ軽くなる。
けれど、まだ完全には戻らない。

その中間の時間―
均衡が揺れる刻。

裏道の角で、
一人の少年が立ち止まっていた。

「…」

天真 稔は、
手の中の小さな本を無意識に撫でる。

星の図鑑。
角が少し丸くなった、
何度も読み返された跡のある一冊。

「ここ…だよな?」

地図にはない場所。
でも、
なぜか知っている。

黒いYシャツの袖を肘までまくり、
白いズボンのポケットに片手を入れたまま、
稔は小さく息を吸った。

大丈夫。
雑談なら得意だ。

そう、
真面目な話じゃなければ。

ランプの光が揺れる。

「…喫茶店?」

看板はない。
でも、
星みたいな灯りだけが、
ちゃんとそこにあった。

「ま、入るだけ入ってみよっか」

自分にそう言い聞かせて、
扉を押す。

カラン。

鈴の音が鳴った瞬間、
胸の奥が―
ほんの少しだけ、軽くなる。

店内は静かで、あたたかい。
壁には星図。
時計はあるのに、時間が曖昧だ。

「こんにちは。いらっしゃいませ」

カウンターの向こうのマスターが、
穏やかに言う。

稔は反射的に笑った。

「こんちは! 僕天真ゆうねん!」

…言ってから、
少しだけ恥ずかしくなる。

「天真 稔。天秤座だよ」

マスターは頷くだけで、
余計な反応はしない。

それが、
なぜか助かった。

差し出された紅茶は、
淡い色で、
香りが何層にも重なっている。

一口飲む。

「…」

味は、
甘すぎず、苦すぎず。

ちょうどいい。

「どうしたんどうしたん?」

沈黙が怖くなって、
稔は笑顔で言う。

「この店さ、
星好きの人がやってるん?」

マスターは答えない。
代わりに、
静かにポットを温め直す。

その仕草を見ているうちに、
言葉が、自然とほどけてしまった。

「あのさ…」

声が、少しだけ落ちる。

「僕、喋るのは得意なんだよ?」

自分でも分かるくらい、
上手に人と関われる。

「○○宿題どうなーん??
とかさ、
僕は終わったよー、とか」

笑って言える。
軽くて、楽で。

「でも…」

言葉が、止まる。

「あ…ぇっと…」

喉の奥が、
急に重くなる。

真面目な話。
大切な話。

それに触れようとすると、
頭が真っ白になる。

「…無理なんだ」

稔は、
カップの縁を見つめたまま言う。

「ちゃんとした話、しようとする……
何も、出てこなくなる」

星の図鑑を、
ぎゅっと抱える。

「昔さ…」

そこで、
完全に言葉が途切れた。

マスターは、
一切急かさない。

ただ、
紅茶の温度を保つ。

「天秤座は」

静かな声。

[明朝体][太字][大文字][斜体]「言葉と沈黙、
その両方の重さを知る星です」[/斜体][/大文字][/太字][/明朝体]

稔は、
顔を上げない。

「…喋らなかったんじゃない」

マスターは続ける。

[太字][明朝体][大文字]「喋れなくなった、のですね」
[/大文字][/明朝体][/太字]
その一言で、
胸の奥が、きしっと鳴った。

「……」

否定も、肯定もできない。

ただ、
紅茶を一口飲む。

「僕さ」

小さな声。

「バランス取るの、好きなんだ」

皆が楽しくなるように。
空気が重くならないように。

「でも…
重たい話って、
一回崩れると、戻らんやん」

だから―
触れない。

「それは、逃げではありません」

マスターは言う。

「失わないために、
沈黙を選んだのです」

稔の指先が、
わずかに震えた。

「…また、来てもいい?」

ほとんど、
息みたいな声。

「ええ」

マスターは、はっきり頷く。

「扉は、
あなたを覚えています」

カラン。

扉が閉まる。

星図の壁に、
細く、対になる線が刻まれた。

片方は、
誰かと繋ぐための線。

もう片方は、
言葉にならなかった沈黙の線。

二本は、
まだ完全には重ならない。

けれど、
確かに釣り合っていた。

マスターはそれを見つめ、
静かに呟く。

「語らないことも、
語りすぎないことも―
天秤の上では、同じ重さです」

ランプの光が、
穏やかに揺れる。

夜は、まだ終わらない。

次の星もまた、
自分の沈黙に、
名前をつける準備をしている。

作者メッセージ

深夜0時投稿が基本となってきた、kanonloveです!
今回も読んでくださってありがとうございます!

では、本日のお知らせです。
なんと、本作品が150閲覧達成しました!
みなさんありがとうございます!

では、次の作品でお会いしましょう!

When You Wish Upon a Star,See you again!

2026/01/06 23:24

KanonLOVE
ID:≫ n00YEDEqgv6kY
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