静まり返ったオフィス。
窓の外は夜。
街の光がガラスに滲み、
まるで遠い歓声の残響のように揺れている。
デスクの上には、
いくつものモニター。
みんとの名前。
拡散された動画。
歪められた切り抜き。
悪意ある見出し。
「……やり方が、汚いな」
低く呟く。
感情は揺れていない。
怒りも焦りもない。
だが――静かに、芯が冷えていく。
通知の増加速度を確認する。
投稿元。
初動アカウント。
拡散の導線。
「……意図的だな」
自然発生ではない。
誰かが火をつけ、
風を送っている。
椅子にもたれ、
目を閉じる。
一瞬だけ、
過去がよぎる。
スポットライト。
黒とピンクの派手な衣装。
歓声。
ステージ中央に立つ自分。
[大文字][太字]“ソノス!”
[/太字][/大文字]
あの名を呼ぶ声。
胸を震わせる音圧。
観客の息遣い。
心を奪う支配感。
そして――
「……声」
小さく、
かすれる。
自分よりも澄んだ声。
自分よりも伸びる高音。
自分よりも、まっすぐな輝き。
それを知った日から。
ソノスは、
歌うのをやめた。
今はスーツ姿の[大文字][太字]“管理人”[/太字][/大文字]。
表の顔は、
裏方。
だが。
モニターに映るみんとの映像を見た瞬間、
胸の奥が、
わずかに疼いた。
「あの子は……潰させない」
指がスマホを取る。
登録されていない番号へ発信。
数コールの後、
繋がる。
「私だ」
声色は冷静で、
感情は抑制されている。
「例の件、そろそろ表に出す」
沈黙。
相手が息を飲む気配。
「証拠データは揃っている。拡散の初動アカウント、IP、依頼元の資金の流れも」
短く区切る。
「週刊に流せ。ただし、条件がある」
窓の外を見つめる。
「みんとの名前は出すな。狙われていた、という構図にする」
一拍。
「……そして」
少しだけ、
目を伏せる。
「[太字]“ソノス”[/太字]の名前を出せ」
電話の向こうがざわつく。
当然だ。
あの名は、
業界では今でも影を持つ。
「引退の理由も、含めて出せ」
静かに、
しかし揺るがず言う。
「私が消えたのは、後継を守るためだった、と」
それは半分真実で、
半分嘘。
いや――
今、
この瞬間に真実に変わる。
電話を切る。
部屋に沈黙が戻る。
デスクに置かれた古いマイク。
封印したはずの象徴。
管理人は、
それに指先で触れる。
「……まだ、歌えない」
けれど。
守ることはできる。
総長として。
裏で束ねる者として。
そして――
かつて[太字][大文字]“初代偶像”[/大文字][/太字]と呼ばれた存在として。
モニターに映るみんとの顔は、
不安と戦っている。
「君は、光でいろ」
低く、
優しく。
「闇は、私が引き受ける」
その瞬間。
モニターの通知増加が、
わずかに鈍る。
まだ止まらない。
だが、
流れが変わり始めている。
管理人は静かに立ち上がる。
スーツの襟を整える。
「……さて」
目は鋭く、
覚悟は決まっている。
[太字]“ソノス”[/太字]は終わっていない。
ただ、
形を変えただけだ。
そして――
嵐は、
反転する。
窓の外は夜。
街の光がガラスに滲み、
まるで遠い歓声の残響のように揺れている。
デスクの上には、
いくつものモニター。
みんとの名前。
拡散された動画。
歪められた切り抜き。
悪意ある見出し。
「……やり方が、汚いな」
低く呟く。
感情は揺れていない。
怒りも焦りもない。
だが――静かに、芯が冷えていく。
通知の増加速度を確認する。
投稿元。
初動アカウント。
拡散の導線。
「……意図的だな」
自然発生ではない。
誰かが火をつけ、
風を送っている。
椅子にもたれ、
目を閉じる。
一瞬だけ、
過去がよぎる。
スポットライト。
黒とピンクの派手な衣装。
歓声。
ステージ中央に立つ自分。
[大文字][太字]“ソノス!”
[/太字][/大文字]
あの名を呼ぶ声。
胸を震わせる音圧。
観客の息遣い。
心を奪う支配感。
そして――
「……声」
小さく、
かすれる。
自分よりも澄んだ声。
自分よりも伸びる高音。
自分よりも、まっすぐな輝き。
それを知った日から。
ソノスは、
歌うのをやめた。
今はスーツ姿の[大文字][太字]“管理人”[/太字][/大文字]。
表の顔は、
裏方。
だが。
モニターに映るみんとの映像を見た瞬間、
胸の奥が、
わずかに疼いた。
「あの子は……潰させない」
指がスマホを取る。
登録されていない番号へ発信。
数コールの後、
繋がる。
「私だ」
声色は冷静で、
感情は抑制されている。
「例の件、そろそろ表に出す」
沈黙。
相手が息を飲む気配。
「証拠データは揃っている。拡散の初動アカウント、IP、依頼元の資金の流れも」
短く区切る。
「週刊に流せ。ただし、条件がある」
窓の外を見つめる。
「みんとの名前は出すな。狙われていた、という構図にする」
一拍。
「……そして」
少しだけ、
目を伏せる。
「[太字]“ソノス”[/太字]の名前を出せ」
電話の向こうがざわつく。
当然だ。
あの名は、
業界では今でも影を持つ。
「引退の理由も、含めて出せ」
静かに、
しかし揺るがず言う。
「私が消えたのは、後継を守るためだった、と」
それは半分真実で、
半分嘘。
いや――
今、
この瞬間に真実に変わる。
電話を切る。
部屋に沈黙が戻る。
デスクに置かれた古いマイク。
封印したはずの象徴。
管理人は、
それに指先で触れる。
「……まだ、歌えない」
けれど。
守ることはできる。
総長として。
裏で束ねる者として。
そして――
かつて[太字][大文字]“初代偶像”[/大文字][/太字]と呼ばれた存在として。
モニターに映るみんとの顔は、
不安と戦っている。
「君は、光でいろ」
低く、
優しく。
「闇は、私が引き受ける」
その瞬間。
モニターの通知増加が、
わずかに鈍る。
まだ止まらない。
だが、
流れが変わり始めている。
管理人は静かに立ち上がる。
スーツの襟を整える。
「……さて」
目は鋭く、
覚悟は決まっている。
[太字]“ソノス”[/太字]は終わっていない。
ただ、
形を変えただけだ。
そして――
嵐は、
反転する。
- 1.第一部 第零話 スタートライン手前にて
- 2.第一部 第一話 スタートラインに立ったもの
- 3.第一部 第二話 開始のブザーが鳴り
- 4.第一部 第三話 前傾姿勢になって。
- 5.第一部 第四話 もう一度?
- 6.第一部 第五話 採点室にて
- 7.第一部 第六話 歌い手に。 そして本当のスタートを前に。
- 8.第一部 最終話 説明会前日
- 9.第二部 第零話 静かな会議室にて
- 10.第二部 第一話 お披露目会
- 11.第二部 第二話 お披露目会・終了後
- 12.第二部 第三話 初舞台
- 13.第二部 第四話 朱、降臨
- 14.第二部 第五話 黄、すべてを照らす
- 15.第二部 第六話 声を並べる者たち
- 16.第二部 第七話 声を剥ぐ
- 17.第二部 第七・五話 身体は嘘をつかない
- 18.第二部 最終話 管理人の記録
- 19.第三部 第零話 週刊誌
- 20.第三部 第一話 予定外の光
- 21.第三部 第二話 知らされる星
- 22.第三部 第三話 星降る夜、未来を夢見る
- 23.第三部 チーム編成
- 24.第三部 第四話 チーム分けと練習、そして思い出
- 25.第三部 第五話 グループで発表会
- 26.第三部 第六話 如月の成長
- 27.第三部 第七話 みんとは。
- 28.第三部 第八話 如月の本音
- 29.第三部 第九話 火が付く
- 30.第三部 第十話 炎上
- 31.第三部 第十一話 お願い
- 32.第三部 最終話 管理人は。
- 33.第四部 第零話 声を捨てたもの
- 34.第四部 第一話 揺れる光
- 35.第四部 第二話 疑問を持つ者
- 36.第四部 第三話 新たな火種
- 37.第四部 第四話 崩れる夜
- 38.第四部 第五話 管理人の決断
- 39.第四部 最終話 継ぐ光
- 40.第五部 第零話 余光を見つめて
- 41.第五部 第一話 違和感
- 42.第五部 第2話 選ばれない側
- 43.第五部 第三話 管理人の視線
- 44.第五部 第四話 事件、そして―
- 45.第五部 最終話 光の交代
- 46.第六部 第零話 今年の光
- 47.第六部 第一話 光の隣で
- 48.第六部 第二話 崩れた予定
- 49.第六部 第三話 本音
- 50.第六部 第四話 ソノスの役目
- 51.第六部 最終話 光は、隣で
- 52.最後に。