[明朝体][中央寄せ]焼け落ちた街に、春は来るのだという。
瓦礫の隙間から、名もなき花が咲くのだという。
けれどその土は、
昨日まで誰かの胸だった。
子どもの靴が、片方だけ転がっている。
もう片方は、
もう歩く必要のない足と一緒に
黒く煤けた空の下で眠っている。
勝利を告げる旗がはためくたび、
誰かの母の祈りが、音もなく破れる。
英雄の名が刻まれる石の裏で、
呼ばれることのなかった名前が
灰になって風に混じる。
銃声は正義の言葉をまとうが、
弾丸はひらがなも知らない。
未来という文字も読めず、
ただ、柔らかいものを貫く。
愛している、と言いかけた唇が
砂にまみれて閉じるとき、
世界は少しだけ静かになる。
その静けさを、人は平和と呼ぶのか。
夜が明ける。
空は何もなかったように青い。
けれど朝日の中で、
見えない叫びがまだ燃えている。
それでも春は来るのだという。
灰を踏みしめながら、
私たちはまた、
同じ季節を繰り返す。[/中央寄せ][/明朝体]
瓦礫の隙間から、名もなき花が咲くのだという。
けれどその土は、
昨日まで誰かの胸だった。
子どもの靴が、片方だけ転がっている。
もう片方は、
もう歩く必要のない足と一緒に
黒く煤けた空の下で眠っている。
勝利を告げる旗がはためくたび、
誰かの母の祈りが、音もなく破れる。
英雄の名が刻まれる石の裏で、
呼ばれることのなかった名前が
灰になって風に混じる。
銃声は正義の言葉をまとうが、
弾丸はひらがなも知らない。
未来という文字も読めず、
ただ、柔らかいものを貫く。
愛している、と言いかけた唇が
砂にまみれて閉じるとき、
世界は少しだけ静かになる。
その静けさを、人は平和と呼ぶのか。
夜が明ける。
空は何もなかったように青い。
けれど朝日の中で、
見えない叫びがまだ燃えている。
それでも春は来るのだという。
灰を踏みしめながら、
私たちはまた、
同じ季節を繰り返す。[/中央寄せ][/明朝体]