文字サイズ変更

400閲覧!【参加〆切】時を食う怪盗の僕は、素人だらけの部活に潜り込み、誰にも気づかれずに日々を駆け抜ける

#13

第十話 月は出ない

夜は静かだった。

あまりにも静かすぎて、
逆に不安になるほどに。

文化財一時保管庫。
警備は最小限。
警察との連携も薄い。

だからこそ、
罠の匂いがする。

部室の空気は、
いつもより重かった。

「…今回は、時巣さんを前線から外します」

吹雪の声は、
穏やかで、
正確だった。

誰も驚かない。
けれど、
誰も軽くも受け取らない。

零は瞬きひとつせずに頷いた。

「了解。サブ回線と外周監視、担当します」

その声音に、
揺れはない。

宇宙がじっと零を見る。
西紀は空気を変えるように笑った。

「たまには俺らだけでやるのもアリっしょ!」

琉雨は机に頬をつけたまま、
ぼそりと。

「…右ルートは三分後に死角が消える。遅れたら終わり」

皐月が伸びをしながら言う。

「ほな今日は、うちらの実力試しやなぁ」

零はその輪から、
半歩だけ外れた位置に立っていた。

―出られない位置。

物理的にも、
立場的にも。

それが今回の試験だった。

吹雪は、
言外に示している。

“クロノスが現れないなら、
あなたは白に近づく”

零はそれを理解していた。

そして―

―受け入れていた。

任務開始
夜風が冷たい。

通信機越しに、
零の声が流れる。

「外周異常なし。北側、警備一名巡回開始」

琉雨が即座に返す。

「三歩後退。…今」

皐月が静かに移動する。

宇宙が監視カメラを無音で遮断。

西紀が軽い陽動を仕掛ける。

連携は滑らかだった。

クロノスがいなくても。

時間が、
歪まないまま進んでいく。

零は屋外からその流れを見ていた。

胸の奥が、少しだけざわつく。

―本当に、出なくていいのか。

ポケットの中には、黒いマスク。

指先が触れる。

その瞬間―

「っ…警備が予定より早い!」

西紀の声。

一瞬、
呼吸が止まる。

零の思考が、
反射で加速しかける。

0.8秒。

世界が、
ほんの少しだけ遅く見えた。

―今なら間に合う。

消えて、
移動して、
終わらせられる。

けれど。

零は目を閉じた。

そして、
普通の速度で言う。

「西紀先輩、棚三番。左足音、床鳴りする。右へ半歩」

一拍。

足音が逸れる。

警備員は気づかない。

事なきを得る。

零はそれ以上何もしない。

時間を奪わない。

世界を歪めない。

ただ、
仲間を信じる。

成功
回収完了。

警報なし。

追跡なし。

クロノスも、
現れない。

夜は、
最後まで静かだった。

撤退後、
屋上。

西紀が両手を広げる。

「やったぁああ!俺らだけでいけたじゃん!」

宇宙も珍しく素直だった。

「…連携は悪くなかった」

皐月はあくび混じりに笑う。

「うちの宇宙もようやったわぁ」

琉雨がゆっくり零を見る。

「…今日は、時間が普通だった」

その言葉が、
わずかに引っかかる。

吹雪が一歩前に出る。

「クロノスは現れなかった」

沈黙。

「つまり、内部観測者仮説は、現時点では否定的です」

零を見る。

「時巣さん、今日のあなたは―部員でした」

謝らない。

だが、
刃も向けない。

ただ、
事実だけを置く。

零は微笑む。

「それは光栄ですね」

疑念は、
消えた。

少なくとも、“表面上”は。

夜更け
校舎屋上。

誰もいない。

零は一人、
立っていた。

夜空には月がない。

ポケットから、
マスクを取り出す。

指先でなぞる。

今日、
出なかった理由は簡単だ。

仲間を信じた。

それだけだ。

「…必要なかった」

静かに呟き、
マスクをしまう。

風が吹く。

その瞬間。

遠く、
街の向こうで。

微かに赤色灯が瞬いた。

零の瞳が細くなる。

通信はない。

ニュースもまだ出ていない。

けれど。

胸騒ぎだけが残る。

―本当に、何もなかったのか?

クロノスが現れなかった夜。

だが。

“別の場所”で何かが起きていたとしたら?

零は夜を見つめる。

時間は、
確かに流れている。

誰にも奪われることなく。

それでも。

どこかで、
誰かが。

時間を喰らったかもしれない。

月は出ない。

静かな夜だった。

あまりにも、
静かすぎる夜だった。

作者メッセージ

ストック残り十話…!

つまり…

今週中にまた書かないとならないのDA☆


がんばります、では!

2026/02/17 18:01

コメント

この小説につけられたタグ

参加型怪盗異能力(?)一部笑いあり

通報フォーム

お名前
(任意)
Mailアドレス
(任意)

※入力した場合は確認メールが自動返信されます
違反の種類 ※必須 ※ご自分の小説の削除依頼はできません。
違反内容、削除を依頼したい理由など※必須

盗作されたと思われる作品のタイトル

どういった部分が元作品と類似しているかを具体的に記入して下さい。

※できるだけ具体的に記入してください。

《記入例》
・3ページ目の『~~』という箇所に、禁止されているグロ描写が含まれていました
・「〇〇」という作品の盗作と思われます。登場人物の名前を変えているだけで●●というストーリーや××という設定が同じ
…等

備考欄
※伝言などありましたらこちらへ記入
メールフォーム規約」に同意して送信しますか?※必須
タイトル
URL

この小説の著作権はKanonLOVE しばらく活動休止中さんに帰属します

TOP