文字サイズ変更

400閲覧!【参加〆切】時を食う怪盗の僕は、素人だらけの部活に潜り込み、誰にも気づかれずに日々を駆け抜ける

#2

第一話 幻影という名の部活

時間は、
平等だ。

誰にとっても、
同じ速さで流れている。

―そう思っている人間にとっては。

僕の名前は、
時巣零。

高校一年。

部活未所属。

理由は単純だ。

無駄なことに時間を使いたくない。

それだけ。

「零ぃぃぃぃ」

朝の廊下に、
間延びした声が響く。

この声だけは、
時間の流れを遅くする。

黒十寺葵。

僕の幼馴染。

黒髪ショート、
水色の瞳、
丸眼鏡。
常に少し眠そうな顔。

「おはよ……あ゙ー、今から学校?面倒くさすぎて、もう帰りたいんだけどぉ」

「もう校内」

「え゙ぇ゙ェ゙ェ゙ェ゛ェ゛…まじかぁ」

彼は僕の肩に寄りかかる。

重い。

「零さ、部活入らないの?」

「入らない」

「即答すぎん?」

「考えるまでもない」

葵はスマホを見ながら言う。

「ん、何?…ごめん、ネットで猫の動画見てて一ミリも聞いてなかった」

「聞いてないなら話しかけるな」

「いや聞いてたって。零がヒマって話でしょ?」

ヒマではない。

効率的なだけだ。

「とにかくさ」

葵は突然、僕の前に回り込む。

「今日、部室来て」

「断る」

「拒否権ないから」

嫌な予感。

「もう入部届け出しといたし」

沈黙。

「誰の」

「零の」

即答。

「却下」

「顧問のハンコも押してある」

……面倒だ。

「幻影遊戯部」

葵はにやにやする。

「マジックとかパフォーマンスやる部活。学園祭で人気らしいよ」

マジック。

くだらない。

手品だろう。

「零、手先器用じゃん」

「普通」

「運動神経もいいし」

「普通」

「目つき怪盗っぽいし」

「……最後なんだ」

「褒め言葉」

絶対違う。

「来なかったら、小学校の黒歴史ばらす」

「行く」

脅迫だ。

完全に。


[水平線]
放課後。

旧校舎三階。

『幻影遊戯部』

カラフルな文字で書かれたプレート。

中からゆるい声。

「入ってええで〜」

葵に背中を押され、
部室へ。

そこは―

トランプ。
シルクハット。
鳩の模型。
舞台用ライト。
ロープ。
大道具。

完全に、
手品部だ。

部室中央に立つ男。

朱と白のメッシュ、
さらさらロングのポニーテール。

「おー、自分が例の零くんか」

関西弁がやたら濃い。

「あー僕は皐月や、よろしゅう〜」

眠そうな目。

でも、どこか舞台人のような空気を纏っている。

「ここはな、エンタメ部や」

「エンタメ」

「人を騙して楽しませる部活や」

言い方が若干ひっかかる。

「安心せえ。ちゃんと健全や」

葵がうなずく。

「学園祭の目玉なんだよぉ」

皐月がトランプを一組取り出す。

「ほな、歓迎マジックや」

シャッフル。

指が滑る。

カードが宙に舞う。

次の瞬間。

すべて揃っている。

無駄がない。

静かすぎる動き。

僕は無意識に分析していた。

重心移動。
指圧。
視線誘導。

「どうや?」

皐月が笑う。

「普通」

僕は言う。

でも。

ほんのわずかに思う。

―悪くない。

「ほな零くんもやってみ」

トランプを渡される。

面倒だ。

でも。

断る理由もない。

僕は軽くシャッフルする。

ただ、それだけ。

ほんの数秒。

気づけばカードは、完璧に整列していた。

静かに。

音もなく。

時間の隙間に滑り込むように。

沈黙。

葵が口を開ける。

「……え?」

皐月の目が、細くなる。

「今、なんかした?」

「普通に混ぜただけ」

事実だ。

少しだけ速く。
少しだけ正確に。

それだけ。

皐月は、ゆっくり笑う。

「…ええやん」

その目は、
面白い玩具を見つけた子供の目だった。

「決まりや。零、正式入部な」

「断る権利は」

「ないで」

葵が拍手する。

「ようこそ〜」

時間が、
また一つ削られた。

無駄な部活。

無駄な放課後。

なのに。

少しだけ。

ほんの少しだけ。

退屈ではないと感じている自分がいる。

まだ僕は知らない。

この部活が、
ただのマジック部では終わらないことを。

そして。

彼らも知らない。

本物の怪盗が、
すでにここにいることを。

作者メッセージ

とりあえず部活に(半)(というのは嘘)強制的に入部させることが出来たぞ!

まあ、次は部活の本性を暴くか…

ということで!

2026/02/13 00:02

コメント

この小説につけられたタグ

参加型怪盗異能力(?)一部笑いあり

通報フォーム

お名前
(任意)
Mailアドレス
(任意)

※入力した場合は確認メールが自動返信されます
違反の種類 ※必須 ※ご自分の小説の削除依頼はできません。
違反内容、削除を依頼したい理由など※必須

盗作されたと思われる作品のタイトル

どういった部分が元作品と類似しているかを具体的に記入して下さい。

※できるだけ具体的に記入してください。

《記入例》
・3ページ目の『~~』という箇所に、禁止されているグロ描写が含まれていました
・「〇〇」という作品の盗作と思われます。登場人物の名前を変えているだけで●●というストーリーや××という設定が同じ
…等

備考欄
※伝言などありましたらこちらへ記入
メールフォーム規約」に同意して送信しますか?※必須
タイトル
URL

この小説の著作権はKanonLOVE しばらく活動休止中さんに帰属します

TOP