文字サイズ変更

完結しました【参加〆切】あなたは何の宝石ですか?話を聞かせてください。

#10

インディゴライトトルマリン 深い蒼は、誰のために輝く

その町は、
明るかった。

人の声が絶えず、
笑顔が多く、
誰もが彼女の名前を知っている。

「雪乃ちゃん、すごいね!」
「乙冬なら大丈夫でしょ?」
「期待してるよ」

その中心に、
青いセーラー服の少女がいた。

背筋は伸び、
笑顔は完璧。
可愛らしさの中に、
どこか整いすぎた美しさがある。

「ふふ、みんなすごいっ!」

鈴のような声でそう言って、
乙冬は小さく手を振る。

「私も頑張るから、見ててねっ!」

その指には、
インディゴライトトルマリンの指輪が光っていた。
深く澄んだ青。
夜に沈む前の、
静かな海の色。

町を抜けたところで、
魔女は乙冬に声をかけた。

「少し、休まない?」

乙冬は一瞬きょとんとしてから、
すぐに笑う。

「大丈夫です!
私、まだできますから」

「[太字]“できる”[/太字]かどうかじゃないの」

魔女は、
まっすぐ彼女を見る。

「[太字]“したい”[/太字]かどうかよ」

乙冬の足が、止まった。

「…したい、です」

反射的な答え。
でも、
声は少し震えていた。

「あなた、好かれているわね」

「はい!」

即答。
でも、
ぎゅっと指輪を握る。

「みんな、優しいんです。
だから…」

だから、
裏切れない。

その言葉は、
口に出なかった。

魔女は、
静かに続ける。

「期待されるの、怖くない?」

乙冬は、笑ったまま答えようとして—
崩れた。

「…っ」

唇が震える。

「もうやめてっ、
これ以上、期待しないでよっ…!」

声が、
こぼれ落ちる。

「頑張らないと、
失望させないように…」

乙冬は、
膝を抱える。

「私、みんなに好かれてるから…
[太字]“できない”[/太字]って言えないんです」

インディゴライトトルマリンの青が、
一瞬、
濃く沈んだ。

「笑ってないと、
期待に応えないと、
私じゃなくなる気がして…」

それは、
15歳の心には重すぎる。

魔女は、
乙冬の前にしゃがむ。

「インディゴライトトルマリンはね」

指輪を見る。

[太字][大文字][明朝体]「“真実の声”の石」
[/明朝体][/大文字][/太字]
乙冬は、顔を上げる。

「喉に詰まった言葉、
本当は言いたかった気持ち。

それを、
無かったことにしない色なの」

青は、
深い。
でも、
冷たくはない。

「あなたが頑張らなくても」

魔女は、
はっきり言う。

「失望する人ばかりじゃない」

乙冬の目から、
涙が落ちる。

「…でも」

「それでも、失う人はいるかもしれない」

残酷なほど正直に。

「でもね」

魔女は続ける。

「それは、“あなたが悪い”からじゃない」

「期待は、相手のものよ」

インディゴライトトルマリンが、
静かに、
澄んだ青に戻る。

「…私」

乙冬は、
息を整える。

「全部には、応えられない」

震えながらも、
言う。

「でも…
それでも、ここにいていいですか」

魔女は、
うなずく。

「ええ。
あなたが声を持つ限り」

別れ際。

乙冬は、
まだ少し不安そうに笑う。

「私、また頑張っちゃうかも」

「それでもいい」

魔女は答える。

「でも、
“やめたい”って言える場所を、
忘れないで」

指輪の青が、
夜明け前の海のように、
静かに光る。

期待のためだけじゃない、
自分の声の色で。

作者メッセージ

インディゴライトトルマリン
インディゴライトトルマリンは、深く濃い青をたたえる宝石です。
その色は、静けさの中に強さを宿し、揺らぎながらも確かに輝く光を秘めています。

この宝石には「誠実」「真実」「自分を見失わない心」という意味が込められています。
人に好かれること、期待に応えること——
その重さは、ときに心を押しつぶしかねません。
それでもなお、真っすぐであろうとする意志が、
この深い青に映し出されるのです。

インディゴライトトルマリンは、
強くあれ、と迫る石ではありません。
疲れたときに立ち止まり、涙をこぼしても、
それを決して否定しない色。

どうか、あなたが自分の声を見失わず、
誰かの期待に応えようとするその勇気と、
時にためらう心の両方を抱きしめながら歩けますように。
青は、あなたの誠実さと、真実を映す光です。

2026/02/10 00:00

コメント

この小説につけられたタグ

宝石感情感動

通報フォーム

お名前
(任意)
Mailアドレス
(任意)

※入力した場合は確認メールが自動返信されます
違反の種類 ※必須 ※ご自分の小説の削除依頼はできません。
違反内容、削除を依頼したい理由など※必須

盗作されたと思われる作品のタイトル

どういった部分が元作品と類似しているかを具体的に記入して下さい。

※できるだけ具体的に記入してください。

《記入例》
・3ページ目の『~~』という箇所に、禁止されているグロ描写が含まれていました
・「〇〇」という作品の盗作と思われます。登場人物の名前を変えているだけで●●というストーリーや××という設定が同じ
…等

備考欄
※伝言などありましたらこちらへ記入
メールフォーム規約」に同意して送信しますか?※必須
タイトル
URL

この小説の著作権はKanonLOVE しばらく活動休止中さんに帰属します

TOP