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完結しました【参加〆切】あなたは何の宝石ですか?話を聞かせてください。

#8

トルマリン ちいさな約束は、七色にひかる

道の途中で、
魔女は立ち止まった。

足元に、
何かが転がっている。

ころん、
と。

小さくて、
きらきらしていて、
まるで落としたお菓子みたいだった。

「…あっ!」

高い声がして、
次の瞬間、
ぱたぱたと足音が近づく。

「それ、とるるのー!」

淡いピンクとミントグリーンのワンピース。
ふわっと広がるスカートの裾を押さえながら、
女の子が小さな宝石を抱きしめる。

「よかったぁ…なくなったら、すっごくこまるんだよ?」

胸元には、
小さなブローチ。
そして、
ぎゅっと握られているのは、
欠けたトルマリンのかけら。

「私は、とるる!
トルマリンなんだよ〜!きらきらでしょ?」

魔女は、
思わず微笑んだ。

「ひとりで来たの?」

「うん!」

即答だった。

「でもね、さみしくないよ!
だって、みんなのこと、ここで思ってるもん!」

とるるは、
自分の胸を指さす。

「ここにね、
○○ちゃんも、○○くんも、
おにいちゃんも、おねえちゃんも、いるの!」

魔女は、
しゃがんで目線を合わせる。

「…それは、強いわね」

「えへへ、そうかな?」

でも、
すぐに、
とるるの表情が曇る。

「でもね…」

小さな声。

「とるる、
ちゃんと役に立ててるのかなぁ、って
ときどき、思うの」

トルマリンのかけらが、
七色に、
ほんのり光った。

「とるるね」

指先でもじもじしながら言う。

「みんながけんかすると、
いやなの。
かなしくなっちゃうの。

でも、どうしたらいいか、
わかんなくて…」

魔女は、
しばらく黙っていた。

そして、
静かに聞く。

「それでも、ここに来たのね」

「うん!」

また、
すぐ笑顔になる。

「だって、約束だから!」

「誰との?」

「みんなと!」

胸を張る。

「とるる、
みんなをえがおにする宝石になるって、
決めたの!」

魔女は、
とるるの手の中を見る。

欠けた、
小さなトルマリン。

「そのかけら、大切なのね」

「うん!いちばん!」

「どうして?」

とるるは、
少し考えてから言った。

「これね、
とるるが生まれたときに、
ぽろって、かけちゃったんだって。

でもね、
なくならなかったから」

にこっと笑う。

「とるる、
ちゃんと、ここにいるんだよ」

その言葉に、
魔女の目が、
ほんの少し柔らぐ。

「ねえ、魔女さん!」

「なに?」

「とるるね、
ちいさいし、ドジだし、
すぐしょんぼりするけど…」

ぎゅっと、かけらを握る。

「それでも、
だれかに[太字][大文字][明朝体]『ありがとう』[/明朝体][/大文字][/太字]って言われたら、
また、がんばれるの!」

魔女は、
そっと言った。

「それはね、
光を分ける力よ」

「え?」

[太字][大文字][明朝体]「トルマリンは、
ひとつの色じゃない宝石」
[/明朝体][/大文字][/太字]
七色にきらめく。

「だから、
誰かの気持ちに合わせて、
色を変えられる」

とるるの目が、
ぱあっと輝く。

「ほんと!?」

「ええ。
それは、とても難しくて、
とても優しいこと」

しばらくして。

「…とるる、ここにいる!」

急に言う。

「みんなが、
また笑いたくなったとき、
すぐ、ぎゅーってできるように!」

魔女は、
うなずいた。

「ええ。
あなたがいるだけで、
救われる人もいるわ」

「えへへ…」

照れたように笑う。

「じゃあね、魔女さん!」

「ええ。約束は、生きているわ」

魔女が歩き出すと、
背中から、
声が聞こえた。

「とるる、がんばるよ!
だって、約束だもん!」

小さな光が、
七色に、
やさしく揺れていた。

欠けていても。
ちいさくても。
すぐ泣いてしまっても。

トルマリンは、
誰かの心と心をつなぐ。

それだけで、
もう十分に、
宝石なのだから。

作者メッセージ

トルマリンは、
ひとつの色に定まらない宝石である。
光を受けるたび、
ピンクにも、グリーンにも、
ときには七色にきらめきながら、
そのどれもを否定しない。

この宝石には、
「優しさ」「調和」「共感」という意味が与えられてきた。
誰かの気持ちに寄り添うこと、
すぐ泣いてしまうこと、
思ったことをそのまま口にしてしまうこと——
それらは、弱さではなく、
心がひらいている証でもある。

トルマリンは、
強くなることを求める石ではない。
一人で立つことを、美徳にもしない。
誰かと一緒に笑いたい、
誰かの悲しさを分け合いたい、
その小さな願いを、まっすぐ肯定する光だ。

だからこの宝石は、
「つながり」や「約束」、
そして「役に立ちたいと願う心」を象徴する。
たとえ欠けていても、
たとえちいさくても、
その輝きは、すでに誰かを照らしている。

完璧じゃなくていい。
すぐ元気がなくなってもいい。
それでも、誰かを想う気持ちがあるなら、
トルマリンは、ちゃんと光っている。

どうか、
トルマリンのやさしい七色と、
「一緒にいたい」と願う心のご加護が、
あなたのもとにありますように。

2026/02/09 06:10

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