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900閲覧!!【完結いたしました!】 憧れのアイドル―偶像と同じステージに立つ日まで―勝つか、消えるか、歌い手としての最初の一歩

#12

第二部 第三話 初舞台

お披露目会から一日たった。
またあのステージに私は立つ。

―と、その前に。

ステージ袖は、
思ったよりも狭かった。

黒いカーテンの向こうから、
客席のざわめきが、
波みたいに押し寄せてくる。

…いる。

人が。
たくさん。

「…」

みんとは、
靴の先を揃えて、
落ち着きなく体を揺らしている。

如月は、
壁に背中を預けて、
天井を見上げていた。

「…静かだね」

みんとが、
小さく言う。

「本番前って、
 いつもこうなの?」

「…分かんない」

うちは、
正直に答えた。

こんな場所、
初めてだ。

袖の床は、
少し冷たい。

足の裏から、
現実が伝わってくる。

ここで、
歌うんだ。

Aster Codeとして。

三人で。

「ね」

みんとが、
こちらを見る。

「逃げたい?」

一瞬、
言葉に詰まる。

「…ちょっとだけ」

本音。

如月が、
ふっと笑った。

「それでいいと思いますよ。

逃げたいくらいが、
ちょうどいい。

逃げたら、
ここにいないでしょうし」

…確かに。

照明が、
一段階落ちる。

アナウンスが、
遠くで始まった。

「次のステージ、
準備お願いします」

スタッフの声。

心臓が、
一気に早くなる。

「…ゆめ」

如月が、
こちらを見る。

「最初の音、
任せました」

「…うん」

喉が、
きゅっと鳴る。

みんとが、
拳を軽く握って、
小さく跳ねる。

「よしっ!

失敗しても、
死なないし!」

「…それ、
フォローになってる?」

「なってるなってる!」

少し、
笑える。

その瞬間、
袖の空気が、
ほんの少し緩んだ。

…大丈夫。

一人じゃない。

三人で、
ここに立ってる。

幕の隙間から、
光が漏れる。

白くて、
強い。

「…行くよ」

スタッフが、
合図を出す。

三人、
並ぶ。

足先が、
ラインにかかる。

この一歩で、
戻れなくなる。

でも。

如月が、
静かに言った。

「―歌いましょう」

その言葉で、
覚悟が、
胸に落ちた。

カーテンが、
開く。

まだ、
声は出していない。

でも。

もう、
歌は―
始まっていた。


イントロ。

低く、澄んだシンセ音が、
会場に一筋の線を引く。

照明は、
まだ落ちたまま。

カウントが入る。

―3、2、1。

一歩、前へ。

ライトが点く。


胸の前で、
そっと手を重ねる振り。

視線は、
客席の奥へ。

息を吸って―
歌う。

♪「まだ名前も 形も
風に溶けたままだけど
それでも今 ここに立つ
声が 答えになるから」♪

高音は、
無理に張らない。

水面みたいに、
まっすぐ伸ばす。

…聞こえてる。

自分の声が、
スピーカーを通して、
世界に出ていく。


ゆめの声に重なるように、
みんとが前へ出る。

ステップは軽く、
でも大きく。

肩から腕へ、
波を描くような動き。

♪「転んだって 笑えばいい
ほら 前はまだ続いてる
怖いのは 夢が
ほんものになる瞬間」♪

サビ前、
みんとは小さくジャンプ。

着地と同時に、
身体をひねる。

その動きに、
歓声が混じる。


照明が、
一段暗くなる。

如月が、
影から出てくる。

片手を伸ばし、
指先で空を切る。

♪「信じるって 簡単で
壊すのは もっと簡単で
それでも 嘘のない
声だけは ここにある」♪

声は低く、
少し掠れて。

物語を語るみたいに。

…引き込まれる。

三人の声が、
絡み始める。

照明が、
一気に開く。

三人、
横一列。

足を揃えて―
踏み出す。

♪「重ねた声が 道になる
迷っても 戻らない
まだ知らない 明日へ
いま 歌うよ
―Aster Code」♪

振り付けは、
シンプルだけど揃っている。

手を胸へ。
前へ伸ばす。
最後に、
三人で同じ方向を見る。

…揃ってる。

客席の空気が、
変わるのが分かる。



音が一度、
切れる。

次の瞬間。

みんとが、
一歩前。

バク転―
綺麗に決まる。

歓声。

そこから、
如月が滑るように回り、
腕で線を描く。

最後に、
ゆめが中心に戻る。

三人で、
円を作る。

♪「失くしたって いい
それでも 歌う
声がある限り
終わらない
いま ここから
始まるんだ」♪

最後の音。

三人で、
声を揃える。

♪「―Aster Code」♪

音が、
止まる。

一拍。

…拍手。

波みたいな音。

ライトが、
ゆっくり落ちる。

胸が、
熱い。

…歌えた!

ステージの端で、
管理人さんが、
じっとこちらを見ている。

その目は、
厳しいまま。

でも―
どこか、
懐かしそうだった。

カーテンが、
閉じる。

息を吐く。

「…終わった」

「生きてる…!」

みんとが、
笑う。

如月は、
静かに言った。

「―悪くない初手、ですね」

うちは、
胸に手を当てる。

まだ、
始まったばかり。

でも。

Aster Codeの声は、
確かに―
この舞台に刻まれた。
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作者メッセージ

こんな感じでやっていこうと思います!

今やっていこと思いますって打ってたら
「殺っていこうと思います」
ってでたな、
物騒だ。


曲に関するリクエスト等もできればコメントしてください!

では!

2026/02/03 00:00

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