ステージを降りた瞬間、
足の力が一気に抜けた。
…終わった。
ライトも、
拍手も、
まだ耳の奥で鳴っている。
「はぁ…」
みんとが、
思いきり息を吐く。
「生きてる…?」
「…多分」
如月は、
どこか楽しそうにそう言った。
その時。
ざわ、
とスタッフの動きが一瞬だけ変わる。
「…来た?」
誰かが、
小さく言った。
次の瞬間、
空気が変わる。
カツ、
カツ、
と―下駄の音。
「お疲れさま」
落ち着いた、
やわらかい声。
振り向くと、
そこにいたのは―
朱色。
黒のさらさらなロングに、
朱のメッシュ。
膝近くまである三つ編みが、
ゆっくり揺れている。
「…十朱、みや」
思わず、
声に出てしまった。
現役偶像。
歌い手グループの“顔”。
「ふふ。そんなに身構えなくていいよ」
十朱みやは、
穏やかに微笑んだ。
「今日は、
いいお披露目だった。
三人とも、
ちゃんと立ててた」
それだけ。
評価でも、
助言でもない。
ただ、
事実みたいに。
「…ありがとうございます」
うちが頭を下げると、
みやさんは、少しだけ慌てた。
「あ、いや、
そこまでかしこまられると
僕がドジったみたいになるから…」
そう言って、
裾を踏みかけて、
一瞬ふらっとする。
「っ…」
「だ、大丈夫!?」
「だいじょぶ、だいじょぶ…たぶん」
完璧で、
でも少し抜けている。
それだけで、
“本物だ”って分かる。
そして。
「いや〜!!」
今度は、
全然違う温度の声。
「若い!眩しい!
フレッシュって罪〜!!」
振り向くと、
そこには―
太陽みたいな存在。
長身で、
黄色がよく似合う。
絢香奇 麗。
「カメラさぁ、
こっちにも来てるでしょ?」
案の定、
一気に増えるフラッシュ。
「今日さ、
本当はもう一人来る予定だったんだけど」
麗が、
親指で後ろを指す。
「仕事立て込んでてね〜
“代わりによろしく”だってさ」
それでも。
みやさんと、
麗さんだけで―
カメラは十分すぎるほど向けられていた。
「で」
麗が、
三人を見る。
「君たちが、
今年の“並べられた子たち”ね?」
軽い。
でも、
全部見抜いてる目。
「ま、難しく考えなくていいよ」
ぽん、と
軽く手を叩く。
「今日は、
ちゃんと“世に出た”。
それだけで、
百点!」
「これから先?」
肩をすくめて、
笑う。
「地獄も天国もあるけど
―楽しいよ」
それだけ言って、
ひらひらと手を振る。
「じゃ、
主役は忙しいでしょ?」
「またね、Aster Code!」
みやさんも、
小さく頷いた。
「無理しすぎないで」
「声は、
大事に」
二人は、
スタッフとカメラに囲まれながら、
その場を離れていく。
残された三人。
「…すごかったね」
みんとが、
ぽつりと言う。
「…うん」
如月は、
少しだけ笑った。
「でも」
「ちゃんと、
見られてましたね」
うちは、
拳をぎゅっと握る。
見られた。
―もう、
戻れない。
でも。
それでいい。
Aster Codeとしての一歩は、
確かに、
踏み出せていた。
足の力が一気に抜けた。
…終わった。
ライトも、
拍手も、
まだ耳の奥で鳴っている。
「はぁ…」
みんとが、
思いきり息を吐く。
「生きてる…?」
「…多分」
如月は、
どこか楽しそうにそう言った。
その時。
ざわ、
とスタッフの動きが一瞬だけ変わる。
「…来た?」
誰かが、
小さく言った。
次の瞬間、
空気が変わる。
カツ、
カツ、
と―下駄の音。
「お疲れさま」
落ち着いた、
やわらかい声。
振り向くと、
そこにいたのは―
朱色。
黒のさらさらなロングに、
朱のメッシュ。
膝近くまである三つ編みが、
ゆっくり揺れている。
「…十朱、みや」
思わず、
声に出てしまった。
現役偶像。
歌い手グループの“顔”。
「ふふ。そんなに身構えなくていいよ」
十朱みやは、
穏やかに微笑んだ。
「今日は、
いいお披露目だった。
三人とも、
ちゃんと立ててた」
それだけ。
評価でも、
助言でもない。
ただ、
事実みたいに。
「…ありがとうございます」
うちが頭を下げると、
みやさんは、少しだけ慌てた。
「あ、いや、
そこまでかしこまられると
僕がドジったみたいになるから…」
そう言って、
裾を踏みかけて、
一瞬ふらっとする。
「っ…」
「だ、大丈夫!?」
「だいじょぶ、だいじょぶ…たぶん」
完璧で、
でも少し抜けている。
それだけで、
“本物だ”って分かる。
そして。
「いや〜!!」
今度は、
全然違う温度の声。
「若い!眩しい!
フレッシュって罪〜!!」
振り向くと、
そこには―
太陽みたいな存在。
長身で、
黄色がよく似合う。
絢香奇 麗。
「カメラさぁ、
こっちにも来てるでしょ?」
案の定、
一気に増えるフラッシュ。
「今日さ、
本当はもう一人来る予定だったんだけど」
麗が、
親指で後ろを指す。
「仕事立て込んでてね〜
“代わりによろしく”だってさ」
それでも。
みやさんと、
麗さんだけで―
カメラは十分すぎるほど向けられていた。
「で」
麗が、
三人を見る。
「君たちが、
今年の“並べられた子たち”ね?」
軽い。
でも、
全部見抜いてる目。
「ま、難しく考えなくていいよ」
ぽん、と
軽く手を叩く。
「今日は、
ちゃんと“世に出た”。
それだけで、
百点!」
「これから先?」
肩をすくめて、
笑う。
「地獄も天国もあるけど
―楽しいよ」
それだけ言って、
ひらひらと手を振る。
「じゃ、
主役は忙しいでしょ?」
「またね、Aster Code!」
みやさんも、
小さく頷いた。
「無理しすぎないで」
「声は、
大事に」
二人は、
スタッフとカメラに囲まれながら、
その場を離れていく。
残された三人。
「…すごかったね」
みんとが、
ぽつりと言う。
「…うん」
如月は、
少しだけ笑った。
「でも」
「ちゃんと、
見られてましたね」
うちは、
拳をぎゅっと握る。
見られた。
―もう、
戻れない。
でも。
それでいい。
Aster Codeとしての一歩は、
確かに、
踏み出せていた。
- 1.第一部 第零話 スタートライン手前にて
- 2.第一部 第一話 スタートラインに立ったもの
- 3.第一部 第二話 開始のブザーが鳴り
- 4.第一部 第三話 前傾姿勢になって。
- 5.第一部 第四話 もう一度?
- 6.第一部 第五話 採点室にて
- 7.第一部 第六話 歌い手に。 そして本当のスタートを前に。
- 8.第一部 最終話 説明会前日
- 9.第二部 第零話 静かな会議室にて
- 10.第二部 第一話 お披露目会
- 11.第二部 第二話 お披露目会・終了後
- 12.第二部 第三話 初舞台
- 13.第二部 第四話 朱、降臨
- 14.第二部 第五話 黄、すべてを照らす
- 15.第二部 第六話 声を並べる者たち
- 16.第二部 第七話 声を剥ぐ
- 17.第二部 第七・五話 身体は嘘をつかない
- 18.第二部 最終話 管理人の記録
- 19.第三部 第零話 週刊誌
- 20.第三部 第一話 予定外の光
- 21.第三部 第二話 知らされる星
- 22.第三部 第三話 星降る夜、未来を夢見る
- 23.第三部 チーム編成
- 24.第三部 第四話 チーム分けと練習、そして思い出
- 25.第三部 第五話 グループで発表会
- 26.第三部 第六話 如月の成長
- 27.第三部 第七話 みんとは。
- 28.第三部 第八話 如月の本音
- 29.第三部 第九話 火が付く
- 30.第三部 第十話 炎上
- 31.第三部 第十一話 お願い
- 32.第三部 最終話 管理人は。
- 33.第四部 第零話 声を捨てたもの
- 34.第四部 第一話 揺れる光
- 35.第四部 第二話 疑問を持つ者
- 36.第四部 第三話 新たな火種
- 37.第四部 第四話 崩れる夜
- 38.第四部 第五話 管理人の決断
- 39.第四部 最終話 継ぐ光
- 40.第五部 第零話 余光を見つめて
- 41.第五部 第一話 違和感
- 42.第五部 第2話 選ばれない側
- 43.第五部 第三話 管理人の視線
- 44.第五部 第四話 事件、そして―
- 45.第五部 最終話 光の交代
- 46.第六部 第零話 今年の光
- 47.第六部 第一話 光の隣で
- 48.第六部 第二話 崩れた予定
- 49.第六部 第三話 本音
- 50.第六部 第四話 ソノスの役目
- 51.第六部 最終話 光は、隣で
- 52.最後に。