控室の鏡に映る自分は、
いつもより少しだけ、
よそ行きの顔をしていた。
水色の衣装。
いつものうち、だけど―
もう、
ただの研修生じゃない。
「…大丈夫?」
みんとが、
こちらを覗き込む。
「う、うん」
本当は、
大丈夫じゃない。
如月は、
少し離れたところで、
腕を組んだまま壁にもたれている。
その表情は読めない。
でも、
知っている。
―今日、何が起こるのか。
管理人さんから、
事前に伝えられていた。
三人で、
ユニットを組むこと。
それが、
このお披露目会の“前提”。
ランダムでも、
試しでもない。
「今年は、
最初から“並べる”」
そう言われた時、
うちは、
返事ができなかった。
スタッフの合図。
「行きます」
幕の向こうから、
ざわめきと光が流れ込む。
ステージに出た瞬間、
視界が白くなる。
…人、こんなに。
客席。
カメラ。
配信ランプ。
声を出す前に、
見られている。
司会の声が響く。
「本日は、
新たに選ばれた歌い手たちの
お披露目会へようこそ」
拍手。
胸が、
きゅっと鳴る。
「まずご紹介するのは、
今回の制度の中でも、
最初からユニットとして
育成されてきた三名です」
―来た。
名前が呼ばれる。
神谷ゆめ。
仰凪みんと。
如月。
三人で、
一歩前へ。
ライトが、
真正面から当たる。
「彼女たちは、
それぞれ異なる個性と武器を持ちながら、
一つの声として
世に出ることを選びました」
司会が、
少しだけ間を置く。
「ユニット名は―」
息を止める。
「『Aster Code(アスター・コード)』」
その瞬間、
背中に、
何かが落ちた気がした。
アスター。
花言葉は、
“信じる心”。
コード。
声、旋律、
繋がり。
…名前、もう背負ってるんだ。
「透明な高音と低音を併せ持つ声。
身体能力に裏打ちされた表現力。
人を惹きつけ、物語を作る存在感。
三人でなければ成立しない、
ユニットです」
拍手が、
一段大きくなる。
みんとが、
緊張したまま笑う。
如月は、
観客席を見渡し、
ほんの少しだけ、
目を細めた。
うちは―
前を見て、
頭を下げる。
「…神谷ゆめです」
声は、
震えていなかった。
「Aster Codeとして、
歌います」
隣で、
みんとが続く。
如月も、
短く、
でもはっきりと名乗った。
三人並んで、
ステージに立つ。
個人名より先に、
ユニット名が知られる。
それは、
守られている証でもあり―
逃げられない証でもある。
ここからは、
一人じゃない。
でも。
…一人じゃ、
いられない。
光の中で、
「Aster Code」は、
初めて世間に名前を刻んだ。
まだ、
何者でもないまま。
でも確かに、
始まってしまった。
いつもより少しだけ、
よそ行きの顔をしていた。
水色の衣装。
いつものうち、だけど―
もう、
ただの研修生じゃない。
「…大丈夫?」
みんとが、
こちらを覗き込む。
「う、うん」
本当は、
大丈夫じゃない。
如月は、
少し離れたところで、
腕を組んだまま壁にもたれている。
その表情は読めない。
でも、
知っている。
―今日、何が起こるのか。
管理人さんから、
事前に伝えられていた。
三人で、
ユニットを組むこと。
それが、
このお披露目会の“前提”。
ランダムでも、
試しでもない。
「今年は、
最初から“並べる”」
そう言われた時、
うちは、
返事ができなかった。
スタッフの合図。
「行きます」
幕の向こうから、
ざわめきと光が流れ込む。
ステージに出た瞬間、
視界が白くなる。
…人、こんなに。
客席。
カメラ。
配信ランプ。
声を出す前に、
見られている。
司会の声が響く。
「本日は、
新たに選ばれた歌い手たちの
お披露目会へようこそ」
拍手。
胸が、
きゅっと鳴る。
「まずご紹介するのは、
今回の制度の中でも、
最初からユニットとして
育成されてきた三名です」
―来た。
名前が呼ばれる。
神谷ゆめ。
仰凪みんと。
如月。
三人で、
一歩前へ。
ライトが、
真正面から当たる。
「彼女たちは、
それぞれ異なる個性と武器を持ちながら、
一つの声として
世に出ることを選びました」
司会が、
少しだけ間を置く。
「ユニット名は―」
息を止める。
「『Aster Code(アスター・コード)』」
その瞬間、
背中に、
何かが落ちた気がした。
アスター。
花言葉は、
“信じる心”。
コード。
声、旋律、
繋がり。
…名前、もう背負ってるんだ。
「透明な高音と低音を併せ持つ声。
身体能力に裏打ちされた表現力。
人を惹きつけ、物語を作る存在感。
三人でなければ成立しない、
ユニットです」
拍手が、
一段大きくなる。
みんとが、
緊張したまま笑う。
如月は、
観客席を見渡し、
ほんの少しだけ、
目を細めた。
うちは―
前を見て、
頭を下げる。
「…神谷ゆめです」
声は、
震えていなかった。
「Aster Codeとして、
歌います」
隣で、
みんとが続く。
如月も、
短く、
でもはっきりと名乗った。
三人並んで、
ステージに立つ。
個人名より先に、
ユニット名が知られる。
それは、
守られている証でもあり―
逃げられない証でもある。
ここからは、
一人じゃない。
でも。
…一人じゃ、
いられない。
光の中で、
「Aster Code」は、
初めて世間に名前を刻んだ。
まだ、
何者でもないまま。
でも確かに、
始まってしまった。
- 1.第一部 第零話 スタートライン手前にて
- 2.第一部 第一話 スタートラインに立ったもの
- 3.第一部 第二話 開始のブザーが鳴り
- 4.第一部 第三話 前傾姿勢になって。
- 5.第一部 第四話 もう一度?
- 6.第一部 第五話 採点室にて
- 7.第一部 第六話 歌い手に。 そして本当のスタートを前に。
- 8.第一部 最終話 説明会前日
- 9.第二部 第零話 静かな会議室にて
- 10.第二部 第一話 お披露目会
- 11.第二部 第二話 お披露目会・終了後
- 12.第二部 第三話 初舞台
- 13.第二部 第四話 朱、降臨
- 14.第二部 第五話 黄、すべてを照らす
- 15.第二部 第六話 声を並べる者たち
- 16.第二部 第七話 声を剥ぐ
- 17.第二部 第七・五話 身体は嘘をつかない
- 18.第二部 最終話 管理人の記録
- 19.第三部 第零話 週刊誌
- 20.第三部 第一話 予定外の光
- 21.第三部 第二話 知らされる星
- 22.第三部 第三話 星降る夜、未来を夢見る
- 23.第三部 チーム編成
- 24.第三部 第四話 チーム分けと練習、そして思い出
- 25.第三部 第五話 グループで発表会
- 26.第三部 第六話 如月の成長
- 27.第三部 第七話 みんとは。
- 28.第三部 第八話 如月の本音
- 29.第三部 第九話 火が付く
- 30.第三部 第十話 炎上
- 31.第三部 第十一話 お願い
- 32.第三部 最終話 管理人は。
- 33.第四部 第零話 声を捨てたもの
- 34.第四部 第一話 揺れる光
- 35.第四部 第二話 疑問を持つ者
- 36.第四部 第三話 新たな火種
- 37.第四部 第四話 崩れる夜
- 38.第四部 第五話 管理人の決断
- 39.第四部 最終話 継ぐ光
- 40.第五部 第零話 余光を見つめて
- 41.第五部 第一話 違和感
- 42.第五部 第2話 選ばれない側
- 43.第五部 第三話 管理人の視線
- 44.第五部 第四話 事件、そして―
- 45.第五部 最終話 光の交代
- 46.第六部 第零話 今年の光
- 47.第六部 第一話 光の隣で
- 48.第六部 第二話 崩れた予定
- 49.第六部 第三話 本音
- 50.第六部 第四話 ソノスの役目
- 51.第六部 最終話 光は、隣で
- 52.最後に。