朱が去ったあとのステージは、
一度、
完全に“更地”になった。
さっきまで確かに存在していた熱も、
朱色の余韻も、
全部、
静かに剥がされていく。
観客は知っている。
次が何かを。
司会が、
少しだけ声を張る。
「―続いては」
一拍。
「偶像、
絢香奇 麗」
その瞬間。
―空気が、笑った。
悲鳴に近い歓声。
手拍子。
名前を呼ぶ声。
「うららー!!」
「太陽ー!!」
「来たぞおお!!」
照明が落ちる間もない。
最初から、
明るい。
黄色。
いや、
昼。
夜の会場に、
無理やり太陽をねじ込んだみたいな光。
ドン、
と重低音。
そして―
「今日も輝いてる〜?」
マイクを持った瞬間、
会場が返事をする。
「「うらら様〜!!!」」
その時点で、
もう“完成している”。
麗は、
笑っている。
いつも通り。
でも―
目だけが、
完全に“狩る側”だ。
「よしよし、声出てるね!」
軽く肩を回す。
それだけで、
長い脚がしなる。
「じゃあさ」
一拍。
「太陽、落とすよ?」
―音が、爆ぜた。
ギター。
ドラム。
シンセ。
速い。
重い。
でも、明るい。
♪「息を吸って 吐いて
それだけで 偉いってさ
誰が決めた?
―私だよ!」♪
最初の一声。
太い。
可愛い声?
そんなカテゴリ、
最初から無い。
腹の底から、
空気を殴る声。
麗は、
走る。
ステージを、
端から端まで。
♪「迷っていい!
止まっていい!
でもさ―
腐るのは、ダメ!」♪
ジャンプ。
高すぎる。
着地と同時に、
回転。
身体全体で、
音を刻む。
―ダンスが、歌を引っ張ってる。
シャウト。
♪「聞こえてるかー!!」♪
「「うおおおおお!!!」」
レスポンスを前提にした構成。
観客が、
パーツになっている。
次の瞬間。
―声が、変わる。
♪「壊れそうな夜も
ちゃんと朝は来るんだよ」♪
一瞬だけ、
柔らかい。
でも、
甘くしない。
「―だから」
マイクを下げる。
次。
デスボイス。
♪「泣きたいなら
私の光で
全部、焼いていけ!!」♪
空気が、
震える。
床が、
揺れる。
恐怖すら、
楽しい。
如月が、
袖で息を止めている。
…理屈じゃない。
ゆめは、
無意識に拳を握っていた。
…あれは。
歌でも、
ダンスでも、
生き方だ。
♪「負けたっていい
転んだっていい
それ全部
―経験値!!」♪
麗は、
笑っている。
汗だくで、
息も荒い。
でも、
止まらない。
♪「太陽はさ
沈んでも
消えないんだよ」♪
最後。
マイクを、
客席に向ける。
「いくよ!!」
♪「―私は、ここにいる!!」♪
音、
停止。
一瞬の無音。
次の瞬間。
爆発。
拍手。
叫び。
泣き声。
会場が、
“昼”のまま終わる。
麗は、
深く一礼。
そして、笑う。
「ありがと!」
それだけ。
袖に戻る途中。
Aster Codeを見る。
立ち止まらない。
でも―
一瞬だけ、
目が合う。
(置いていくよ?
追いつきたいなら、
命ごと来な)
そう言われた気がした。
去っていく背中。
朱は、
到達点だった。
黄は、
現在進行形の暴力だった。
如月が、
ぽつりと呟く。
「…あれが」
「“偶像”ですか」
みんとは、
言葉を失っている。
ゆめは、
小さく息を吸った。
…でも。
それでも。
歌いたい。
格の差は、
はっきりしていた。
でも同時に―
道も、
はっきり見えた。
太陽は、
遠い。
だからこそ。
追いかける意味が、
あった。
一度、
完全に“更地”になった。
さっきまで確かに存在していた熱も、
朱色の余韻も、
全部、
静かに剥がされていく。
観客は知っている。
次が何かを。
司会が、
少しだけ声を張る。
「―続いては」
一拍。
「偶像、
絢香奇 麗」
その瞬間。
―空気が、笑った。
悲鳴に近い歓声。
手拍子。
名前を呼ぶ声。
「うららー!!」
「太陽ー!!」
「来たぞおお!!」
照明が落ちる間もない。
最初から、
明るい。
黄色。
いや、
昼。
夜の会場に、
無理やり太陽をねじ込んだみたいな光。
ドン、
と重低音。
そして―
「今日も輝いてる〜?」
マイクを持った瞬間、
会場が返事をする。
「「うらら様〜!!!」」
その時点で、
もう“完成している”。
麗は、
笑っている。
いつも通り。
でも―
目だけが、
完全に“狩る側”だ。
「よしよし、声出てるね!」
軽く肩を回す。
それだけで、
長い脚がしなる。
「じゃあさ」
一拍。
「太陽、落とすよ?」
―音が、爆ぜた。
ギター。
ドラム。
シンセ。
速い。
重い。
でも、明るい。
♪「息を吸って 吐いて
それだけで 偉いってさ
誰が決めた?
―私だよ!」♪
最初の一声。
太い。
可愛い声?
そんなカテゴリ、
最初から無い。
腹の底から、
空気を殴る声。
麗は、
走る。
ステージを、
端から端まで。
♪「迷っていい!
止まっていい!
でもさ―
腐るのは、ダメ!」♪
ジャンプ。
高すぎる。
着地と同時に、
回転。
身体全体で、
音を刻む。
―ダンスが、歌を引っ張ってる。
シャウト。
♪「聞こえてるかー!!」♪
「「うおおおおお!!!」」
レスポンスを前提にした構成。
観客が、
パーツになっている。
次の瞬間。
―声が、変わる。
♪「壊れそうな夜も
ちゃんと朝は来るんだよ」♪
一瞬だけ、
柔らかい。
でも、
甘くしない。
「―だから」
マイクを下げる。
次。
デスボイス。
♪「泣きたいなら
私の光で
全部、焼いていけ!!」♪
空気が、
震える。
床が、
揺れる。
恐怖すら、
楽しい。
如月が、
袖で息を止めている。
…理屈じゃない。
ゆめは、
無意識に拳を握っていた。
…あれは。
歌でも、
ダンスでも、
生き方だ。
♪「負けたっていい
転んだっていい
それ全部
―経験値!!」♪
麗は、
笑っている。
汗だくで、
息も荒い。
でも、
止まらない。
♪「太陽はさ
沈んでも
消えないんだよ」♪
最後。
マイクを、
客席に向ける。
「いくよ!!」
♪「―私は、ここにいる!!」♪
音、
停止。
一瞬の無音。
次の瞬間。
爆発。
拍手。
叫び。
泣き声。
会場が、
“昼”のまま終わる。
麗は、
深く一礼。
そして、笑う。
「ありがと!」
それだけ。
袖に戻る途中。
Aster Codeを見る。
立ち止まらない。
でも―
一瞬だけ、
目が合う。
(置いていくよ?
追いつきたいなら、
命ごと来な)
そう言われた気がした。
去っていく背中。
朱は、
到達点だった。
黄は、
現在進行形の暴力だった。
如月が、
ぽつりと呟く。
「…あれが」
「“偶像”ですか」
みんとは、
言葉を失っている。
ゆめは、
小さく息を吸った。
…でも。
それでも。
歌いたい。
格の差は、
はっきりしていた。
でも同時に―
道も、
はっきり見えた。
太陽は、
遠い。
だからこそ。
追いかける意味が、
あった。
- 1.第一部 第零話 スタートライン手前にて
- 2.第一部 第一話 スタートラインに立ったもの
- 3.第一部 第二話 開始のブザーが鳴り
- 4.第一部 第三話 前傾姿勢になって。
- 5.第一部 第四話 もう一度?
- 6.第一部 第五話 採点室にて
- 7.第一部 第六話 歌い手に。 そして本当のスタートを前に。
- 8.第一部 最終話 説明会前日
- 9.第二部 第零話 静かな会議室にて
- 10.第二部 第一話 お披露目会
- 11.第二部 第二話 お披露目会・終了後
- 12.第二部 第三話 初舞台
- 13.第二部 第四話 朱、降臨
- 14.第二部 第五話 黄、すべてを照らす
- 15.第二部 第六話 声を並べる者たち
- 16.第二部 第七話 声を剥ぐ
- 17.第二部 第七・五話 身体は嘘をつかない
- 18.第二部 最終話 管理人の記録
- 19.第三部 第零話 週刊誌
- 20.第三部 第一話 予定外の光
- 21.第三部 第二話 知らされる星
- 22.第三部 第三話 星降る夜、未来を夢見る
- 23.第三部 チーム編成
- 24.第三部 第四話 チーム分けと練習、そして思い出
- 25.第三部 第五話 グループで発表会
- 26.第三部 第六話 如月の成長
- 27.第三部 第七話 みんとは。
- 28.第三部 第八話 如月の本音
- 29.第三部 第九話 火が付く
- 30.第三部 第十話 炎上
- 31.第三部 第十一話 お願い
- 32.第三部 最終話 管理人は。
- 33.第四部 第零話 声を捨てたもの
- 34.第四部 第一話 揺れる光
- 35.第四部 第二話 疑問を持つ者
- 36.第四部 第三話 新たな火種
- 37.第四部 第四話 崩れる夜
- 38.第四部 第五話 管理人の決断
- 39.第四部 最終話 継ぐ光
- 40.第五部 第零話 余光を見つめて
- 41.第五部 第一話 違和感
- 42.第五部 第2話 選ばれない側
- 43.第五部 第三話 管理人の視線
- 44.第五部 第四話 事件、そして―
- 45.第五部 最終話 光の交代
- 46.第六部 第零話 今年の光
- 47.第六部 第一話 光の隣で
- 48.第六部 第二話 崩れた予定
- 49.第六部 第三話 本音
- 50.第六部 第四話 ソノスの役目
- 51.第六部 最終話 光は、隣で
- 52.最後に。