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900閲覧!!【完結いたしました!】 憧れのアイドル―偶像と同じステージに立つ日まで―勝つか、消えるか、歌い手としての最初の一歩

#7

第一部 第六話 歌い手に。 そして本当のスタートを前に。

掲示板の前に、
人が集まり始めていた。

朝の光が差し込む廊下。
なのに、空気だけがやけに重い。

…来たんだ。

紙は一枚。
白いボードの中央に、
静かに貼られている。

管理人さんが前に立つ。

「緊急追加筆記試験の結果を、発表します」

声は低く、
淡々。

「今回の試験は、
合否を決めるためのものではありませんでした」

…?

「ここから先に進めるかどうか。
それだけを見るための試験です」

誰も、
うなずかない。

ただ、
聞く。

「名前を呼ばれた者は、
一歩前に出てください」

心臓が、
どくん、
と鳴った。

…来る。

「―神谷ゆめ」

…え。

足が、
少し遅れて動く。

前に出た瞬間、
周囲の視線を感じた。

「―仰凪みんと」

横に、
みんとが並ぶ。

ぎゅっと拳を握って、
こっちを見る。

「―如月」

一瞬。

空気が、
確かに揺れた。

如月は、
いつも通りの笑顔で前に出る。

…合格、だよね?


考える余裕は、
なかった。

管理人さんは、
名簿に視線を落としながら、
次々に名前を呼ぶ。


…正直、
ほとんど聞こえていなかった。

音としては、
耳に入っている。

でも、
意味として、
入ってこない。

…ゆめ、って呼ばれた。

前に立ってる。

それだけで、
頭がいっぱいだった。

「以上です」

その言葉で、
ようやく現実が戻ってくる。

「呼ばれた者は、
この後、別室に集合してください。
呼ばれなかった者は、
指示があるまで待機」

…それだけ。

拍手も、
お祝いの言葉も、
なかった。

ただ、
結果だけが置かれる。

別室の空気は、
まだ少しだけ落ち着かなかった。

椅子の数は、
人の数とぴったり同じ。

…減ったな。

五十人いた頃を思い出して、
そう思う。

管理人さんが、
扉を閉めた。

音は、
静かだった。

でも、
その音で、
「ここから先は別」という線が引かれた気がした。

「改めて」

管理人さんが、
前に立つ。

「合格、おめでとうございます」

その言葉は、
思ったよりも軽かった。

拍手もない。
笑顔もない。

「ですが」

やっぱり、
続く。

「今日は、何も説明しません」

…え?

部屋の空気が、
一瞬だけ揺れた。

「今のあなた達は、
試験を終えた直後で、
判断力が不安定です」

…そこまで言う?

「期待も、不安も、
両方、膨らみすぎている」

管理人さんは、
一人ずつを見る。

「そういう状態で、
大事な話はしません」

沈黙。

「―後日」

その一言が、
やけに重い。

「合格者のみを対象とした説明会を行います。
日程と場所は、
個別に通知します。

―全員、参加必須。
欠席は、
辞退と同義です」

…辞退。

言葉が、
胸に刺さる。

「そこで、
あなた達がこれから進む道。

研修内容。

制限事項。

―そして」

一拍。

「戻れなくなる一線について話します」

…戻れなくなる。

隣で、
みんとが小さく息を呑んだ。

如月は、
腕を組んだまま、
無言で聞いている。

「今日は、解散。
浮かれる必要も、
落ち込む必要もありません、

―ただ」

管理人さんは、
最後に、
静かに言った。

「覚悟だけは、持ってきてください」

それだけ言って、
背を向けた。

扉が閉まる。

しばらく、
誰も動かなかった。

「…説明会、かぁ」

誰かが、
小さく呟く。

「怖くない?」

みんとが、
こちらを見る。

「…ちょっと」

うちは、
正直に答えた。

如月が、
くすっと笑う。

「楽しみですねぇ。
何が出てくるか、
分からない方が」

その笑顔の裏に、
本音があるのかは―
まだ、分からない。

部屋を出ると、
廊下の先に、
夕方の光が差していた。

…次は、説明会。

歌う前の、
深呼吸みたいな時間。

本当のスタートは、
まだ先。

でも。

「…来たんだ!」

この場所に、
立ち続ける資格だけは―

確かに、
手に入れた。
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作者メッセージ

2026/02/01の夜(ほぼ2026/01/31)の投稿で
第一部が完結します!

是非見てください!

2026/01/31 18:01

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歌い手研修生から参加型

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