900閲覧!!【完結いたしました!】 【参加型】憧れのアイドル―偶像と同じステージに立つ日まで―勝つか、消えるか、歌い手としての最初の一歩
掲示板の前に、
人が集まり始めていた。
朝の光が差し込む廊下。
なのに、空気だけがやけに重い。
…来たんだ。
紙は一枚。
白いボードの中央に、
静かに貼られている。
管理人さんが前に立つ。
「緊急追加筆記試験の結果を、発表します」
声は低く、
淡々。
「今回の試験は、
合否を決めるためのものではありませんでした」
…?
「ここから先に進めるかどうか。
それだけを見るための試験です」
誰も、
うなずかない。
ただ、
聞く。
「名前を呼ばれた者は、
一歩前に出てください」
心臓が、
どくん、
と鳴った。
…来る。
「―神谷ゆめ」
…え。
足が、
少し遅れて動く。
前に出た瞬間、
周囲の視線を感じた。
「―仰凪みんと」
横に、
みんとが並ぶ。
ぎゅっと拳を握って、
こっちを見る。
「―如月」
一瞬。
空気が、
確かに揺れた。
如月は、
いつも通りの笑顔で前に出る。
…合格、だよね?
考える余裕は、
なかった。
管理人さんは、
名簿に視線を落としながら、
次々に名前を呼ぶ。
…正直、
ほとんど聞こえていなかった。
音としては、
耳に入っている。
でも、
意味として、
入ってこない。
…ゆめ、って呼ばれた。
前に立ってる。
それだけで、
頭がいっぱいだった。
「以上です」
その言葉で、
ようやく現実が戻ってくる。
「呼ばれた者は、
この後、別室に集合してください。
呼ばれなかった者は、
指示があるまで待機」
…それだけ。
拍手も、
お祝いの言葉も、
なかった。
ただ、
結果だけが置かれる。
別室の空気は、
まだ少しだけ落ち着かなかった。
椅子の数は、
人の数とぴったり同じ。
…減ったな。
五十人いた頃を思い出して、
そう思う。
管理人さんが、
扉を閉めた。
音は、
静かだった。
でも、
その音で、
「ここから先は別」という線が引かれた気がした。
「改めて」
管理人さんが、
前に立つ。
「合格、おめでとうございます」
その言葉は、
思ったよりも軽かった。
拍手もない。
笑顔もない。
「ですが」
やっぱり、
続く。
「今日は、何も説明しません」
…え?
部屋の空気が、
一瞬だけ揺れた。
「今のあなた達は、
試験を終えた直後で、
判断力が不安定です」
…そこまで言う?
「期待も、不安も、
両方、膨らみすぎている」
管理人さんは、
一人ずつを見る。
「そういう状態で、
大事な話はしません」
沈黙。
「―後日」
その一言が、
やけに重い。
「合格者のみを対象とした説明会を行います。
日程と場所は、
個別に通知します。
―全員、参加必須。
欠席は、
辞退と同義です」
…辞退。
言葉が、
胸に刺さる。
「そこで、
あなた達がこれから進む道。
研修内容。
制限事項。
―そして」
一拍。
「戻れなくなる一線について話します」
…戻れなくなる。
隣で、
みんとが小さく息を呑んだ。
如月は、
腕を組んだまま、
無言で聞いている。
「今日は、解散。
浮かれる必要も、
落ち込む必要もありません、
―ただ」
管理人さんは、
最後に、
静かに言った。
「覚悟だけは、持ってきてください」
それだけ言って、
背を向けた。
扉が閉まる。
しばらく、
誰も動かなかった。
「…説明会、かぁ」
誰かが、
小さく呟く。
「怖くない?」
みんとが、
こちらを見る。
「…ちょっと」
うちは、
正直に答えた。
如月が、
くすっと笑う。
「楽しみですねぇ。
何が出てくるか、
分からない方が」
その笑顔の裏に、
本音があるのかは―
まだ、分からない。
部屋を出ると、
廊下の先に、
夕方の光が差していた。
…次は、説明会。
歌う前の、
深呼吸みたいな時間。
本当のスタートは、
まだ先。
でも。
「…来たんだ!」
この場所に、
立ち続ける資格だけは―
確かに、
手に入れた。
人が集まり始めていた。
朝の光が差し込む廊下。
なのに、空気だけがやけに重い。
…来たんだ。
紙は一枚。
白いボードの中央に、
静かに貼られている。
管理人さんが前に立つ。
「緊急追加筆記試験の結果を、発表します」
声は低く、
淡々。
「今回の試験は、
合否を決めるためのものではありませんでした」
…?
「ここから先に進めるかどうか。
それだけを見るための試験です」
誰も、
うなずかない。
ただ、
聞く。
「名前を呼ばれた者は、
一歩前に出てください」
心臓が、
どくん、
と鳴った。
…来る。
「―神谷ゆめ」
…え。
足が、
少し遅れて動く。
前に出た瞬間、
周囲の視線を感じた。
「―仰凪みんと」
横に、
みんとが並ぶ。
ぎゅっと拳を握って、
こっちを見る。
「―如月」
一瞬。
空気が、
確かに揺れた。
如月は、
いつも通りの笑顔で前に出る。
…合格、だよね?
考える余裕は、
なかった。
管理人さんは、
名簿に視線を落としながら、
次々に名前を呼ぶ。
…正直、
ほとんど聞こえていなかった。
音としては、
耳に入っている。
でも、
意味として、
入ってこない。
…ゆめ、って呼ばれた。
前に立ってる。
それだけで、
頭がいっぱいだった。
「以上です」
その言葉で、
ようやく現実が戻ってくる。
「呼ばれた者は、
この後、別室に集合してください。
呼ばれなかった者は、
指示があるまで待機」
…それだけ。
拍手も、
お祝いの言葉も、
なかった。
ただ、
結果だけが置かれる。
別室の空気は、
まだ少しだけ落ち着かなかった。
椅子の数は、
人の数とぴったり同じ。
…減ったな。
五十人いた頃を思い出して、
そう思う。
管理人さんが、
扉を閉めた。
音は、
静かだった。
でも、
その音で、
「ここから先は別」という線が引かれた気がした。
「改めて」
管理人さんが、
前に立つ。
「合格、おめでとうございます」
その言葉は、
思ったよりも軽かった。
拍手もない。
笑顔もない。
「ですが」
やっぱり、
続く。
「今日は、何も説明しません」
…え?
部屋の空気が、
一瞬だけ揺れた。
「今のあなた達は、
試験を終えた直後で、
判断力が不安定です」
…そこまで言う?
「期待も、不安も、
両方、膨らみすぎている」
管理人さんは、
一人ずつを見る。
「そういう状態で、
大事な話はしません」
沈黙。
「―後日」
その一言が、
やけに重い。
「合格者のみを対象とした説明会を行います。
日程と場所は、
個別に通知します。
―全員、参加必須。
欠席は、
辞退と同義です」
…辞退。
言葉が、
胸に刺さる。
「そこで、
あなた達がこれから進む道。
研修内容。
制限事項。
―そして」
一拍。
「戻れなくなる一線について話します」
…戻れなくなる。
隣で、
みんとが小さく息を呑んだ。
如月は、
腕を組んだまま、
無言で聞いている。
「今日は、解散。
浮かれる必要も、
落ち込む必要もありません、
―ただ」
管理人さんは、
最後に、
静かに言った。
「覚悟だけは、持ってきてください」
それだけ言って、
背を向けた。
扉が閉まる。
しばらく、
誰も動かなかった。
「…説明会、かぁ」
誰かが、
小さく呟く。
「怖くない?」
みんとが、
こちらを見る。
「…ちょっと」
うちは、
正直に答えた。
如月が、
くすっと笑う。
「楽しみですねぇ。
何が出てくるか、
分からない方が」
その笑顔の裏に、
本音があるのかは―
まだ、分からない。
部屋を出ると、
廊下の先に、
夕方の光が差していた。
…次は、説明会。
歌う前の、
深呼吸みたいな時間。
本当のスタートは、
まだ先。
でも。
「…来たんだ!」
この場所に、
立ち続ける資格だけは―
確かに、
手に入れた。
- 1.第一部 第零話 スタートライン手前にて
- 2.第一部 第一話 スタートラインに立ったもの
- 3.第一部 第二話 開始のブザーが鳴り
- 4.第一部 第三話 前傾姿勢になって。
- 5.第一部 第四話 もう一度?
- 6.第一部 第五話 採点室にて
- 7.第一部 第六話 歌い手に。 そして本当のスタートを前に。
- 8.第一部 最終話 説明会前日
- 9.第二部 第零話 静かな会議室にて
- 10.第二部 第一話 お披露目会
- 11.第二部 第二話 お披露目会・終了後
- 12.第二部 第三話 初舞台
- 13.第二部 第四話 朱、降臨
- 14.第二部 第五話 黄、すべてを照らす
- 15.第二部 第六話 声を並べる者たち
- 16.第二部 第七話 声を剥ぐ
- 17.第二部 第七・五話 身体は嘘をつかない
- 18.第二部 最終話 管理人の記録
- 19.第三部 第零話 週刊誌
- 20.第三部 第一話 予定外の光
- 21.第三部 第二話 知らされる星
- 22.第三部 第三話 星降る夜、未来を夢見る
- 23.第三部 チーム編成
- 24.第三部 第四話 チーム分けと練習、そして思い出
- 25.第三部 第五話 グループで発表会
- 26.第三部 第六話 如月の成長
- 27.第三部 第七話 みんとは。
- 28.第三部 第八話 如月の本音
- 29.第三部 第九話 火が付く
- 30.第三部 第十話 炎上
- 31.第三部 第十一話 お願い
- 32.第三部 最終話 管理人は。
- 33.第四部 第零話 声を捨てたもの
- 34.第四部 第一話 揺れる光
- 35.第四部 第二話 疑問を持つ者
- 36.第四部 第三話 新たな火種
- 37.第四部 第四話 崩れる夜
- 38.第四部 第五話 管理人の決断
- 39.第四部 最終話 継ぐ光
- 40.第五部 第零話 余光を見つめて
- 41.第五部 第一話 違和感
- 42.第五部 第2話 選ばれない側
- 43.第五部 第三話 管理人の視線
- 44.第五部 第四話 事件、そして―
- 45.第五部 最終話 光の交代
- 46.第六部 第零話 今年の光
- 47.第六部 第一話 光の隣で
- 48.第六部 第二話 崩れた予定
- 49.第六部 第三話 本音
- 50.第六部 第四話 ソノスの役目
- 51.第六部 最終話 光は、隣で
- 52.最後に。