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900閲覧!!【完結いたしました!】 憧れのアイドル―偶像と同じステージに立つ日まで―勝つか、消えるか、歌い手としての最初の一歩

#5

第一部 第四話 もう一度?

結果発表が終わっても、
誰も動かなかった。

合格と保留。
その境目が、
まだ床に残っている気がした。

管理人さんが、
一度だけ、手を叩く。

「―帰らないでください」

その一言で、
通過者も、
保留者も、
全員が顔を上げた。

「今から、緊急追加試験を行います」

ざわ、
と小さなどよめき。

…まだ、あるの?

「内容は、筆記」

一瞬、
拍子抜けした空気が流れる。

歌わない。
踊らない。

「ですが」

管理人さんは、
視線を鋭くする。

「この試験は、
今日一番、脱落者が出ます」

空気が、
一気に張り詰めた。

「対象者は―」

一拍。

「今回の三人グループ評価を受けた者、全員」

心臓が跳ねた。

…うちも?

「合格・保留は一度、白紙に戻します」

はっきりとした声。

「この筆記試験の結果で、
あなた達の“先”を決めます」

如月さんが、
くすっと笑う。

「…やっぱり、そう来ますよねぇ」

仰凪さんは、
唇を噛みしめた。

「試験内容は、三つ」

管理人さんが、
スクリーンを指す。

―筆記試験 内容
第一問
「あなたが“歌い手”になりたい理由を書きなさい」
(文字数制限なし)

第二問
「あなたにとって“声”とは何か」
(抽象可・正解なし)

第三問
「即興で、短い歌詞またはメロディ構成を書きなさい」
(楽譜不要/言葉のみでも可)

「制限時間は、六十分。
途中退席は不可。
嘘は、評価に反映されます」

…最後の一言で、
如月さんの目が、
僅かに細くなった。

「この試験は」

管理人さんは、
ゆっくり言った。

「技術ではありません。

あなた達が、
何を信じて歌っているかを見るためのものです」

―筆記試験中
紙とペンが配られる。

白い紙。

…何を書けばいい?

第一問。
『歌い手になりたい理由』

うちは、ペンを握りしめた。

―有名になりたい?
ちがう。

―上手って言われたい?
ちがう

…浮かんだのは。

夜。

誰もいないキッチンで、
小さく歌っていた自分。

「…声があるから」

書き始める。

『うちは、自分の声で
誰かの心をあたためたいから』

―第二問
『あなたにとって“声”とは何か』
*如月 視点*

白い紙。

シンプルすぎて、
嘘が書けない。

…声、ね。

ボクは、
ペンをくるりと回す。

声。

それは、
武器で、
仮面で、
逃げ道。

本当のこと、
書けって言われたら…。
…困るなぁ。

でも。

ここで嘘を書いたら、
きっと―

―見抜かれる。

管理人さんの言葉が、
頭の奥で鳴る。

「嘘は、評価に反映されます」

…ずるい。

ボクは、紙を見つめて、
一度だけ目を閉じた。

声ってさ。

本音を隠すために、
本音をさらけ出すものなんだよね。

意味が分からない?

…でも、ボクには分かる。

ペンを走らせる。

『ボクにとって声は、
嘘をつくための道具であり、
嘘をつけなくなる場所でもある』

…正直すぎるかな?

でも、
これ以上の嘘は、
もう、
いらない。

ボクは、
小さく笑った。

―第三問
『即興で、短い歌詞またはメロディ構成を書きなさい』
*仰凪みんと 視点*

…歌詞。

みんとは、
紙を見て固まった。

即興…?

うわ、頭使うやつだ。

楽譜は書けない。
コードも分からない。

…でも。

音楽が、
好き。

身体で覚えたリズム。
息をするみたいに、
動いてきた。

考えるより…。
…感じる、だよね。

ペンを持つ手が、
少し震える。

言葉、苦手だけど…。

みんとは、
目を閉じた。

ステージの照明。
みんなの笑顔。
ダンスで息が切れて、
それでも楽しくて。

…置いてかれたくない。

でも、置いてくなら…。

ペンが、
動いた。

『笑ってる間は
ついていける
息が切れても
音が鳴るなら
まだ踊れる』

書き終えて、
みんとはしばらく紙を見つめる。

…上手じゃないけど。

これが、
―今の気持ち。

消さなかった。

消したら、
逃げちゃう気がしたから。

顔を上げると、
如月が、
こちらを見ていた。

目が合って、
にこっと笑う。

…なんだろ。

怖いけど、
負けたくない。

ペンを置く。

試験は、
まだ終わっていない。



静かな部屋に、
時計の秒針の音だけが響いていた。

カリ、
カリ、
と、
紙の上を走るペンの音も、
いつの間にか減っている。

…終わる。

うちは、
最後に一度だけ、
書いた文字を見直した。

消さない。
書き直さない。

これが、
今の自分の全部だから。

如月は、
もうとっくに書き終えているのか、
肘をついて天井を見ていた。

仰凪みんとは、
ぎりぎりまでペンを動かしていて、
「…あっ」と小さく声を漏らす。

その瞬間。

「―時間です」

管理人さんの声が、
はっきりと、
部屋を切った。

「全員、ペンを置いてください」

一斉に、
ペンが紙から離れる。

その音が、
やけに大きく聞こえた。

管理人さんは、
無言で答案用紙を回収していく。

一枚。
また一枚。

うちの前で、
紙が持ち上げられる。

…行っちゃった。

戻ってこない。

如月の答案を取る時、
管理人さんは一瞬だけ、
紙に目を落とした。

ほんの一瞬。

でも、
それだけで胸がざわつく。

「結果は、後日通知します」

管理人さんが言う。

「それまでは、
通常の研修に戻ってください」

淡々とした声。

「以上です」

それだけ。

誰も、
質問しなかった。

聞けなかった。

部屋を出る時、
みんなの表情はばらばらだった。

安心。
不安。
期待。
諦め。

如月は、
いつもの笑顔で振り返る。

「じゃあ、また」

それが、
嘘なのか本音なのか―
うちは、まだ分からない。

廊下に出ると、
夜の気配が、
少しだけ近づいていた。

…これで、終わりじゃない。

むしろ。

ここからが、
本当の試験なのかもしれない。

声に、
何を託すのか。

答えはまだ、
封を切られていない。

―一旦、おしまい。
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作者メッセージ

まだまだグループ名を集めています、ぜひ参加してください!

2026/01/30 18:38

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歌い手研修生から参加型

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