文字サイズ変更

900閲覧!!【完結いたしました!】 憧れのアイドル―偶像と同じステージに立つ日まで―勝つか、消えるか、歌い手としての最初の一歩

#4

第一部 第三話 前傾姿勢になって。

ステージ袖は、
思っていたよりも静かだった。

…心臓、
うるさい。
照明の熱。
床越しに伝わる振動。
向こう側には、
審査員と、
管理人さん。

そして―
三人。

如月さん。
仰凪みんと。
うち、
神谷ゆめ。

「…大丈夫?」

仰凪さんが、
小さく声をかけてくれた。

「はい」

嘘じゃない。
怖いけど、
逃げたいとは思ってない。

如月さんは、
いつもみたいに微笑んでいる。

「ふふ…。

こういう瞬間、
ボク好きなんですよねぇ」

…本音か嘘か、分からない。

「では」

アナウンスが響く。

「三人グループ評価・次の組、入ってください」

照明が、
落ちる。

一歩。

二歩。

ステージに立った瞬間、
空気が変わった。

―来た。


ドアの向こうから、
拍手とざわめきが聞こえる。
観客席には審査員と管理人さん。
ここが―、
自分たちの実力が最終的に試される舞台。

「…行くしかない」

うちは深く息を吸い、
肩の力を抜いた。
仰凪みんとを見る。

いつもの明るい笑顔が、
少しだけ硬い。
如月は壁にもたれ、
口角をほんの少し上げている。

あの人、いつも通りだけど…。

音楽が流れ始める。
低めのビート。

ゆっくりと、
心臓が音に合わせて高鳴る。

最初は、
仰凪みんと。
鏡で何度も練習した通り、
落ち着いた動きと声で全体を支える。
その安定感に、
うちは少し気持ちが落ち着く。

「…すごい」

次は、如月。
彼女が歌い始めた瞬間、
空気が変わる。
声の強弱、
表情の揺らぎ、
目線の角度―
一瞬で観客の視線を奪う。
…ずるい。

そして、
サビ直前。
うちの出番が来る。
深く息を吸う。
高鳴る鼓動を押さえ、
胸に込めた想いを歌に変える。

低音で始める―
まるで心の奥をくすぐるように、
柔らかく、
温かく。

そして、
勢いよく高音へ。
息を使い、
声を伸ばす。
胸に溜めていたすべての想いを放つ―

「…届いて」

二人の声と重なり、
三人の声が一つの波になる。
誰もが息を飲む瞬間。
そして最後、
音が止まる。

ステージは、
静寂に包まれた。
拍手も歓声も、
一瞬だけ止まったように感じる。

…やりきった!

仰凪みんとが、
少し息をつき、
目を細める。
如月は微笑み、
少し肩をすくめている。

うちは、
胸の奥がじんわりと温かくなる。

拍手が始まった。
大きくもなく、
小さくもなく、
でも、
確かに、
評価されている感覚。

「…これで、私たちの全力、伝わったよね」

心の中で、
そうつぶやく。

まだ結果は出ていない。
だが、
この瞬間、
自分たちが全力を出したことだけは確かだった。


会場の空気は、
鉄のように冷たかった。
50人ほどの研修生が、
並べられた長い列の前で静かに息を殺している。

管理人さんが前に立ち、
書類を手に軽く目を通す。
「―では、三人グループ評価の結果を発表します」

言葉は淡々としているのに、
その声が、
空間に落ちるたびに重く響く。

「今回、全体としてのレベルは非常に高く、評価は割れました」

周囲が、
ざわり、
と揺れる。
息を呑む音が、
無言の合図のように広がる。

管理人さんはゆっくりと視線を巡らせ、
次の瞬間―

―名前を呼ぶ。

「仰凪みんと、神谷ゆめ―合格」

胸が、
きゅう、
と締め付けられたあと、
温かさが一気に押し寄せる。

仰凪みんとは、小さく息を吐き、
「…ありがとうございます」
と、照れくさそうに呟く。
うちも、心の底からホッとした。

だが―
管理人さんの視線は残りの一人に向けられている。

「如月―保留です」

場内の空気が、
一瞬で張り詰める。
ざわめきが広がる中、

如月は軽く肩をすくめ、
いつもの嘘混じりの笑みを見せる。

「へぇ。
…ボク、ですか」

声は明るいのに、
その目はどこか鋭く、
笑顔の裏に隠れた不安が透ける。

管理人さんは書類を見ながら、
静かに理由を述べた。

「理由は二つ。
一つ目、あなたは人を惹きつける力が強すぎる。
二つ目、本心がまだ見えない。だから現時点では判断できません」

場内は息を呑む。
「合格でも不合格でもない」

―その言葉が、異様な重みを持って響く。

「最終判断は後日、個別に通知します。
ただし次はありません」

その一言で、
保留者の重みが決定的になる。
如月は一瞬、
黙って微笑む。

「ボク、追いつくの得意ですから」

その言葉が、
挑戦状のようにも、
宣言のようにも聞こえた。

管理人さんは、
無表情で小さく頷き、
書類を閉じた。

ゆめはその背中を見ながら、
心の中で誓う。

…次は、絶対に、負けない。

緊張と安堵が交錯する中、
三人のグループは、
静かに、
ステージを後にした。
ページ選択

作者メッセージ

ちょっと時間がなくって歌を歌うシーンが抜けてしまって、すみません!

でも、どうでしょうか…?

なんとなぁくだけど、うまく行っている気が…。

では!

2026/01/30 00:00

コメント

この小説につけられたタグ

歌い手研修生から参加型

通報フォーム

お名前
(任意)
Mailアドレス
(任意)

※入力した場合は確認メールが自動返信されます
違反の種類 ※必須 ※ご自分の小説の削除依頼はできません。
違反内容、削除を依頼したい理由など※必須

盗作されたと思われる作品のタイトル

どういった部分が元作品と類似しているかを具体的に記入して下さい。

※できるだけ具体的に記入してください。

《記入例》
・3ページ目の『~~』という箇所に、禁止されているグロ描写が含まれていました
・「〇〇」という作品の盗作と思われます。登場人物の名前を変えているだけで●●というストーリーや××という設定が同じ
…等

備考欄
※伝言などありましたらこちらへ記入
メールフォーム規約」に同意して送信しますか?※必須
タイトル
URL

この小説の著作権はKanonLOVE しばらく活動休止中さんに帰属します

TOP