「っ…はぁっはぁっ……」
背筋が冷や汗で濡れている。嫌な夢を見た。
「…夢で、良かった……」
いつも通り、着替えて、私の1日を始める。
「お母さん、おはよー」
私の家ではお父さんが私の小さい頃に亡くなって、お母さんはずっとシングルマザーで私を育ててきた。
「おはよう。…あれ、なんだか彩乃、顔色が悪く無い?」
「えっ…っと、そんなことないと思う!ほら、げんきだし!」
慌てて用意された朝ごはんを食べる。…うん、やっぱりお母さんの料理は美味しいなぁ…。
「よし、準備オッケー、いってきまーす!」
「いってらしゃーい」
ガチャリ
「あーやのー!!」
ドアを開けたと同時に聞こえてきた叫び声と、続けて聞こえてきた自転車を漕ぐ音に、思わず顔をしかめる。
声の主はわかっている。
「…優海、おはよう。」
キキーッ、と音がして、優海が話し始める。
「彩乃、よく分かったなー!」
「そりゃ、あんなに騒がれれば誰でもわかるでしょ。」
夢の中の記憶の優海と、目の前に喋り続けている元気な優海が重なる。
「あはは〜」
どうして私は、あんな夢を見たのだろう。
「…ほら、早く行くよ。学校におくれちゃう。」
そう言って、自転車に乗り、走り始める。
「待ってよー!俺をおいていかないでー!」
後ろから聞こえてきた叫び声が面白くて、私も叫ぶ。
「早く来ないとー!置いてくよー!」
大きな声で言ったはずの私の言葉は、大きな青空に吸い込まれていった。
私たちの住むB市は、かなりの田舎だ。
隣にA市という都会があるが、ここは自然に包まれていて、狸やリスといった野生動物に会うことは珍しくない。
しかし、意外と人口は多いため、多くの人が集まる大きな学校がある。私はそこに優海と通っている。
そして、この町には、無銅橋という大きな橋がある。その橋がかかっている川には、とある噂がある。
それが、蛇神様の泉。
川とは言っても、そこはかなり上流で、近くの森には泉がある。
その泉には、何かの命と引き換えに、願いを叶えてくれる蛇神様がいるという噂だ。命の大きさは、願い事によって変わるらしい。
私は噂は信じないタイプだけど、小学四年生の頃、一度だけ蝶を沈めて願い事をしたことがある。
それ以来、私は命を捧げるごとの恐ろしさを知った。可哀想な蝶に謝りたい。
でも、あの頃の私は真剣だったのだ。噂に頼ってしまうぐらいに。
「彩乃、おはよう!」
親友の政光杏樹に話しかけられて、ハッと気がつく。
どうやらぼんやりしてしまっていたようだ。
「おはよう、杏樹。今日も頑張ろうねー。」
「そうだね!」
杏樹と話していると、廊下から声が聞こえてくる。優海の声だ。
「せんせー!これは違うんです!…やった夢を見て、やった気になっちゃって、やり忘れてたんです!」
「…何が違うんだ?」
どうやら優海は先生に怒られているらしい。
「霜咲くん、なんのことで怒られてるのかな?」
「どうせ課題でもやり忘れたんでしょ。」
優海のことだ。夢に頼るのも不思議ではない。
「すみませーん!課題、やってません!」
ほら、やっぱり。
「さすが彩乃!彼氏のことはなんでもお見通しだねー?」
「いや、彼氏じゃないってば…」
「いやー、しっかり怒られちゃったよー。」
どうやら説教が終わったらしい優海が、教室に入ってくる。
「だから昨日、念のために課題やったか確認しときなっていったじゃん。」
「あはは、彩乃はここまで予想してたのかー!」
こういうやりとりのせいか、今やクラスの大半が私たちが付き合っていると勘違いしている。
「…別に。普通に優海が忘れ物多いせいだし。」
「辛辣…」
学校に着いたのは結構早かったはずなのに、もうチャイムがなってしまった。
背筋が冷や汗で濡れている。嫌な夢を見た。
「…夢で、良かった……」
いつも通り、着替えて、私の1日を始める。
「お母さん、おはよー」
私の家ではお父さんが私の小さい頃に亡くなって、お母さんはずっとシングルマザーで私を育ててきた。
「おはよう。…あれ、なんだか彩乃、顔色が悪く無い?」
「えっ…っと、そんなことないと思う!ほら、げんきだし!」
慌てて用意された朝ごはんを食べる。…うん、やっぱりお母さんの料理は美味しいなぁ…。
「よし、準備オッケー、いってきまーす!」
「いってらしゃーい」
ガチャリ
「あーやのー!!」
ドアを開けたと同時に聞こえてきた叫び声と、続けて聞こえてきた自転車を漕ぐ音に、思わず顔をしかめる。
声の主はわかっている。
「…優海、おはよう。」
キキーッ、と音がして、優海が話し始める。
「彩乃、よく分かったなー!」
「そりゃ、あんなに騒がれれば誰でもわかるでしょ。」
夢の中の記憶の優海と、目の前に喋り続けている元気な優海が重なる。
「あはは〜」
どうして私は、あんな夢を見たのだろう。
「…ほら、早く行くよ。学校におくれちゃう。」
そう言って、自転車に乗り、走り始める。
「待ってよー!俺をおいていかないでー!」
後ろから聞こえてきた叫び声が面白くて、私も叫ぶ。
「早く来ないとー!置いてくよー!」
大きな声で言ったはずの私の言葉は、大きな青空に吸い込まれていった。
私たちの住むB市は、かなりの田舎だ。
隣にA市という都会があるが、ここは自然に包まれていて、狸やリスといった野生動物に会うことは珍しくない。
しかし、意外と人口は多いため、多くの人が集まる大きな学校がある。私はそこに優海と通っている。
そして、この町には、無銅橋という大きな橋がある。その橋がかかっている川には、とある噂がある。
それが、蛇神様の泉。
川とは言っても、そこはかなり上流で、近くの森には泉がある。
その泉には、何かの命と引き換えに、願いを叶えてくれる蛇神様がいるという噂だ。命の大きさは、願い事によって変わるらしい。
私は噂は信じないタイプだけど、小学四年生の頃、一度だけ蝶を沈めて願い事をしたことがある。
それ以来、私は命を捧げるごとの恐ろしさを知った。可哀想な蝶に謝りたい。
でも、あの頃の私は真剣だったのだ。噂に頼ってしまうぐらいに。
「彩乃、おはよう!」
親友の政光杏樹に話しかけられて、ハッと気がつく。
どうやらぼんやりしてしまっていたようだ。
「おはよう、杏樹。今日も頑張ろうねー。」
「そうだね!」
杏樹と話していると、廊下から声が聞こえてくる。優海の声だ。
「せんせー!これは違うんです!…やった夢を見て、やった気になっちゃって、やり忘れてたんです!」
「…何が違うんだ?」
どうやら優海は先生に怒られているらしい。
「霜咲くん、なんのことで怒られてるのかな?」
「どうせ課題でもやり忘れたんでしょ。」
優海のことだ。夢に頼るのも不思議ではない。
「すみませーん!課題、やってません!」
ほら、やっぱり。
「さすが彩乃!彼氏のことはなんでもお見通しだねー?」
「いや、彼氏じゃないってば…」
「いやー、しっかり怒られちゃったよー。」
どうやら説教が終わったらしい優海が、教室に入ってくる。
「だから昨日、念のために課題やったか確認しときなっていったじゃん。」
「あはは、彩乃はここまで予想してたのかー!」
こういうやりとりのせいか、今やクラスの大半が私たちが付き合っていると勘違いしている。
「…別に。普通に優海が忘れ物多いせいだし。」
「辛辣…」
学校に着いたのは結構早かったはずなのに、もうチャイムがなってしまった。