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蛇の泉に誓う、君への想い

#3

⒉夢と重なる現実

「っ…はぁっはぁっ……」
背筋が冷や汗で濡れている。嫌な夢を見た。
「…夢で、良かった……」
いつも通り、着替えて、私の1日を始める。
「お母さん、おはよー」
私の家ではお父さんが私の小さい頃に亡くなって、お母さんはずっとシングルマザーで私を育ててきた。
「おはよう。…あれ、なんだか彩乃、顔色が悪く無い?」
「えっ…っと、そんなことないと思う!ほら、げんきだし!」
慌てて用意された朝ごはんを食べる。…うん、やっぱりお母さんの料理は美味しいなぁ…。
「よし、準備オッケー、いってきまーす!」
「いってらしゃーい」
ガチャリ
「あーやのー!!」
ドアを開けたと同時に聞こえてきた叫び声と、続けて聞こえてきた自転車を漕ぐ音に、思わず顔をしかめる。
声の主はわかっている。
「…優海、おはよう。」
キキーッ、と音がして、優海が話し始める。
「彩乃、よく分かったなー!」
「そりゃ、あんなに騒がれれば誰でもわかるでしょ。」
夢の中の記憶の優海と、目の前に喋り続けている元気な優海が重なる。
「あはは〜」
どうして私は、あんな夢を見たのだろう。
「…ほら、早く行くよ。学校におくれちゃう。」
そう言って、自転車に乗り、走り始める。
「待ってよー!俺をおいていかないでー!」
後ろから聞こえてきた叫び声が面白くて、私も叫ぶ。
「早く来ないとー!置いてくよー!」
大きな声で言ったはずの私の言葉は、大きな青空に吸い込まれていった。

私たちの住むB市は、かなりの田舎だ。
隣にA市という都会があるが、ここは自然に包まれていて、狸やリスといった野生動物に会うことは珍しくない。
しかし、意外と人口は多いため、多くの人が集まる大きな学校がある。私はそこに優海と通っている。
そして、この町には、無銅橋という大きな橋がある。その橋がかかっている川には、とある噂がある。
それが、蛇神様の泉。
川とは言っても、そこはかなり上流で、近くの森には泉がある。
その泉には、何かの命と引き換えに、願いを叶えてくれる蛇神様がいるという噂だ。命の大きさは、願い事によって変わるらしい。
私は噂は信じないタイプだけど、小学四年生の頃、一度だけ蝶を沈めて願い事をしたことがある。
それ以来、私は命を捧げるごとの恐ろしさを知った。可哀想な蝶に謝りたい。
でも、あの頃の私は真剣だったのだ。噂に頼ってしまうぐらいに。

「彩乃、おはよう!」
親友の政光杏樹に話しかけられて、ハッと気がつく。
どうやらぼんやりしてしまっていたようだ。
「おはよう、杏樹。今日も頑張ろうねー。」
「そうだね!」
杏樹と話していると、廊下から声が聞こえてくる。優海の声だ。
「せんせー!これは違うんです!…やった夢を見て、やった気になっちゃって、やり忘れてたんです!」
「…何が違うんだ?」
どうやら優海は先生に怒られているらしい。
「霜咲くん、なんのことで怒られてるのかな?」
「どうせ課題でもやり忘れたんでしょ。」
優海のことだ。夢に頼るのも不思議ではない。
「すみませーん!課題、やってません!」
ほら、やっぱり。
「さすが彩乃!彼氏のことはなんでもお見通しだねー?」
「いや、彼氏じゃないってば…」
「いやー、しっかり怒られちゃったよー。」
どうやら説教が終わったらしい優海が、教室に入ってくる。
「だから昨日、念のために課題やったか確認しときなっていったじゃん。」
「あはは、彩乃はここまで予想してたのかー!」
こういうやりとりのせいか、今やクラスの大半が私たちが付き合っていると勘違いしている。
「…別に。普通に優海が忘れ物多いせいだし。」
「辛辣…」
学校に着いたのは結構早かったはずなのに、もうチャイムがなってしまった。




2025/09/11 15:27

かさね
ID:≫ 6pV9BWgKFbUqQ
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