夜空に咲く泡沫な華
#1
【花火】
「……"終わった"」
夜空に散った大きな花――『花火』
夏の風物詩にもなっている花火だが、その命は儚い。
「もっと、見ていたかった…」
20年ずっと同じ場所で、同じ花火を見ていたこの時間が、今年で最後になる。
ついさっき、最後の花火が散った夜空は、すごく静かで、物足りなくて――
「……あんなに温かいのに、こんなに儚く終わる花なんて、この花火だけだろうな」
『そんなことないと思うな…』
『私だって…儚く終わる……』
「は…?」
どこからか聞こえる声
すると、眼の前に現れたのは、小柄な少女――『朝露 華恋(あさつゆ かれん)』
『私も、花火と同じくらいには儚いよ?』
『……朝には、"消えちゃう"から…笑』
"消える"?
居なくなる、じゃなくて……?
そんな疑問は、華恋の次の言葉で消える事になる―
『…あと2時間』
「2時間…?」
『そう、あと2時間後。君の悩みは、私と"消える"の』
「どういう事だよ…! っていうか!!俺の、悩み…?悩んでなんかないぞ!」
『…町の花火が、今年で終わる。そうでしょう?』
華恋の少し垂れた儚い瞳がじっとこちらを見つめる
「……あぁ…"終わる"んだ………もう、終わる——」
『…だから、〘終わってほしくない〙。それが、あなたの願いで、悩み。』
…どこから、聞いていたのだろう
確かに、その言葉は自分がさっき虚しい空に呟いたものだった
「……なんで知ってんだ…?」
『私は、""夜空に咲く泡沫な華""。夜空から、みんなの全部を見ているの』
『全部を見て、小さな救いを与えて消える』
「小さな救い……」
『そう、小さな小さな幸せも、積み重ねれば救いになる…』
『現に、今も幸せでしょ? 笑』
…突然現れた知らない少女に戸惑わされているこの時間が、幸せ…?
「まさか、幸せじゃないよ」
『幸せだよ。だって、寂しくないでしょ?』
「寂しさを感じていないから、幸せ……?」
『…小さなことだけど、あのまま一人で空を眺めているよりかはよっぽど良い。』
『っていうか、そう思ったほうが幸せ』
…何を言っているのかは理解できないが、
彼女の言葉に、励まされているような気がしてきた
そんな会話をしている頃、空は橙色のグラデーションが進んでいる
「……もうすぐ2時間経つけど、救いってこれだけ?」
『うんん。今までのは全部、小さな"幸せ"に過ぎない』
『積み重なった"救い"はあともうちょっと経ったら、あげる』
救いと幸せ、違いは何なのだろう――
華恋と俺、二人の間にさっと差し込む光―『夜明け』だ
『……ほら、"夜明け"だよ』
「っ…眩しいな」
思わず目を細めてしまうほど、強く、眩しく、温かい光だった
『…………』
『終わってない。』
『花は、また咲かせば良いんだよ』
『あなたの心が枯れない限り、この町にまた、花を咲かせばいいじゃない』
朝日を背に微笑む華恋
その笑顔は、朝日に照らされた雫のように…
透けていた――
「……諦めなきゃ、良いってことか」
『私も、花火好きだからさ』
『また咲かせてよ』
彼女の瞳から、一粒の光が頬を伝った
『ねぇ、"夜空から"見てるよ』
また、夜空に戻っていく華恋を見上げ、呟く
「…じゃあな、"華恋"。また今度、花火をここで見ような」
"消える"、というのは、こういうことだったんだ…
彼女の言葉の意味がやっと、少しわかった気がした―
――数年後、その"約束"が叶ったとしても、彼女の名前を思い出せるか…
否。
救いを与える"夜空の華"の名前は、救いを与えたその瞬間から、徐々に思い出せなくなっていく。
早くて3週間。
遅くて1年。
いずれ、誰の記憶からも"消える"
『朝露 華恋――… 華恋 だよ……』
『…誰か、私の名前を…呼んで……?¿』
――今も何処かで、彼女の名前は…泡沫に"消える"
――END――
華恋_karen
夜空に散った大きな花――『花火』
夏の風物詩にもなっている花火だが、その命は儚い。
「もっと、見ていたかった…」
20年ずっと同じ場所で、同じ花火を見ていたこの時間が、今年で最後になる。
ついさっき、最後の花火が散った夜空は、すごく静かで、物足りなくて――
「……あんなに温かいのに、こんなに儚く終わる花なんて、この花火だけだろうな」
『そんなことないと思うな…』
『私だって…儚く終わる……』
「は…?」
どこからか聞こえる声
すると、眼の前に現れたのは、小柄な少女――『朝露 華恋(あさつゆ かれん)』
『私も、花火と同じくらいには儚いよ?』
『……朝には、"消えちゃう"から…笑』
"消える"?
居なくなる、じゃなくて……?
そんな疑問は、華恋の次の言葉で消える事になる―
『…あと2時間』
「2時間…?」
『そう、あと2時間後。君の悩みは、私と"消える"の』
「どういう事だよ…! っていうか!!俺の、悩み…?悩んでなんかないぞ!」
『…町の花火が、今年で終わる。そうでしょう?』
華恋の少し垂れた儚い瞳がじっとこちらを見つめる
「……あぁ…"終わる"んだ………もう、終わる——」
『…だから、〘終わってほしくない〙。それが、あなたの願いで、悩み。』
…どこから、聞いていたのだろう
確かに、その言葉は自分がさっき虚しい空に呟いたものだった
「……なんで知ってんだ…?」
『私は、""夜空に咲く泡沫な華""。夜空から、みんなの全部を見ているの』
『全部を見て、小さな救いを与えて消える』
「小さな救い……」
『そう、小さな小さな幸せも、積み重ねれば救いになる…』
『現に、今も幸せでしょ? 笑』
…突然現れた知らない少女に戸惑わされているこの時間が、幸せ…?
「まさか、幸せじゃないよ」
『幸せだよ。だって、寂しくないでしょ?』
「寂しさを感じていないから、幸せ……?」
『…小さなことだけど、あのまま一人で空を眺めているよりかはよっぽど良い。』
『っていうか、そう思ったほうが幸せ』
…何を言っているのかは理解できないが、
彼女の言葉に、励まされているような気がしてきた
そんな会話をしている頃、空は橙色のグラデーションが進んでいる
「……もうすぐ2時間経つけど、救いってこれだけ?」
『うんん。今までのは全部、小さな"幸せ"に過ぎない』
『積み重なった"救い"はあともうちょっと経ったら、あげる』
救いと幸せ、違いは何なのだろう――
華恋と俺、二人の間にさっと差し込む光―『夜明け』だ
『……ほら、"夜明け"だよ』
「っ…眩しいな」
思わず目を細めてしまうほど、強く、眩しく、温かい光だった
『…………』
『終わってない。』
『花は、また咲かせば良いんだよ』
『あなたの心が枯れない限り、この町にまた、花を咲かせばいいじゃない』
朝日を背に微笑む華恋
その笑顔は、朝日に照らされた雫のように…
透けていた――
「……諦めなきゃ、良いってことか」
『私も、花火好きだからさ』
『また咲かせてよ』
彼女の瞳から、一粒の光が頬を伝った
『ねぇ、"夜空から"見てるよ』
また、夜空に戻っていく華恋を見上げ、呟く
「…じゃあな、"華恋"。また今度、花火をここで見ような」
"消える"、というのは、こういうことだったんだ…
彼女の言葉の意味がやっと、少しわかった気がした―
――数年後、その"約束"が叶ったとしても、彼女の名前を思い出せるか…
否。
救いを与える"夜空の華"の名前は、救いを与えたその瞬間から、徐々に思い出せなくなっていく。
早くて3週間。
遅くて1年。
いずれ、誰の記憶からも"消える"
『朝露 華恋――… 華恋 だよ……』
『…誰か、私の名前を…呼んで……?¿』
――今も何処かで、彼女の名前は…泡沫に"消える"
――END――
華恋_karen