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紫水晶と黒曜石

#1

異能使いの少女


 私は青と赤と黄色と黒の化け物に追いかけられていた。

 息を切らしながらとにかく走る。
 クレヨンで描かれたような幼稚な怪物が、校舎の窓を割る。
 私は何もしていないはずなのに、ただただ友達の忘れた教科書を取りに来ただけなのに。
 どうして?どうして?なんで。

 …気づけば、目の前は行き止まりだった。

 ………ああ、ここで死ぬんだ。
 私はくるりと後ろを振り返り、ぼーっとその怪物を眺める。

 すると次の瞬間、真っ黒な閃光が走った。

 違う、閃光じゃない。
 それは背の高い女性だった。
 その女性は武器を手に持った。
 大きな、両手剣。

 それを振りかぶるともはや剣とは呼べないような轟音が鳴った。

 ゴウン、ゴウンと振りかぶりながら彼女は怪物へと向かっている。
 次の瞬間、怪物は上部は消えていた。
 その瞬間に悟った。勝手に消えたのではない、振りかぶった圧で消し飛ばしたのだと。

 その女性は振り返り、先ほどとは打って変わった緩慢な動きでこちらに近づく。
 そして一言、口元の機械を通した異常に低い声で言った。

「…怪我はない?」

「あ、はい…」

「そう、よかった」

 綺麗な紫の瞳が安心したように笑った。
 すると連絡機器のようなものを取り出した。

「…15歳の少女、一名保護。真澄さんの娘と見られます」

「なんで母の名前を知ってるんですか?」

「真澄さんは先輩だったから」

「そうなんですね…というかなんで私が娘って分かったんですか?」

「顔が似てたし、あと学生証落としてたから。はい、学生証」

「あ、ありがとうございます…」

「あとそれとね…言いにくいんだけど、君の母親…真澄さんが殉職した」

「…へ…?」

 お母さんは優しい人だった。
 仕事の都合であまり一緒にいれることはなかったけど、いなくなったお父さんの代わりに甘やかしてくれた。

「真澄さんは…民間人を庇って致命傷を受け死亡した。享年は35歳だった。」

 紫の瞳が揺れた。
 涙は流さなかった。
 ああ、この人も母に愛されていたんだ。

「…そう、ですか…」

「だから、君をうちで保護することになった」

「…母の遺体には会えますか…?」

「ボクが上に言おう。」

「そうですか…」

 私と女の人は学校から出た。
 すると、車が止まっていた。

「乗せて」

「分かってるよ」

 そうして車に乗り込んだ。
 重たい空気の中、自己紹介のようなものが始まった。

「…ボクは、[漢字]優喰 紫蘭[/漢字][ふりがな]ゆうはみ しらん[/ふりがな]、17歳」

「えっと…オレは[漢字]崩帝 青砥[/漢字][ふりがな]ほうてい あおと[/ふりがな]。21歳。君は?」

「…私は、[漢字]繋狃 黒薙[/漢字][ふりがな]つなぎな くろな[/ふりがな]です。15歳です…」

 その重たい空気の中、車は走っていく。
 いつのまにかそこは知らない景色になっていた。

「結界超えた?じゃあそろそろ着くね」

 異様に低い紫蘭さんの声だけが、響いた。

2025/12/25 09:35

枯花
ID:≫ 13U0WLjJcZw1g
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異能バトル現代ファンタジー

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