私の名前は[漢字]唄伊 凛[/漢字][ふりがな]うたい りん[/ふりがな]。
オペラ歌手やクラシック音楽の巨匠を多く輩出してきた名家、唄伊家の一人娘です。
なので、私はお母様のお腹の中にいた頃からオペラやクラシックを聴かされていました。
ピアノを習い、ヴァイオリンを弾き、オペラを歌う音楽漬けの楽しい日々ではありましたが、なかなか“物足りない”感覚が埋まらないのです。
いつしか私は“世界の歌姫”となりました。
そんな私は、ある日ロックが大好きな友達と出会ったのです。
それは、運命のようなものでした。
そこでロックを聞いたのです。
鼓膜がちぎれそうなほどの爆音、凄まじい歌詞の内容。
そして───。
息切れするほどの高揚感。
目が眩むような輝きが、目の前に広がった気がしました。
“物足りない”が初めて埋められました。
ですが、家でロックは聴けません。
なぜならば、お父様に取り上げられてしまうからです。
なので私は学校で度々その友達に聴かせてもらいました。
でも、それじゃ足りない。
私はわがままなんです。
生の音を聞きたい。ライブを見たい。
その思いは年々強くなっていきました。
そして今日私は──。
「バンド募集、してみましょう…!」
自室で、バンド募集の広告を出しました。
お母様には言いましたが、お父様には無断です。
お母様はやってみなさいと言ってくれました。
なら、一度だけ、夢を見たいのです。
大丈夫、どうにかなる。
私は高揚感と不安で高鳴る胸を抑えて、眠りにつきました。