この世の人間の殆どは「道具」だ。
私はそう考えている。私自身も、道具。
この世に超常現象などあるはずがない。全ては科学でできているのだから。
幼い私は“あの時”そう悟った。
それでも彼女と出会った幼い頃、超常的なものを信じない私でも『運命』というものを感じた。
『道具』ではない存在であると感じた。
陶器のような白い肌、サファイアのように青い眼、マッチが4…いや五本ほど乗りそうな長く白いまつ毛。銀糸のような髪は緩く波打っている。
彼女の無垢な笑みが私に向けられている事にどうしようもないほどの優越感が生まれる。
その後ハッとした。目の前にいた可憐な美少女がなぜ自分と婚約するのか、本気で理解に苦しんだ。
聞けば彼女は王家に最も近い血を持つ貴族の娘らしい、こんなにいい縁談が私に舞い込んでくると、私は予想してすらいなかった。
カジノを経営している商家の跡取りとかいう地雷臭しかしない存在が、天使の様に麗しい彼女を嫁にもらうという事象に恐怖を覚えていたのを記憶している。
きっと裏切られる。あの人と同じ人間だ。
私はそう思い込んだ。
そんな理解に苦しんでいた幼い私に一つ助言しよう。
彼女がなぜ地雷臭しかしない男に嫁いだのか、それは────。
「ルーカス様!お店の表で暴れていらっしゃったこの方達を連れて参りました!」
「…気絶して、失禁しているね」
───彼女がゴリッゴリの武闘派であったからである。
「こんな蛆虫に気絶で済ましてあげるなんて、ルチアは優しいね」
「ルーカス様!蛆虫はダメですの!蛆虫さんが可哀想ですわ!」
「…そうだね、蛆虫が可哀想だね…っふふ…」
「それでルーカス様?その…ご褒美として…」
そう言うと彼女は前屈みになって、頭をこちらに向けた。
…ああ、撫でを要求しているのか。
私は彼女の頭をゆっくりと撫でた。柔らかな銀糸の手触りが、手全体に伝わった。
すると、彼女はふわりと笑った。ゆったりと、この時を待っていたと言わんばかりの至福の表情である。
…可愛い。とても、可愛い。
頭の中の情報が可愛いに染まる。どうやったらこんなに可愛い存在が生まれるんだ?
私の頭には疑問が残った。
△▲△
私の名前はルチア・シャーロットと言います。
ルーカス・ヴァンダーヴォール様の許嫁です。
初めてルーカス様をみた時、私は世界一の宝物を見た気分になりました。
世界を傍観する様な全てを諦めた緑の瞳、ハーフアップに結われた茶色の艶のある髪。伏し目の柔らかな、でも全てを嫌いになってしまったかの様な笑み。
でも私と目が合った途端に、その瞳が大きく見開かれたのを覚えています。
私は幼い頃から運動が得意で、異性の方と揉め事を起こしては喧嘩に勝っていました。そのせいで女性なのにはしたないと縁談が全く来なかったです。
それではいけないとお父様が持ってきた縁談が、ルーカス様とのものでした。
ルーカス様は私が木に登っても驚き、その後危険だと咎めるだけで、女性らしくないとは言いません。
私は女性なのにはしたないと怒られないのが今でもとても不思議です。
ところでルーカス様は聞いたところによると、一度目の婚約者候補に酷く裏切られたそうでした。
今でも私がそれを聞いても「過去の話だよ」と淋しそうに、何処か悔しそうに話すだけです。
それでも私はルーカス様を救おうと思ってはいません。
ルーカス様は一人で自分を救える方なのですから。
「ルーカス様、お慕いしております」
そう言ってルーカス様の隣に座ると、ルーカス様と出会った日と同じ様に目を見開きながら、こういうのです。
「それが本心なら、この身を海に投げ捨ててもいいほど嬉しいんだがね…」
…これ、本心なんですけどねぇ…。
私はそう考えている。私自身も、道具。
この世に超常現象などあるはずがない。全ては科学でできているのだから。
幼い私は“あの時”そう悟った。
それでも彼女と出会った幼い頃、超常的なものを信じない私でも『運命』というものを感じた。
『道具』ではない存在であると感じた。
陶器のような白い肌、サファイアのように青い眼、マッチが4…いや五本ほど乗りそうな長く白いまつ毛。銀糸のような髪は緩く波打っている。
彼女の無垢な笑みが私に向けられている事にどうしようもないほどの優越感が生まれる。
その後ハッとした。目の前にいた可憐な美少女がなぜ自分と婚約するのか、本気で理解に苦しんだ。
聞けば彼女は王家に最も近い血を持つ貴族の娘らしい、こんなにいい縁談が私に舞い込んでくると、私は予想してすらいなかった。
カジノを経営している商家の跡取りとかいう地雷臭しかしない存在が、天使の様に麗しい彼女を嫁にもらうという事象に恐怖を覚えていたのを記憶している。
きっと裏切られる。あの人と同じ人間だ。
私はそう思い込んだ。
そんな理解に苦しんでいた幼い私に一つ助言しよう。
彼女がなぜ地雷臭しかしない男に嫁いだのか、それは────。
「ルーカス様!お店の表で暴れていらっしゃったこの方達を連れて参りました!」
「…気絶して、失禁しているね」
───彼女がゴリッゴリの武闘派であったからである。
「こんな蛆虫に気絶で済ましてあげるなんて、ルチアは優しいね」
「ルーカス様!蛆虫はダメですの!蛆虫さんが可哀想ですわ!」
「…そうだね、蛆虫が可哀想だね…っふふ…」
「それでルーカス様?その…ご褒美として…」
そう言うと彼女は前屈みになって、頭をこちらに向けた。
…ああ、撫でを要求しているのか。
私は彼女の頭をゆっくりと撫でた。柔らかな銀糸の手触りが、手全体に伝わった。
すると、彼女はふわりと笑った。ゆったりと、この時を待っていたと言わんばかりの至福の表情である。
…可愛い。とても、可愛い。
頭の中の情報が可愛いに染まる。どうやったらこんなに可愛い存在が生まれるんだ?
私の頭には疑問が残った。
△▲△
私の名前はルチア・シャーロットと言います。
ルーカス・ヴァンダーヴォール様の許嫁です。
初めてルーカス様をみた時、私は世界一の宝物を見た気分になりました。
世界を傍観する様な全てを諦めた緑の瞳、ハーフアップに結われた茶色の艶のある髪。伏し目の柔らかな、でも全てを嫌いになってしまったかの様な笑み。
でも私と目が合った途端に、その瞳が大きく見開かれたのを覚えています。
私は幼い頃から運動が得意で、異性の方と揉め事を起こしては喧嘩に勝っていました。そのせいで女性なのにはしたないと縁談が全く来なかったです。
それではいけないとお父様が持ってきた縁談が、ルーカス様とのものでした。
ルーカス様は私が木に登っても驚き、その後危険だと咎めるだけで、女性らしくないとは言いません。
私は女性なのにはしたないと怒られないのが今でもとても不思議です。
ところでルーカス様は聞いたところによると、一度目の婚約者候補に酷く裏切られたそうでした。
今でも私がそれを聞いても「過去の話だよ」と淋しそうに、何処か悔しそうに話すだけです。
それでも私はルーカス様を救おうと思ってはいません。
ルーカス様は一人で自分を救える方なのですから。
「ルーカス様、お慕いしております」
そう言ってルーカス様の隣に座ると、ルーカス様と出会った日と同じ様に目を見開きながら、こういうのです。
「それが本心なら、この身を海に投げ捨ててもいいほど嬉しいんだがね…」
…これ、本心なんですけどねぇ…。