天才というものは、燃え尽きるのが早い。
ここは――世界の目が注がれる名門校、蓮見河高等学校(はすみかわこうとうがっこう)。
この学び舎をひとことで言い表すなら、「実力主義」。
そして、なかでも頂点に立つのが――生徒会の3人だ。
現代のゴッホと呼ばれる若き芸術の鬼才。
出場したすべての大会で最優秀賞をかっさらう、蓮賽 汐花(はすさい しおか)。
歴史に残る学術発見をいくつも成し遂げた天才少女、茜 弥生(あかね やよい)。
ありとあらゆるスポーツで輝き、オリンピック候補にも挙げられる身体能力の化身、宝条 条兎(ほうじょう じょうと)。
彼女たちは、生まれながらにして"選ばれた"存在――。
それでも今、この3人は、静かに、堕ちようとしていた。
「ねぇ」
汐花が二人に呼びかける。鬱々とした曇り空に、その声だけが響いた。
「どうしてここにきたの?」
すると条兎が冴えた青い眼を潤ませながら堰を切ったように喋り出した。
「僕…私は……女の子でいたかった。ずっと。でも、お母様が許してくれなかったの。なら、もう……生きてる意味、ないよね。もしも生まれ変われたら、背が小さくて、高い声で、笑顔が素敵な“女の子”になりたい。」
それに呼応するように弥生が三つ編みをほどきながらポツリ。
「…僕は……もう、なにも見たくない。疲れたんだ。人の顔なんて規則性がないし、感情のパラメータもまるで違う。それが人間だっていうなら、それは狂ってる。でも僕だって…最後くらい、“人間臭い”生き方をしたい。」
最後に汐花が翳ったオッドアイの瞳で諦めたような笑みを浮かべながら言った。
「…ボクは、見られるための作品をかけ、って言われた。ボクの作品は自分を肯定するためのものだったのに…全部全部無駄になった気がした。だから…もう自分の気持ちに嘘をつきたくない。ここで“ボク”を終わりにしたい。」
その後沈黙が続く、3人は上履きを脱いで、ジャージやカーディガンも脱いで、長い“準備”を黙々と済ませていく。屋上の柵に手をかけた瞬間、汐花の笑い声が響いた。
「……ぷっ……っはは、あはははっ!!」
弥生と条兎は目を見開きながら汐花を見る。
「なんかさ、急に可笑しくなってきちゃった。なんで、
ボクたちが変わらなきゃいけないの? 世界のほうが、おかしいんだよ」
それは、死ぬ前の足掻きのようなものだったのだろうか。
そう言った汐花は閃光に焼かれるように眩しかった。
条兎と弥生が目を瞬かせる。何も写さなかったその瞳にはくっきりと汐花が写っていた。
「……そうだよ。変わるべきは、私たちじゃない」
条兎がポツリ、拳を握り締め決意を宿して言った。
「…じゃあ、明日の朝、ここにまた集まろうよ」
弥生が緩く微笑みながら言った。
「いいね」
汐花は悪戯っぽい笑みを浮かべて賛成する。
条兎は静かに、けれど力強く頷いた。
これは、天才達がバカになる物語。