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うちらのサイダーを噛み締めて。

「おーい。日向〜?聞こえてる?」

光莉に呼ばれ、我に返った。
真夏の快晴の日。親友と屋上で2人はなしていた。

「あと1週間で会えなくなっちゃうんだから、ちゃんと話そーよ〜さびしいよぉ〜」

わたしは、1週間後、家族と出張の用事で
東京に引っ越す。

このセーラー服を着るのもあと1週間だし、
うるさい担任から逃れられるのもあと1週間だし、
こうやって親友と話せるのもあと1週間。

この1週間は疲れが溜まりそうな予感がした。

「ごめんごめん。ぼーっとしてた。」
「ぼーっとしてるんじゃないよ。
麦茶買ってこよっか?」
「だいじょーぶ。ありがと」
「そっか。じゃー私部活だから!また明日!」

そういって光莉は部活へ行った。

光莉とくだらないことで笑っていたら、
ついに引っ越し1日前の日がやってきた。

クラスの友達は、泣いてくれる子もいたし、プレゼントをくれる子もいた。とても幸せだった。

放課後、光莉から呼ばれ、屋上に行った。
光莉はとても深刻そうな顔をしていた。
そして、表情を崩さず、私に話しかけた。

「日向、なんか隠してるでしょ?」

その一言に私は驚いた。
…何も言えなかった。
私が驚いていると光莉は続きを話し始めた

「日向のお母さんから聞いた。お母さんとお父さん、
出張先東京じゃなくてアメリカなんでしょ?」

「…」

「なんか言ってよw。私たちの地域、飛行場ないから、お母さんたちが帰ってきやすい東京に、一人で行くんだよね。」

「なんでお母さん言っちゃったんだろ」

「私から聞いたの。日向最近様子おかしいですけどなんか隠してます?って。そしたらすんなり教えてくれた。…辛かったでしょ?一人でこんなド田舎から東京なんて。怖かったでしょ?」

光莉が全て知っていて、なぜか安心した。

「…うん。一人暮らし怖いし、さびしい。」

「だと思った。私のお母さんが、休みの日、東京いっていいよって。だから、休みの日毎日いく。さびしくないでしょ?」

そういって光莉は笑った。
その笑顔は真夏の太陽より眩しかった。

「ありがとう。」

「ほら、自販機でサイダー買ってきたの。一緒に飲も?」
「うん。ありがと。」

蓋を開け、飲み込む。
今までで一番、美味しいサイダーだった。

私はあの日を絶対に忘れない。

1ヶ月後。
下校中に通る道に自販機がある。
あの日のサイダーには勝てないけれど、
サイダーの味を噛み締めて、誰もいない家に帰る。

「…ただいま。」
返事は無いけど、光莉がくれたミサンガが、おかえりと言ってくれたような気がした。

作者メッセージ

ちなみにしおんはサイダー飲めません。

2026/03/03 23:09

東雲しおん
ID:≫ 9arHvCO5exIPo
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#青春#サイダー

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