健気な歌巫女の叶わない夢
#1
第一夢
ーこの世には人々の生活をおびやかす「悪霊」とそれを退治するために産まれた神聖な者達「神聖者」がいる。神聖者は2つの役職に分かれる。一つは巫女。悪霊を退治することに特化した女性のことだ。二つは神官。何か特別な能力を授かる神に選ばれた男性のことだ。そしてその中でもまた四つに分けられる。巫女の場合は、「春巫女」「夏巫女」「秋巫女」「冬巫女」。この巫女達は必ず血の繋がっている姉妹で産まれてくる。そして神官の場合は、「春官」「夏官」「秋官」「冬官」。神官は神に選ばれし者なので血は繋がっておらず、どこにいるかもわからない。そして、子孫を残すため、季節の合う巫女と神官は必ず結ばれなければならない。さもないと妖にさらわれてしまうから。けれど神は何か目印をと思い、神官には生まれた時から手の甲に焼印をつけ、巫女には新刊と同じ印のネックレスが贈られた。ー
「行ってきます。」
私は新しい制服と新しいローファーに少し戸惑いながら玄関の扉を開ける。すると、ドタドタと廊下の走る音がした。
「ちょっと待ったぁ!」
そう叫んで玄関前で止まったのは私の妹の琴音だ。
「琴音、どうしたのですか?」
「どうしたのって、リュック置いてどこ行くのよっ!?」
私は自分の手元を見ると確かにリュックがないことを認識する。
「本当ですね、すっかり忘れてました。琴音、ナイスです。」
そう言って親指を立てると琴音は「はぁ…。」とため息をつく。
「私、心配でしょうがないわ。桃華姉さんの高校生活。」
「ふふっ、心配性ですね。琴音はお母さんですか?」
私は心配性な妹をからかい、家を出る。すると、琴音に引き留められた。
「待って、桃華姉さん!」
後ろを振り返ると琴音は自分の首元のネックレスを引っ張って尋ねてくる。
「ネックレス…持ってる…?」
私は心配性で可愛い妹に微笑んで首元から隠していたネックレスを引き出した。
「えぇ、しっかりと。」
そしてまた服の下に隠して今度こそ家を出た。神社の門を抜けるとツインテールを揺らしている女の子がいる。私の親友、秋野柚子ちゃんだ。
「おはようございます、柚子ちゃん。」
すると柚子ちゃんはこちらを振り返ってニコッと笑う。
「おはよう、桃ちゃん!行こっか。」
そして私たちは学校に向かって歩き出した。
「桃ちゃん、最近ちゃんと眠れてる?」
「はい。…よく眠れています。」
「そう!よかったぁ〜。」
柚子ちゃんはほっとしている。
(嘘ですけれど…。)
本当は呪いで寝るに寝付けず悪霊を退治しまくっていた。…その呪いはもう亡くなったお母様からで心の中に深い言葉を刻み込まれていた。
『私に自由に夢を叶える権利はない。ただ言われるがままに動けばいい。』
という言葉を。その言葉のせいで私は精神を囚われ、今でも半分心を閉ざしている。
(私の夢…夢って何なのでしょうか…。)
「…ん!…ちゃん!…桃ちゃん!」
私は柚子ちゃんに肩を揺さぶられハッと我に返った。
「大丈夫?桃ちゃん…。」
「いえ、全然大丈夫です。」
「……そう。」
すると、いつの間にか学校に着いてしまった。私達は校門でクラス発表の紙を受け取る。
「あ!私3組だ!桃ちゃん何組だった?」
(……あ、あった。)
「私も3組です。同じですね。」
「本当っ!?やった〜!」
柚子ちゃんが喜んでいるのを見ているとふと隣を通った男の子が目に入った。
(あの人…会ったことがあるような…。)
けれど私は別にいいと思い、柚子ちゃんと一緒に教室に向かった。
「私の席ここですから。」
「うん、準備したらまた来るね〜。」
そうして私は柚子ちゃんと離れ、準備をする。席に座ってうつ伏せていると、隣の席にさっきの男の子がいた。
(挨拶しといたほうがいいですよね。)
「おはようございます、私は花道桃華。よろしくお願いしますね。」
すると男の子は目を丸くして驚く。
「お前すっごい礼儀正しいんだな。俺は黒羽珠羅。よろしく。」
隣の席の男の子…黒羽君はそう言って手を出してくる。私はその手を取って握手した。すると感じたことのないくらいに心が軽くなった。
(なんでしょうか…これ。)
するとひょこりと柚子ちゃんが間に割り込んで握手している手を無理矢理ほどき、私を黒羽君から遠ざけた。
「ちょっと黒羽さん、桃華にナンパしないでください!」
「なっナンパ!?流石にその言いようは…。」
「あ。バレた?」
「えぇっ!?」
黒羽君は柚子ちゃんからの指摘にペロっと舌を出した。私は騙された自分が恥ずかしくなり
「クズ……。」
と言ってしまう。するとクラス中が笑い出した。
「黒羽お前ヤバっ!」
「うるせ〜。」
そう言ってじゃれている黒羽君に私は思わず笑ってしまった。
「ふふっあははっ!」
すると黒羽君が優しげな笑顔をこちらに向け、通りすがりに耳元で言った。
「なんだ、暗い顔しかしないと思ったら笑えば結構可愛いじゃん、花道。」
私はその言葉に思わず頬を赤らめる。
(心配…してくれてたの…?)
私は不意にお婆様が言っていたことを思い出した。
『好きな人に心配されることほど嬉しいものはきっと無いわ。』
(好きな人…?私が、あの人を…?)
まだ確証はない。でも今まで感じたことのない不思議な感情に襲われていることに間違いはなかった…。
「んぁ〜!入学式やっと終わった〜!」
柚子ちゃんは体を伸ばして歩いている。私は今、別の疲労感があった。
(考えすぎて、入学式のお話を真面目に聞けなかったです…。)
そう思ってしょんぼりしていると後ろから
「わっ!!」
とおどかされた。私は思わず
「キャー!!?」
と叫んでしまう。振り返るとそこには考えすぎの種の張本人、黒羽君がいた。
「黒羽君…。」
「やっほ、花道。驚いた?」
そして耳元で囁いてくる。
「また落ち込んでたから。」
私は反射的にバッと黒羽君から離れた。柚子ちゃんは私の予想外の行動に目を見開く。
「どうしたの?桃ちゃん。」
「〜〜〜〜〜っ!!」
私は頬を赤らめて声にならない叫びをあげる。すると黒羽君はクスッと笑って通りすぎた。そしてまた通りすがりに耳元で話しかけられる。
「…下校後、教室で待ってて。」
「…え?」
私は理由を聞こうと振り返ったがそこにはもう黒羽君はいなかった。何も聴こえていない柚子ちゃんは私を見て首を傾げる。
「お〜い、桃ちゃん?教室行こ〜!」
「は、はい…。」
(何なのでしょう…。少なくとも今は2人きりは嫌なのですが…。)
そうして悶々と過ごしていくとついに終礼の挨拶も終わり、下校時間となった。柚子ちゃんには用事があるからと下校のお誘いを断り、教室で過ごす。肝心の黒羽君は終礼時から姿を消していた。
(せっかく1人ですもんね。この際、気持ちをノートに書きましょう。)
私はそう思って、新しいノートに気持ちを書こうとした。が、何を書けばいいのか分からなくなった。
「私の夢はきっと叶わないよ…。」
そう呟くと急にガタッと物音がした。驚いて音のした方を振り向くとそこには黒羽君が気まずそうに立っていた。
「あの…もしかして聞いちゃいけなかった?」
「…いえ、いいです。…黒羽君なら。」
すると黒羽君はペットボトルをプシュッと開けて飲み始めた。
「え?なんか言った?」
「い、いえ!何にも…何でも…ないです。」
「そう。」
黒羽君は飲み物を飲み終えると私の向かい側にしゃがんでうつむている私と視線を合わそうとしてくる。
「…その、たまたま聴こえたのを蒸し返して悪いけどさ、夢って何…?」
「私の夢……。って先に黒羽君のを教えてください。」
「俺の?」
「そうです!」
私は夢について話すのが恥ずかしくなり、黒羽君に話を回す。
「俺はね〜、一攫千金でしょ、彼女欲しいでしょ、それから…酒飲んでみたい!」
「くっ‥クズ……!」
私は黒羽君の夢に思わず笑ってしまった。すると黒羽君はさっきみたいな優しい笑顔を向けてきた。
「クズでいいんだよ。クズでも、綺麗事でも何でもいい。叶いにくいからこそ夢なんだよ。叶いやすい夢なんてただの目標にすぎない。叶えられないとわかる欲望こそが夢なんだよ、ば〜か。」
「叶えられない…夢…?」
私は黒羽君の言葉に驚いた。それ以上に驚いたのは私がいつの間にか泣いていたことだ。私は声をうわずりながら話す。
「わ、私も…私にも夢があって良いのでしょうかっ……!」
「お前の夢を否定する奴なんて1人もいない。いたら俺が言ってやる。自分の欲望を声に出して何が悪いってな。」
私達はしばらく黙り込む。すると黒羽君が口を開いた。
「んで?お前の夢は?」
私は小さく笑って黒羽君の唇に私の人差し指を当てる。そして小さく笑った。
「秘密です。少なくともあなたには言えません、黒羽君。」
すると黒羽君は私にも同じことをしてきた。
「ん?」
私が疑問の声を出すと黒羽君は私の手をどけて笑った。
「仕返し。」
この時、私は確証した。今、私は初恋…それも叶わない恋をしてしまったということを。ー
「行ってきます。」
私は新しい制服と新しいローファーに少し戸惑いながら玄関の扉を開ける。すると、ドタドタと廊下の走る音がした。
「ちょっと待ったぁ!」
そう叫んで玄関前で止まったのは私の妹の琴音だ。
「琴音、どうしたのですか?」
「どうしたのって、リュック置いてどこ行くのよっ!?」
私は自分の手元を見ると確かにリュックがないことを認識する。
「本当ですね、すっかり忘れてました。琴音、ナイスです。」
そう言って親指を立てると琴音は「はぁ…。」とため息をつく。
「私、心配でしょうがないわ。桃華姉さんの高校生活。」
「ふふっ、心配性ですね。琴音はお母さんですか?」
私は心配性な妹をからかい、家を出る。すると、琴音に引き留められた。
「待って、桃華姉さん!」
後ろを振り返ると琴音は自分の首元のネックレスを引っ張って尋ねてくる。
「ネックレス…持ってる…?」
私は心配性で可愛い妹に微笑んで首元から隠していたネックレスを引き出した。
「えぇ、しっかりと。」
そしてまた服の下に隠して今度こそ家を出た。神社の門を抜けるとツインテールを揺らしている女の子がいる。私の親友、秋野柚子ちゃんだ。
「おはようございます、柚子ちゃん。」
すると柚子ちゃんはこちらを振り返ってニコッと笑う。
「おはよう、桃ちゃん!行こっか。」
そして私たちは学校に向かって歩き出した。
「桃ちゃん、最近ちゃんと眠れてる?」
「はい。…よく眠れています。」
「そう!よかったぁ〜。」
柚子ちゃんはほっとしている。
(嘘ですけれど…。)
本当は呪いで寝るに寝付けず悪霊を退治しまくっていた。…その呪いはもう亡くなったお母様からで心の中に深い言葉を刻み込まれていた。
『私に自由に夢を叶える権利はない。ただ言われるがままに動けばいい。』
という言葉を。その言葉のせいで私は精神を囚われ、今でも半分心を閉ざしている。
(私の夢…夢って何なのでしょうか…。)
「…ん!…ちゃん!…桃ちゃん!」
私は柚子ちゃんに肩を揺さぶられハッと我に返った。
「大丈夫?桃ちゃん…。」
「いえ、全然大丈夫です。」
「……そう。」
すると、いつの間にか学校に着いてしまった。私達は校門でクラス発表の紙を受け取る。
「あ!私3組だ!桃ちゃん何組だった?」
(……あ、あった。)
「私も3組です。同じですね。」
「本当っ!?やった〜!」
柚子ちゃんが喜んでいるのを見ているとふと隣を通った男の子が目に入った。
(あの人…会ったことがあるような…。)
けれど私は別にいいと思い、柚子ちゃんと一緒に教室に向かった。
「私の席ここですから。」
「うん、準備したらまた来るね〜。」
そうして私は柚子ちゃんと離れ、準備をする。席に座ってうつ伏せていると、隣の席にさっきの男の子がいた。
(挨拶しといたほうがいいですよね。)
「おはようございます、私は花道桃華。よろしくお願いしますね。」
すると男の子は目を丸くして驚く。
「お前すっごい礼儀正しいんだな。俺は黒羽珠羅。よろしく。」
隣の席の男の子…黒羽君はそう言って手を出してくる。私はその手を取って握手した。すると感じたことのないくらいに心が軽くなった。
(なんでしょうか…これ。)
するとひょこりと柚子ちゃんが間に割り込んで握手している手を無理矢理ほどき、私を黒羽君から遠ざけた。
「ちょっと黒羽さん、桃華にナンパしないでください!」
「なっナンパ!?流石にその言いようは…。」
「あ。バレた?」
「えぇっ!?」
黒羽君は柚子ちゃんからの指摘にペロっと舌を出した。私は騙された自分が恥ずかしくなり
「クズ……。」
と言ってしまう。するとクラス中が笑い出した。
「黒羽お前ヤバっ!」
「うるせ〜。」
そう言ってじゃれている黒羽君に私は思わず笑ってしまった。
「ふふっあははっ!」
すると黒羽君が優しげな笑顔をこちらに向け、通りすがりに耳元で言った。
「なんだ、暗い顔しかしないと思ったら笑えば結構可愛いじゃん、花道。」
私はその言葉に思わず頬を赤らめる。
(心配…してくれてたの…?)
私は不意にお婆様が言っていたことを思い出した。
『好きな人に心配されることほど嬉しいものはきっと無いわ。』
(好きな人…?私が、あの人を…?)
まだ確証はない。でも今まで感じたことのない不思議な感情に襲われていることに間違いはなかった…。
「んぁ〜!入学式やっと終わった〜!」
柚子ちゃんは体を伸ばして歩いている。私は今、別の疲労感があった。
(考えすぎて、入学式のお話を真面目に聞けなかったです…。)
そう思ってしょんぼりしていると後ろから
「わっ!!」
とおどかされた。私は思わず
「キャー!!?」
と叫んでしまう。振り返るとそこには考えすぎの種の張本人、黒羽君がいた。
「黒羽君…。」
「やっほ、花道。驚いた?」
そして耳元で囁いてくる。
「また落ち込んでたから。」
私は反射的にバッと黒羽君から離れた。柚子ちゃんは私の予想外の行動に目を見開く。
「どうしたの?桃ちゃん。」
「〜〜〜〜〜っ!!」
私は頬を赤らめて声にならない叫びをあげる。すると黒羽君はクスッと笑って通りすぎた。そしてまた通りすがりに耳元で話しかけられる。
「…下校後、教室で待ってて。」
「…え?」
私は理由を聞こうと振り返ったがそこにはもう黒羽君はいなかった。何も聴こえていない柚子ちゃんは私を見て首を傾げる。
「お〜い、桃ちゃん?教室行こ〜!」
「は、はい…。」
(何なのでしょう…。少なくとも今は2人きりは嫌なのですが…。)
そうして悶々と過ごしていくとついに終礼の挨拶も終わり、下校時間となった。柚子ちゃんには用事があるからと下校のお誘いを断り、教室で過ごす。肝心の黒羽君は終礼時から姿を消していた。
(せっかく1人ですもんね。この際、気持ちをノートに書きましょう。)
私はそう思って、新しいノートに気持ちを書こうとした。が、何を書けばいいのか分からなくなった。
「私の夢はきっと叶わないよ…。」
そう呟くと急にガタッと物音がした。驚いて音のした方を振り向くとそこには黒羽君が気まずそうに立っていた。
「あの…もしかして聞いちゃいけなかった?」
「…いえ、いいです。…黒羽君なら。」
すると黒羽君はペットボトルをプシュッと開けて飲み始めた。
「え?なんか言った?」
「い、いえ!何にも…何でも…ないです。」
「そう。」
黒羽君は飲み物を飲み終えると私の向かい側にしゃがんでうつむている私と視線を合わそうとしてくる。
「…その、たまたま聴こえたのを蒸し返して悪いけどさ、夢って何…?」
「私の夢……。って先に黒羽君のを教えてください。」
「俺の?」
「そうです!」
私は夢について話すのが恥ずかしくなり、黒羽君に話を回す。
「俺はね〜、一攫千金でしょ、彼女欲しいでしょ、それから…酒飲んでみたい!」
「くっ‥クズ……!」
私は黒羽君の夢に思わず笑ってしまった。すると黒羽君はさっきみたいな優しい笑顔を向けてきた。
「クズでいいんだよ。クズでも、綺麗事でも何でもいい。叶いにくいからこそ夢なんだよ。叶いやすい夢なんてただの目標にすぎない。叶えられないとわかる欲望こそが夢なんだよ、ば〜か。」
「叶えられない…夢…?」
私は黒羽君の言葉に驚いた。それ以上に驚いたのは私がいつの間にか泣いていたことだ。私は声をうわずりながら話す。
「わ、私も…私にも夢があって良いのでしょうかっ……!」
「お前の夢を否定する奴なんて1人もいない。いたら俺が言ってやる。自分の欲望を声に出して何が悪いってな。」
私達はしばらく黙り込む。すると黒羽君が口を開いた。
「んで?お前の夢は?」
私は小さく笑って黒羽君の唇に私の人差し指を当てる。そして小さく笑った。
「秘密です。少なくともあなたには言えません、黒羽君。」
すると黒羽君は私にも同じことをしてきた。
「ん?」
私が疑問の声を出すと黒羽君は私の手をどけて笑った。
「仕返し。」
この時、私は確証した。今、私は初恋…それも叶わない恋をしてしまったということを。ー