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アンビバレンス

#3

未練

「僕は黒。...クロって呼んでね。おにーさんは?」

「...[漢字]柘榴[/漢字][ふりがな]ザクロ[/ふりがな]」

渋々答える。

ここは、という質問に答えてられてない。

それを察したのか、宥めるような声でその少年は言った。

「ここは、夢の中だよ。おにーさんのじゃなくて、僕の、ね」

一瞬意味が理解できなかった。

夢?俺のじゃなくて?

混乱してる様子を数秒眺めていた少年は、

「ありゃ。...じゃあ、まずは僕の話聞いてくれるかな、おにーさん」

とりあえず状況がわからないので了承すると、少年は嬉しそうに微笑んだ。

「それじゃ...まずは僕が生きてるころから」

話を聞くと、どうやら少年は生きていたらしい。過去形だ。

つまり、今は死んでいる。

なぜなら、交通事故にあったから。

そして、気づいたときには俺と同じようにこの世界にきていたらしい。

ただ、どうやら感覚で”僕がこの世界の主だ”とわかるようで、何の変化もないこの世界でのんびりと過ごしていたのだとか。

そして現在、俺がきて。

久しぶりに人に話しかけることができて嬉しいらしいのだが、一つ問題がある。

俺は、まだ完全には死んでないらしい。

魂自体は生きているのだが、傷ついて欠けている、と。

魂やらやオカルトじみたことはよくわからないが、とりあえず生きてはいるらしい。

このまま死ぬ方法はないのか聞くと、少年は目を丸くした。

「生きたくないの?」と。

なら自殺なんかするかよって言ったら「そっか」とだけ返された。

そして、何の脈略もなく「なら僕の夢叶えてくれない?」と言われた。

正直、なんで俺が、と思った。

というかそんなことできるわけがない。

俺に、他人のとはいえ、夢なんて叶えられるわけがない。

そう伝えても、少年は聞かずに話を続ける。

そして自分の夢を羅列しはじめた。

「ゲーム実況で100万再生、起業して、ボカロで1000万再生、ラノベ書籍化して、世界の国いっぱいまわって、ライブして、チャンネル登録者100万人。」

いや、流石に多すぎだろ。やり残したことが多すぎる。

こいつ実は死ぬべきじゃねぇだろ。

「流石に突っ込むが、多すぎだろ。やり残したことのバーゲンセールかよ」

「えへへ、だって僕、やりたいこといっぱいあったんだもん」

少年_いや、クロは煌めくような笑顔でそういった。

2026/08/03 17:18

ザクロ
ID:≫ 9y0ycw4S/zwdo
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