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mmntr短編集

#2

2.ある雨の日に



 【hr side】


その日は、よく雨が降っていた。

室内にいてもざぁざぁと音がよく聞こえるくらい。

雨で靴が濡れるのは嫌いだったのに、気づけば玄関へ向かっていた。

理由は分からない。

けど、なぜか外に出たいと思っていた。

傘をさす。

手ぶらで出たので気楽だ。


 「…あ。やっぱ濡れちゃった」


じわじわと染み込んでくる水分が不快感を誘発する。

少し顔を顰めながらも、引き返しはしなかった。

ただどうしても歩きたかった。


数分間歩いて、ふと横を見たときだった。

暗い路地があった。

それと、黒い影。

近づいてみる。

見覚えのある影だった。


 「…うたくん?」


影が動く。

予想通りだった。

髪も服も濡れ、完全に肌に張り付いている。

いつからそこにいたのだろうか。


 「[小文字]…なんだ。はるてぃーか…[/小文字]」


呟いた。声、小さい。

なにそれってくらい。


 「…なにしてんの、こんなとこで」


言いながらも傘をうたくんの上へ持っていく。

これ以上濡れたら死んじゃうんじゃないかってちょっと思った。


 「…なんもしてねぇよ」


嘘か判断がつかなかった。

うたくんはたまに本当に気まぐれでこういうことをする。


 「…風邪、ひくよ?」

 「どうでもいいからやってんの」


そりゃ気にしてたらやらないか。

当たり前のことを突き出されてしまった。


 「連れ帰っていい?」


暫く沈黙。

無視というよりは、答えを考えてる感じだった。


 「…強制?」

 「勿論」


言い終わると同時にぐいっと腕を引っ張る。


 「いてぇんだけど」

 「自業自得だと思って」


ま、俺をこんな行動にださせたうたくんが悪いってことで…。

許してよ、こんな状態をほっとける男じゃないんだっての。

てか俺がそもそも帰るとは思ってなかっただろうし。

多分諦め半分聞いたんだと思う。


 「帰るぞ」

 「…はいはい」


呆れたように。

諦めたように。

うたくんの意図は分からない。

でも、今はいい。

傘をさして、うたくんがこれ以上濡れないようにする。

もう自分の靴なんてどうでもいい。

そう、いいんだ。

これがうたくんで、これが俺達の日常だ。


 「…そう、だよね?」

 「?…なに、なんか言った?」

 「…ううん、何も!」


腕を持ち直す。

今はいい。

これがずっと、毎日続けばいい。

大丈夫だ。

俺達ならやっていける。

いつか崩壊しても、またやり直せる。


 大丈夫、大丈夫、

 大丈夫、大丈夫、大丈夫_?


やっていけなかったとしても。

俺がどうにかする。

無理やりすべてを引きつなげてでも。

どんな手段に出ても。

だから__


 「…大丈夫だよ、うたくん」

 「もう置いていかないからさ」

 「…だから、さ。」

 「もう泣かないで」


俺の声は届かない。

うたくんの声は聞こえない。

俺達は一生繋がれない。

何千回謝っても、何億回泣き喚いても。

しょうがない現実を突きつけられるだけだ。

だけど、俺は諦めきれない。

だから今日も、何千回、何億回繰り返す。



 うたくんがこちら側へ来るまで。

作者メッセージ

意味分からないと思うので読んだとしても意味分からない解説。

hrさんは何度も何度も雨の日に幻覚を見て同じ行動を繰り返していた。
繰り返すうちに、疲労と衰弱で亡くなる。
死んでも繰り返す。段々と真実がわかってくる。
幻覚だったことも、自分がおかしかったことも。
自分が死んだことも、utさんがどうしているかも。
それでも諦めがつかない。
死んでも繰り返す。生前していたことを。
utさんのシアワセを願いながらutさんがこちら側へ来ることを望んでいる。
何度も何度も、何千回も何億回も。______が終わるまで。







______:うたくんの命

2026/07/08 00:50

ザクロ
ID:≫ 9y0ycw4S/zwdo
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